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2023年6月5日月曜日

自分で報酬額を決めてお客様からいただく難しさ

 独立して難しいことの一つは、お客様からお金をいただくことです。

お客様のお役に立てて、その対価としていただく報酬金額をはたしてどう決めたら良いのか、私も最初はとても難しかったものです。
社会の役に立つことと、お金をいただくことが、どうも同時に考えられなかったのです。

皆さんも、独立開業する前は、自分に入るお金については、全部他人によって決められていましたね。

その金額に不満に思っていた人でも、その世界から飛び出して自分で決めることができる立場になると、他人が決めてくれるシステムは結構楽だったんだなと思うはずです。

実際に、いざ自分で決めて良い立場になると、報酬金額の決め方に大抵の人は迷います。

本当に自分の価値をお金で表現するって難しいですね。

そして、皆さん、お金をいただくことに、どこか後ろめたいイメージがあるからでしょう。

でもね、お客様に提供するサービスの価値を、具体的な金額に換算するのがプロです。


確かに私も、お金だけを目的として仕事はしていません。

でもお金も頂かなくては仕事になりません。

お金をいただくことに対する後ろめたさを払拭する方法を教えましょう。

簡単な話です。

お客様のために誠心誠意努力して、報酬金額以上にお役に立つことです。

その矜持があれば、胸を張っていただくことができます。

私は全国の研修会などで、詳細な報酬計算の方法も教えていますが、まずはこんな考え方で報酬を考えてみましょう。




2021年2月25日木曜日

区画整理に関する宿題

 明日、岩手県土地家屋調査士会で研修会の講師をさせていただきます。

新型コロナウィルスにより研修会の開催が難しい中、岩手会も会場とオンラインと併用して研修会を開催するようです。岩手会の工夫とやる気に敬意を表します。

今回のテーマは「土地家屋調査士が知っておくべき土地区画整理事業のしくみ」です。

土地区画整理事業は、土地家屋調査士にとっても司法書士にとっても身近な事業ですが、身近だからこそよく知っているようで逆に誤解されやすい部分が多いようにも見受けられます。そのしくみをきっちり理解をしている専門家はとても少ないと感じています。

