2018年2月27日火曜日

開業したいのならもっと具体的に

先週末、土地家屋調査士事務所を開業するかどうか迷っているUさんが、奥様と小さなお子さん2人を連れて、関東から相談にいらっしゃいました。
私の開業ガイダンス(相談)は、家族を連れてきても良いと言っています。
結局この決断が家族の生活を変えることになるのだから、できる限り家族皆で納得して欲しいからです。
今回のUさんにも、奥様と一緒に様々なお話をしました。

このブログでいつも説明しているように、いくら国家試験に合格した資格者であっても、開業することには多少なりともリスクは有ります。
定収の有ったサラリーマンが、その定収を捨てて、リスクの有る開業をするということを妻は理解できるのか、理解はできても賛成できるのか、ここの共通理解をおろそかにしてはいけないと思っています。

さて、Uさんは「自分は、土地家屋調査士のスキルと開業資金が不足しているので、3年程どこかの土地家屋調査士法人に勤めてから開業したい」とおっしゃいました。

そのために3年程土地家屋調査士法人に勤めることが良いのかについては、いろいろ考えるべき論点がたくさんあります。この論点については長くなるのでここでは省略しますが、Uさんには説明しました。

今日書きたいことは、Uさんさんに尋ねた次の点です。

「不足しているスキルは何ですか?それは法人に3年勤めれば得られるのですか?」
「開業資金はいくら必要だと思っていますか?その内訳は?」
これについて明確な答えは持っていないようでした。

スキルについては、おそらくトップレベルの土地家屋調査士とは何がどこまでできるのかが理解できていないから、自分に不足しているものが具体的に分からないのでしょう。
このUさんが何かを学びたいのなら、「雇ってくれそうな法人ならどこでもいいから」と探すことが良いとは思えません。
ちなみに、何かと資格者募集をしている事務所は、なにかと辞めている人が多いからかも知れませんし。

開業資金については500万円と考えているようでしたが、Uさんは、その500万円の内訳が答えられませんでした。
「具体的に何にいくらかかるから合計で500万円」というものではなく「知人が500万円と言うから」という程度の根拠だったようです。
家族の将来を知人のつぶやきに委ねるつもりでしょうか。

事務所をどこに開くのですか?事務所は所有しますか?賃貸にしますか?そこなら家賃等はいくらなのですか?事務所設備は何が必要なのですか?それらは各々いくらなのですか?最初から測量機器は必要ですか?必要なら何が必要ですか?それはいくらなのですか?測量CADは必要ですか?それはいくらなのですか?現場用の自動車は必要ですか?それはいくらなのですか?etc.
起業なら、せめてカタログや見積は取り寄せて検討しましょう。

家族の生活がかかっているのに、自分で具体的に検討もせずに「とりあえず3年ほど勤めているうちに自然に答えが出る」とでも思っていたのですか。
今まで4年も補助者をしていたのに答えが出なかったのでしょう。

私は、開業資金がそこまで無くても十分開業可能と思っていますが、資金内訳を自分で具体的に検討していたなら、私のアドバイスをより理解できたでしょう。

とにかく、開業スキルについても、開業資金についても、間違っていても良いから自分で調べて考えましょう。調べてわからなければ、もっと調べましょう。
自分の事務所なのだから、知人やネットに任せないで、自分で納得するまで調べましょう。
その上で「準備が3年必要」というなら、それは尊重します。
調べた上で何か誤解しながら行動したとしても、調べない人よりは遥かに成功に近づきます。

応援しています。












2018年2月20日火曜日

勉強の成果を添削して欲しいという人


私のところには、土地家屋調査士をめざす様々な人から相談のメールが来ます。
最近は少なくなりましたが、それでも2日〜3日に1件は連絡が来ます。
新幹線や飛行機に乗って、仙台まで相談に来る方もいます。
その方とその家族の人生がかかっているのだから、真剣に相談にのります。

