2010年4月5日月曜日

ICHI -再びリメイク版について考える

先日サイドウェイズでリメイク版について書きました。
やはり私はどうしても安易なリメイク版は好きでないのです。
特に今のように過去の映像をいつでも見られる時代には、リメイク版を作る際は絶対的な必然性が欲しいと考えているからです。

「ICHI」と「隠し砦の三悪人-The Last Princess」を見ました。
前者は、座頭市のリメイク、後者は黒澤作品のリメイクでした。
前者は綾瀬はるか、後者は長澤まさみ、旬の人気女優で昔の作品を見ていない世代に安易に売ろうとしているとしか思ってませんでした。

もっとも後者は松本潤が主役になり、本当に安易な感じでしたが。
いくら黒澤監督のオリジナル作品がスターウォーズに影響与えたとは言え、相手役の椎名桔平にダースべーダーの扮装をさせることはないし、雪姫が、山の民のマツジュン(ハン・ソロか)と恋愛しちゃあ駄目でしょ。
最近の阿部寛のギラギラした演技がもったいない映画でした。アベチャンも黒澤映画の三船をやらせてもらえると思ったでしょうから。

そこで今回は「ICHI」です。
あの勝新太郎の座頭市を女に置き換えて、綾瀬はるかがやったと聞いただけで、どうせつまらないと決めつけて映画館では見ませんでした。ところが、こちらは結構面白かったです。

暗い過去を持つ盲目の女(綾瀬はるか)と過去のトラウマで刀が抜けなくなった侍(大沢たかお)、敵役として中村獅童、竹内力、他に窪塚洋介、皆なかなか良かったです。特に綾瀬の吹き替え無しの殺陣はなかなか綺麗でした。

良かったからこそ感じたのが、世界的に有名な映画「座頭市」を冠にすることの善し悪しです。
これは座頭市のリメイク版のように位置づけた(少なくても誤解させた)為に損をした映画かもしれないと思いました。細かいことはネタばれになることが有るので、書けませんが。
主人公が盲目の仕込み杖の達人というモチーフ以外は、オリジナルと何も同じものはないのです。もちろん、それだけでの十分な「座頭市」である訳ですが、別の映画と位置づけて上映した方がもっと評価された様な気がしました。まあ、クレジットにも原作「子母澤寛」と書いてありましたけどね。

結論としてこの映画はリメイク版ではなかったですね。
オマージュと言えるものなのでしょうね。
残念ながら映画館での評判はあまり聞こえてきませんでした。
私のように実際に映画を見るまでは、この映画については、おそらく往年の座頭市のファンにとっても綾瀬はるかファンにとっても「こりゃ、違うだろ」って言われそうですからね。

それにしても座頭市は偉大ですね。世界中の映画に影響を与えたと言われています。この作品のリメイクやオマージュは多数有ります。
北野武の「座頭市」や洋画の「ブラインドヒューリー」は間違いないし、古くは石ノ森章太郎の「佐武と市捕り物控」の市もそうでしょうね。

まもなく最後の座頭市と言って、香取慎吾が主演でやるようです。
私は懲りずに、どうせつまらないと決めつけて見ないだろうな。

リメイク、オマージュ、パロディ、コピー・・・、
どんな世界でもオリジナリティって難しいですね。