土地区画整理事業は、長い期間を必要としかつ広範囲を施行するので、その近隣の土地家屋調査士や司法書士は何度も土地区画整理に関する経験を積むことになります。

しかし、よく考えてみれば、何回も経験したと思っているそれらの経験は、そのたった1つの事業の経験でしかありません。

そのわずか1つだけの経験に頼り、他の土地区画整理事業に関しても分かったつもりで、受けた相談に軽々に回答することはとても危険です。

実際、地権者の区画整理に関する相談に対して、他の土地家屋調査士が不正確な答えをし始めたところに同席したことがありました。冷や汗が出ました。

区画整理事業がらみの争いは結構あります。わずかな経験だけで答えることはとても危険です。

もちろん区画整理事業に関してだけではなく、あらゆることでプロはわずかな経験だけで「もの」を語らず、条文に戻り、深い理解をする必要があります。


明日の研修会に関して、岩手会の会員には事前の宿題を出しています。

宿題はもちろん答えが出なくても結構です。

研修会前に考えてみたかどうかで研修効果が変わります。

以下に書き出しますので、興味のある方は知識をチェックしてみてください。


専門家として以下の質問をされたら答えられますか。

Q1)区画整理地内に入れられたが不満だ。反対すれば良いのか。 

Q2)区画整理地内の地権者全員が反対でも施行される区画整理があるのか。 

Q3)仮換地と保留地と従前地と底地の違いはなにか。

Q4)清算金や賦課金、減価補償金とはなにか。 

Q5)従前地を売買したいのだがどうすれば良いのか。また気をつけておくことはあるか。 

Q6)買った保留地を転売したいのだが、どうすれば良いのか。 

Q7)融資を受けて仮換地に建物を建てるときに、土地の担保はどうすれば良いのか。また保留地ならどうすれば良いのか。 

Q8)区画整理事業で従前地はすべて測量するのか。 

Q9)区画整理地内はすべて創設的筆界だから基本的に境界争いは無いか。 

Q10)仮換地の分筆登記の方法はどうするか。 

Q11)仮換地の地目変更登記はできるのか。 

Q12)仮換地や保留地上の建物表題登記はどうするのか。 

Q13)仮換地上の区分建物の敷地権はどう考えれば良いのか。 

Q14)保留地上の区分建物の敷地権はどう考えれば良いのか。 

Q15)従前地はいつ新しい地番になるのか。 

Q16)仮換地時に登記された建物の敷地地番は、いつ誰が新しい地番に変更してくれるのか。 

Q17)換地処分に伴い所有権者の住所が変わった場合は、その所有権名義人の表示はいつ誰が変更してくれるのか。 

Q18)換地処分で登記識別情報は発行されるのか。





2019年12月18日水曜日

東京ガイダンス報告

「土地家屋調査士事務所開業・運営ガイダンスin東京」が終わりました。
参加申込みが60名のうち仕事や病気で欠席者が出て、当日参加者は55名でした。
東京周辺だけでなく、遠くは熊本、福岡、沖縄、広島などから参加していただきました。またわざわざ私の地元仙台から参加くださった方も2名いらっしゃいました。
参加費無料と言っても、皆さん交通費など結構な負担をして参加してくださっていました。

すでにお礼のメールが多数来ていますので、進路の決定のお役に立てた実感もありますが、私自身はもう少し時間が欲しかったのが本音です。
事前に「すべての参加者の質問に答える」ってお約束していましたが、人数が多かったので質問に十分にお答えができなかった方もいたはずと思います。
その中では、懇親会参加希望者が37名という高参加率だったので助かりました。
ガイダンスでは懇親会に参加されない方の質問を優先して答えて、懇親会ですべての参加者のテーブルを廻って、回答を終えました。

今後の課題としては、もう少し参加人数を絞って十分な質疑応答をする会を複数回やるか、今回のように多数の希望者全員を受け容れて長時間開催とするか、どちらにしても私自身の時間的経済的負担もあるので簡単には答えが出ませんが、これからも工夫してできるだけ土地家屋調査士を目指す大勢の方々のお役に立てることを考えてみます。

なお、私がもう少し丁寧な回答をしたかったと思う方には、今年中にメールか電話でフォローしたいと思います。
また、このブログで回答しても差し支えない一般論については、参加されなかった方の参考になるかも知れないので、時間を見て少しずつ書いていきます。

さて、いただいたメールが嬉しいので一部紹介します。


【昨日はありがとうございました!
楽しすぎてクセになりそうです。
お陰様でモヤモヤがワクワクへと変わり決心が付きました。
「土地家屋調査士」になります。】


【東京開催にも関わらず遠方からも参加される方がいて、皆が本気で真剣に「自分の生き方」を模索し考えていることに、大変刺激を受けました。】


【先日のガイダンスは、ありがとうございました。
大変有意義なお話を伺うことができ、参考になりました。
一から新たなことに取り組む不安や収入面での不安は尽きませんが、鈴木先生のお話を伺ったうえで、今の気持ちとしては挑戦してみたいと考えており、これから何をすべきか、もう少し深く考えていこうと思います。


【昨日は、直接お話をさせて頂きまして誠にありがとうございました。
先生の仕事に対するストレートな思いをお伺いして、とても前向きな気持ちになることができました。
土地家屋調査士として、顧客のためを想って身に着ける知識こそが私たちが士業として備えるべき刀なのだと、私は先生のいろいろなアドバイスをそのように解釈するに至りました。またそれを自分のものとすべく日々の努力をしていきたいと決意しております。
鈴木先生をメンターとして慕われる先輩方ともお話をさせて頂けましたが、やはり皆さん前向きで素敵でした。
こんな方々がメンバーならば、土地家屋調査士の未来は明るくないわけがありませんね。すぐにでも始めない理由がありません(笑。










2016年4月11日月曜日

一番難しかった研修会

私は過去20年程、様々なリクエストに応じて、様々な科目の講師をしてきました。
講師の依頼については、日程の重複以外では断ったことはありません。
リクエストいただく内容なら、大抵の講義はできると思っていますし、何時間でもネタは大丈夫という自信もありました。