中には何回も相談をいただくリピーターの方もいます。
もちろん一度相談を受けた方のその後は心配していますから、また迷ったら何度でも相談をいただくことはむしろ嬉しいです。
ただし、開業したらすべて自分で判断するしかないことも、個人業の世界なのですが。

途中経過報告なのだと思うけど、勉強中の成果を送ってきた人がいました。
添削して欲しいらしいのです。
おそらく、私にがんばっていることをアピールしたいのだと思うけれど、それは不要(迷惑)です。

私は暇つぶしに後進の指導をしているのではありません。
業界の将来のために睡眠を削って指導していることも多いです。
それも全部個人で無料でやってます。
ガイダンスの会場費も私が自分で出しています。

それでも、あなたの方向性が分からなくなれば、あなたのためにいつでも時間は取ります。なんでも聞いてください。

でも、それと「添削してくれ」は違うでしょ。
なにを甘ったれているのですか。
まずは社会性を磨こうよ。






2018年2月17日土曜日

グレイテスト・ショーマン

昨日は仙台支部の総会がありました。
懇親会を終え「オサムちゃん、歌いに行くぞ」という先輩の二次会のお誘いを丁寧にお断りし、「歌を聞くならこちらでしょう」と行ったのが映画館。
ミュージカル「グレイテスト・ショーマン」です。ちょうど昨日から上映だったのです。


19世紀半ばのアメリカ。幼なじみの妻チャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)を幸せにすることを願い、挑戦と失敗を繰り返してきたP.T.バーナム(ヒュー・ジャックマン)は、オンリーワンの個性を持つ人々を集めたショーをヒットさせ、成功をつかむ。
しかしバーナムの型破りなショーには根強い反対派もいた。
裕福になっても社会に認めてもらえない状況に頭を悩ませるバーナムだったが、若き相棒フィリップ(ザック・エフロン)の協力により、イギリスのヴィクトリア女王に謁見するチャンスを手にする。レティ(キアラ・セトル)たちパフォーマーを連れて女王に謁見したバーナムは、そこで美貌のオペラ歌手ジェニー・リンド(レベッカ・ファーンガソン)と出会う。
彼女のアメリカ公演を成功させれば、一流のプロモーターとして世間から一目置かれる存在になれる。そう考えたバーナムは、ジェニーのアメリカ・ツアーに全精力を注ぎ込むと決め、フィリップに団長の座を譲る。
そのフィリップは、一座の花形アン(ゼンセイヤ)との障害の多い恋に悩みながらも、ショーを成功させようと懸命に取り組んだ。しかし、彼らの行く手には、これまで築き上げたものすべてを失いかねない危険が待ち受けていた。(オフィシャルより)


実話ベースの映画です。
P.T.バーナム(1810年ー1891年)は、様々な仕事を経て興行師として成功した人で、ショーとしてサーカスを確立した人です。
この映画は100年以上前の古い時代を描いていますが、音楽とダンスは今の時代の新しいもので、かなりキレが良く気分が上がります。


主人公バーナムは、階級的差別の中、極貧から成り上がりたいという野心いっぱいで生きて来ました。
最初は、「階級を超えて結婚した妻を幸せにしたい」「それだけで生きよう」と努力を始め、上を上を目指して生きていくうちに、次第に自分の立ち位置がわからなくなる…
いつの間にか、手段が目的に変わってしまっていたのでした。

バーナムは、自分の人生が成り上がりを実現し始めていることを実感しながらも「やはり偽物なのだろうか、社会の誰もが認める本物になりたい」という葛藤の中で新しい興行に手を付けます。この先はネタバレにもなるので観ていただくとして・・・。

彼のサーカスは、観客には圧倒的な支持を受けながらも、世間からは常に偽物と言われ続けて蔑む者も多かったのです。
実際に社会的に陰でひっそりと暮らしていた身体的マイノリティや、人種的マイノリティなどを、陽の当たる表舞台に立たせショーをするのだから、良くも悪くも当時の社会に驚きで迎えられたのでしょう。

このマイノリティたちを舞台に上げることを、この映画では「誰もがオンリーワンになれる場所をサーカスというエンターテイメントの世界に作り出し、人々の人生を勇気と希望で照らした」という視点で描いています。
マイノリティで社会に受け容れられなくても、レティたちパフォーマーは「This is me」と歌い上げています。これ名曲です。
いわゆる「アナと雪の女王」における「ありのままに」ですね。
いかにも現代のハリウッドが創りそうなテーマです。

では、バーナムには最初からマイノリティたちに対する偏見はなかったのでしょうか。
サーカスを始めたバーナムにはマイノリティに対する偏見があるからこそ、それを見世物にするという発想があったはずで、映画の中の名セリフの「人と違うから輝くんだ」は後付けとしか思えないのです。
バーナムは、もともとサーカスを始める前に、観客は怖いもの奇妙なものを見たいはずだと言って、怪しい見世物小屋を作ったわけですから。
もちろん実話ベースである限り、作り手側も十分それを意識して、映画の中でもバーナムのそんな側面も盛り込んでいます。

だから、私がこの映画を観ている間、この主人公に感情移入ができませんでした。私の手放しで絶賛ではない部分です。

しかし、この映画はミュージカルです。しかも110分程度のテンポの良いものです。
その中で圧倒的な歌とダンスが披露されれば、面倒なストーリーの裏にある暗闇など考えている余裕などあるわけがありません。
このミュージカル、歌とダンスは最高ですから。
クライマックスの集団ダンスシーンなどですべては歓喜の中で吹っ飛びます。
そう、映画の観客は私も含め、主人公の言う「最も崇高な芸術は人を幸せにすること」の魔法にかかるのです。

そして最後に、ショービジネスとは違うバーナムの娘の舞台が待っています。
この舞台に向かうバーナムの乗り物と2人の娘のバレエを観るとまた魔法にかかります。

結局、この映画は勧めるかと言われれば、もちろん勧めますよ。
ミュージカルはどうも違和感があると言う人ならやめたほうがいいかもしれません。ストーリーだけなら薄っぺらいですから。
しかし、ミュージカル好きなら絶対に楽しめるでしょう。
空中ブランコでの愛を告げるシーンなどの印象的な名シーンも多いですし。
環境が許せば、IMAXなどのできるだけ良い映像と良い音響の映画館で鑑賞して欲しいと思います。


私はもう一度観に行くでしょうし、動画が発売されたら買うでしょうね。


2018年2月14日水曜日

なんでも答えるけどね

鈴木修さま

お伺いしたいことがあります。

昨年、調査士試験に合格したのですが、
近くの測量会社より、うちで仕事をしないかと提案されています。

現在は、業務の流れで表題登記100件、分筆10件くらいの依頼があるようですが
調査士がおらず自社で申請できないため、調査士事務所へ外注しているようです。

今回は内部に私の事務所を設立し、そこで申請までを行いたいとのことです。
社会保険等も測量会社で加入、報酬も固定給。
これは調査士法違反に値しますか?

もし、このようなやり方で可能な方法があれば知りたいのですが
やり方はあるのでしょ うか。

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メールを拝見しました。
アドバイスをしたいのですが、あなたのお名前もプロフィールも書いていません。
あなたの土地家屋調査士としての実力はどれくらいなのか、将来はどうなりたいのか、いろいろ聞いてみないと適切なアドバイスができません。

私は名前を晒して、睡眠を削って、皆さんのために活動しています。
趣味でやっているのではありません。
この業界に本気なのです。
それなのに、あなたは自分の人生をかける相談をするのに自分の名前も書けないのですか?
それだけでも社会人としてどうなのかと思います。

もう一度、メールをください。
あなたの為にしっかりアドバイスをします。

鈴木 修


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この後、この方から具体的なプロフィールを添えてメールを戴きました。
もちろん、電話でしっかりとアドバイスできました。
内容は差し支えない範囲で後日書きます。