しかし、今年の1月に担当した研修は初めての試みであり、とても難しいものでした。
日本司法書士会連合会のe-ラーニング研修で「区画整理事業に伴う登記実務」というテーマをいただきました。
区画整理法の研修については、過去、各地の土地家屋調査士会でも司法書士会でも所轄官庁でも講師を担当させていただいておりますので、今回も受講者に合わせてフォーカスを変える必要がありますが、まあ研修の内容には問題がないと思って受託しました。

難しかったのは研修の方法でした。
今回の研修はe-ラーニングによるものです。
全国の司法書士の皆さんがネットで研修するものです。
つまり、講師が事前にカメラに向かって講義するものを収録する方法で行います。
講師の前にはカメラ以外誰もいないし、スライドもアニメーション効果は禁止であり、事前に提出した読み原稿を読むだけでアドリブは禁止のものでした。

この研修方法が、私にはとても難しく辛いものでした。
そして、この制限の中で講師をしてみて初めて自分の研修スタイルに気がつきました。
私は、研修会では常にライブ感を重視しています。
以前にも書いたように研修は受講者の「理解」だけではダメで、その先の「共感」まで伝えないと効果がないと思っています。

だから、研修会講師を受託すると、その研修会開催地域の実情や考え方を調べます。
受講者に「知識」を渡して「理解」していただくだけなら、そこまでしなくても良いでしょう。しかし「共感」まで求めるなら、実情や考え方などを調べるべきです。
その上で、半月かけてスライドを練っていきます。
その段階で95%程度まで仕上げます。
残りの5%は、研修会直前の主催者との打合せや会話でスライドを入れ替えて埋めます。
そのようにして100%まで仕上げたスライドを持って研修会に臨みます。
読み原稿を書いたことはありません。
予めの原稿は「生きた言葉」にならないからです。会場の反応を見ながら、説明手順を変えたり比喩を加えたりしながら、自分の言葉で話すから伝わるのです。
当日のライブ感を加えて120%の研修を目指しています。

ところが、今回の研修収録は、そんないつもの方法とまったく違った条件だったので、とても難しかったです。
もちろん、今回の研修内容について責任を持たなければならない日本司法書士会連合会としては、当然の選択だと思います。まったく正しい選択です。
しかし、受講者の反応が見えないのに、1ヶ月以上前に原稿を固めて、当日のアドリブは禁止という研修方法は、講師としては(少なくても私にとっては)とても辛いものでした。

普段は身振り手振りで講師をしているので、今回は手をどこに置くか困ったり、アナウンスの訓練も受けていない私がどのような抑揚でお話しすれば良いのか見当がつかず、ただただ原稿を読むという方法でどこまで研修効果があるのか、不安なまま終わりました。

今まで放送大学などの収録講義をテレビで受講して、講師にもっと表現力が無いのかと失礼なことを考えながら見ていたことを申し訳なく思っています。
事前収録による講義は、とても難しいことだと理解しました。

しかし、たくさんの受講者に対して短期で研修するためには、e−ラーニングはとても重要な方法ですし、日本土地家屋調査士会連合会でも同様に開催しています。
このような制限の中でも「共感」を得られるような原稿の内容と表現力の研究も、今後の講師には必要なのだと実感しました。
私にも新たな課題を与えられたような気がします。

司法書士の方は機会があったらご覧ください。
内容は役に立つと思います。
そこでは、普段と違う鈴木が居心地が悪そうに講義しています。












2015年11月18日水曜日

研修会配布資料を考える

このブログ、研修会講師ネタをもう少し書かせてください。

研修会には「研修レジュメ」と言われる配布物がつきものです。
基本的に「レジュメ」と「研修資料」は意味が違うものですが、依頼者も混同されていることが多いようです。
「レジュメ」とは講義の要約であり「研修資料」とは要約とは限りません。
まあここは無理に定義付けするまでもないと思うので、「レジュメです」と言いながら、決して要約ではない研修資料をお渡ししています。

実は私の講義では、「事前予告」と「当日の講義」と「研修資料(レジュメ)」は全部別の役割を考えています。

依頼者の組織の通常の研修予告のやり方があるはずですから、私が事前予告をさせて戴けることは難しいのですが、可能な場合は文章で「問い掛け」をさせて戴きます。
それが難しければサブタイトルに思いを込めます。

新人研修
「この資格業を続けて良いか、迷っていますか?」
報酬研修
「この業務で30万円で赤字と言うあなた、それならいくらから赤字か言えますか?」
区画整理研修
「換地処分前に仮換地を売ることと保留地を売ることの法的違いは分かりますか?」
震災研修
「もし大地震が起きたらどういう行動をするのか、家族と約束事がありますか?」

たとえばこんな感じです。
何か書かれれば、当日までに少しでも問題意識を持って講義に参加して戴く可能性が高くなるはずです。この僅かでも問題意識を持って研修に出席していただくと、当日の研修効果はまったく違います。

当日の講義については、絶対に講師とスライドに集中して欲しいのです。
それなりの準備と計画によって講義を作っていますので。
だから配布した資料は当日使いません。
資料は後日私の研修を思い出すためのものと位置づけています。

その配布資料に何を書くかが難しいですね。
先日書いたようにスライドの縮小印刷を渡すことはありません。
先が分かる講義は、後で見ても良いと思って絶対に集中しなくなります。

資料は講義を思い出すためのキーワードがあれば良くて、書きすぎるとまた安心して講義を聴かないかもしれません。
何をどの程度書くか、この度合いが難しいです。

実際良くまとまった研修資料は、後で読めば全部分かると思って、結局棚に入れて勉強しなくなります。
私の場合、項目とキーワードだけを書いておきます。
手抜きの言い訳?

どちらにしても、後から見る気がしない研修資料ということは、資料の問題ではなくて当日の講義がダメだったということは間違いないでしょう。











2015年11月8日日曜日

専門能力と講義能力

私は長年様々な分野の講師をやってきました。
またそれ以上に様々な分野の講義を聞いてきました。

自分が常に気にしているからかもしれませんが、講義を聴いているときには、講義内容だけでなく、その講師の伝え方がとても気になります。
そんな勝手な思いで、ここのところ研修会の講師側の話を書いてきました。

2015年10月29日ブログ「研修会で盛り込み過ぎは禁物と考えています」
2015年11月03日ブログ「研修会におけるスライドの使い方」

今回は講師の専門能力と講義能力のことを書きたいと思います。
専門能力があるはずなのに何も伝わらない講師がいます。
講義が始まったらすぐに眠くなる講義があります。
最初から伝える気があるのか疑問に思ってしまう方すらいます。

プレゼン能力の問題とでも言うべきかもしれませんが、それ以前のものでしょう。
志の問題なのかも知れません。
研修会を聴いていると、この講義はおそらく相手のためではなく、結局講師自身のための研修会なのかなと思う人がいます。
受講者に如何に分かりやすく伝えるために心を砕くのではなく、「結局この分野は俺が第一人者だろ」「俺ってすごいだろ」って言うためにやっているのかと思える研修会が結構多いです。

講義を聞き終えて「ちょっと興味は持つけれど、そんなに難しいなら私には無理だ」と思う受講者がいたら、その研修会はまったく意味がないどころか、害になります。

講師は当然にその専門分野の能力があります。だから講師の依頼を受けるのでしょう。
ちょっと疑問もあるのですが、そこは論じません。

そうだとしても講師なら、専門分野を知っているだけではダメなのです。
分からない人に伝える方法の研究もしなければなりません。
大学生の頃、偉い教授と聞いていたけれど教え方が下手という先生は多くいました。
大学の教授たちは確かに研究者です。
しかし教壇に立つことでも給料をもらっています。
だから、その部分もプロじゃなければなりません。
私たち実務家が講義をするときも同じだと思っています。

講師にプレゼン能力を求めるということに、違うとおっしゃる方も多いでしょう。
プレゼンというと相手に媚びるような何らかちゃらちゃらしたイメージなのでしょうか。
それなら、おそらく誤解されているのだと思います。
私はとてもとても大事なことだと思っています。

もちろん本当の意味で媚びた講義をする人がいるとすれば、それはそれで講師自身のためでしょうが。

ではどうすれば良いのでしょうか。
当たり前の話ですが、主役は受講者であり、講師は受講者への奉仕者であると理解することです。
講師は偉そうだったり、講師に招かれただけではしゃいだりしないで、まずはクールに講義を組み立てて欲しいと思います。