2018年2月12日月曜日

インターネット・ネイティブの世代

3日前にまったく面識のない関西の司法書士から電話が来ました。
「区画整理について教えて欲しい」とのことでした。
受託した業務が区画整理実施区域内の不動産だったようです。
そして、その日の夕方に打合せがあるようでした。

その方は、ネットをかなり調べたようですが、明確な答えにたどり着かずに困っていたようです。
私は日本司法書士会連合会のe-ラーニングで「土地区画整理事業に伴う登記実務」を講義しているので、それを見て私に電話をしたようです。
余程切羽詰まっていたのでしょう。
見ず知らずの私に電話するのですから。
もちろん質問には答えました。

余計な事ですが、その方には「プロはネットで調べてはいけません」と言いました。
「今回の件で更に疑問が生じたら、また連絡ください」とも付け加えました。

ネットの書き込みを調べてるとおおよその正解に近づくことはできると思いますが、その答えに誰も責任を持ってくれません。
なおかつ、私達プロの仕事に「おおよその正解」は有り得ません。
残りの1%でお客様に不利益が生じ、それによって訴えられることもあります。

ネットの書き込みの断片を拾い集めただけで100%の業務はできません。
もちろん、LECや東京法経などの受験本も受験に特化した本ですから、プロになってからは根拠にはなりません。
経験則だけでもダメです。
特に区画整理は事業によって性格が異なります。

結局は法令がすべてですが、それらの立法趣旨を理解できずに、条文を読みこなすことは難しいかも知れません。
まだそれができないうちは、さっさと先輩に教えてもらう方が良いでしょう。
少なくても、その答えには先輩が責任を持ってくれます。

プロの世界にもインターネット・ネイティブ世代が増えてきたようです。
皆そこそこ分かったようなことを言いますが、逆に本質が分かってない人が増えたようです。

ネットでなら素人でも調べられます。
ネットでも調べられないレベルの知識を持っているから専門家なのです。
そして仕事が来てから調べるのではなく、どんな仕事が来ても事前に勉強しておくのがプロの専門家です。

分からないのなら、火傷する前に私に質問して結構です。
答えとともに勉強方法も教えましょう。





2018年2月8日木曜日

独立開業を家族に反対される人

年末から計画されていた開業経営ガイダンスも、大阪、岐阜、東北(仙台)、名古屋と一通り終わりました。もちろん、今後もリクエストがあれば開催いたします。

さて、ガイダンスの受講者は、家庭や職場の環境も、できることも、開業資金の準備も各々まったく違います。
だから、その人の背景をしっかりお聞きして、私なりに理解したうえで答えるので、それぞれ発する質問は同じでも、答えはその人に合わせてそれぞれ異なります。

その中で、強弱はあるにしても、ご家族に反対されている方々が多いようです。
それはそうでしょうね。
定収入をもらっている夫が、突然不安定な職業を選ぼうとしているのだから、家族が不安に思うのは当然だと思います。

「家族に反対されている」などとおっしゃる方は、実は自分が不安で納得していないからだと思います。無意識からだと思いますが、説得できないことを家族のせいにしているのでしょう。

落ち着いて考えてみましょう。
独立開業すれば、収入は不安定になることに相違ありません。
当たり前の話です。
まったくリスクなしの独立開業はあり得ません。
だから、私のガイダンスでは無理に開業を勧めたことはありません。

しかし、経済的に安定しなくても、自分が納得する考え方で仕事をするのだから、精神的には安定するかもしれません。

ちなみに私たち資格者は、公務員ではないので副業もできます。
だから家族には「アルバイトでも何でもして、必ずみんなを養う」と言えば良いだけです。私も開業当初の仕事が無いときは、時給600円のアルバイトもやっていました。

独立開業とは「収入」の話ではなく、むしろ「生き方」の話だと思っています。

自分で心から納得していないことを、家族が納得するわけないでしょう。
独立したいのなら覚悟してください。
その覚悟が難しいなら、絶対に独立開業をしない方が良いと思います。