まずは受講者の現状の能力とニーズを正確に把握していますか。
受講者が忙しい時間を割いてまで、何を求めてこの研修会を受講するのか、再度考えてみてください。
分野にもよるでしょうが、基本的に受講者が過去同じ分野の研修を受けたことがあるか、それはどんな内容の研修だったか、把握してから講義していますか。

2010年6月25日ブログ「過去3年分の会報を読んでから行け」

その上で「与えられた時間内に、今回は何を求められていて、実際に何を伝えることができるのか」そこをプランニングしなければなりません。
可能なら主催担当者と、この研修計画を何度か打ち合わせをすべきです。
受講者が分からないのは、受講者の能力ではなく講師の能力のせいです。

その上で、一年間かかって教える教師は当然として、たった一度だけの研修会の講師であっても、受講者の人生に関わっているという自覚を持って欲しいと思います。


うーん、
結局自分のハードルを上げただけかも







2015年11月3日火曜日

研修会におけるスライドの使い方

先日は研修会講師に関する私の考え方(研修会で盛り込み過ぎは禁物と考えていますを書かせていただきました。今日は研修会でよく見るスライドの使い方について書かせて戴きます。

私が研修を始めた20年程前に、自分の説得力を補うためにプレゼンテーションソフトのスライドを使い始めました。
世間があまり使っていない頃でした。会場にプロジェクターの準備をお願いしたら、レンタル代で1日7万円かかったとお聞きして、恐縮した記憶があります。

今は研修会でキーノートやパワーポイントのスライドを利用することが当たり前になりました。むしろスライド無しの研修を見ることが少ないですね。

さて講師として長年スライドを使ってきたので、これから講師をする人に、私なりに感じていることをお伝えしたいと思います。
他の講師を指導できるほど講師のスキルがあるわけではないですが、他の研修を受けていて残念に思うことも多いので、ここに書いてみます。
あくまでも私なりの考えであることをご理解の上、お読みください。

1、スライドを使う意味

上記のとおり誰でもスライドを使う時代なので、逆にスライド作成を義務と考えて、別に無くても良い内容のスライドを作成する人がいます。
スライドは何のために使うのでしょうか。
研修に効果があるから使うのに、講師にとって何らかの作成義務のような思いで作成するなら、おそらく意味がないでしょう。
スライドは、研修効果を考えて、資料だけでは説得しにくい部分を補う為のものです。
それを考えないのなら、無理にスライドを使わないほうが良いでしょう。
この時代、スライドを使わないというと、逆に達人っぽい雰囲気を醸し出せるかもしれません。
ちなみに話が脱線しやすい講師にとってはタイムキーパー的な役割を持つという意味はありますが。

2、スライドの表現

スライドに文字をたくさん書き込む人がいます。
見ただけで黒っぽいスライドです。
基本的に間違っています。
スライドは読むものではありません。
長年受講者としても研修会に参加していると、すぐに次の画面に切り替わるスライドの文字を読ませられるのは、とても忙しく苦痛であり、むしろ講義に集中できない可能性があります。それなら手持ち資料として配布すれば良いだけです。
長い文章や条文を解説するために載せるなら、それはそれで結構ですが、それにしてもやはり配布資料との関係をしっかり考えて、なぜスライドなのか考えて利用すべきです。
どうしてもスライドに書き込みたくなる人は、むしろスライド使用を一旦止めて、配布資料を充実させた方が良いかもしれません。
そうすることで逆にスライドの使い方が分かるかもしれません。

3、アニメーションの使い方

研修内容にもよるでしょうが、アニメーションの多用は止めて欲しいです。
パワーポイントやキーノートを使い始めの講師に有りがちの現象です。
20年ほど前の私のスライドも今の私の基準で振り返るとアニメーションが多かったようです。反省しています。
アニメーションは配布資料では表現できない方法で説明ができる効果的なツールです。
ただし受講者側から見ていると、講師側の自己満足的な使われ方が多いようです。
アニメーションが多いと講義の本筋に集中できないなどの弊害すらあります。
アニメーションでないと伝わり難いことは何かを精査して、スライドのアニメーションを整理する必要があると思います。

4、スライドの事前配布

スライドをそのまま縮小して印刷し、レジュメの一部として事前に配布することが多いですね。
私の研修では絶対にやりません。
あれは次の展開が手元でわかりますので、受講者が前を向かず、下を見始めます。
しかもスライドが手元にあるから、帰ってからでも見ることができる安心感で、その日の研修に集中しないことがあります。
後でも確認できる研修資料は別に作成し、スライドはその資料を読むときの指針を伝えるために使うべきです。


意見が違う人もいるかもしれません。
ただ私がどうしても言いたいのは、研修会は講師のパフォーマンスの場ではなく、受講者のための場だということです。
講師に選ばれる方は、元々その分野の能力が有るのですから、その部分の研鑽は問題ないはずです。
ですから研修会までに講師がやることは、どうすれば研修会という限られた時間と場所で、一期一会の受講者に如何に分かりやすく伝えることができるか、先日のブログで言う「共感」までいけるのか、この点の工夫に全力を尽くすことです。

研修会は講師のものではなく、あくまでも受講者のためのものですから。




2015年10月29日木曜日

研修会で盛り込み過ぎは禁物と考えています

先日、研修会の講師を初めて担当する方から、研修会に使うスライドについて意見を求められました。
初めての講師って気合いが入りますよね。
スライドを見せてもらいましたが、思ったとおり「盛り込み過ぎ」でした。

研修会の講師は誰でも、受講してくれる皆さんの為に、できるだけたくさんの事をお伝えしたいと思います。
でも受講者の目的意識やその分野のスキルはそれぞれです。
もともと参加が任意の研修会と、参加義務のある研修会では、なおさら受講者の姿勢はそれぞれ別になるでしょう。
持ち時間内で、その多様な受講者に何を伝えられるのか、とても難しいですね。

研修会の内容にもよりますが、多く戴いても3時間が限度の研修会では、なかなか伝えたいこと全部を伝えるのは無理です。
だからこそ講師はたくさん盛り込んで頑張るのでしょう。
でもそれでは逆に伝わらないのです。

私が研修会で考えていることは、枝葉まで教えることではありません。
先日も「区画整理法」の講師をしましたが、「区画整理」が「技術」か「法律」かさえ区別が付かない受講者に対して、2〜3時間で枝葉まで教えることは無理です。
だから、受講者に「その分野の勉強を今後してみたいと思わせること」、「その分野の勉強をするには何から始めれば良いかを教えること」、そして「勉強をし始めたときの指針としてその分野全体の成り立ちを伝えること」です。

前も書きましたが(講師もプロ意識を)、受講者の「理解」の先の「共感」までいかないと、研修は成功とは言えないと思っています。

理解したからと言って、行動に直結しないことは多いです。
たとえば「お前の言うことは分かった。でも俺は違う」ということでもあります。
共感まで行けば「分かった。確かにそうだよな。やってみる」ということになります。

詰め込むことができるのは理解です。
でも一期一会の講師が伝えたことが理解を超えて参加受講者の共感まで行くことができるのは、せいぜい30分に1項目程度のことと思っています。
文章で言えば1行程度のことです。

私が研修会に臨む時は、とにかく受講者のスキルや思考を事前リサーチします。
受講者を知らなければ響く言葉は伝えられませんから。
いわゆるスカウティングです。
そして講義時間に3時間戴けば確実に伝えられるのは4〜6項目、2時間であれば3〜4項目と考えます。
それらの項目を確実に伝えるために、様々な受講者の考えを想定して、様々な角度から1項目あたり30分程かけて説明します。

そしてスライドを作るときは、まず伝えるべきことが4つなら、その4枚のメイン・スライドを作ります。それを固めたら、そのメイン・スライドを理解して共感を得てもらうためのサブ・スライドで固めます。

盛り込みすぎで何も伝わらないよりは、1項目でも確実に伝えたい。
そんな感じの研修の方が結局受講者のためになると思っています。








2015年1月13日火曜日

1月30日は研修会です

私が会長になって以来、宮城会では研修案内に、研修のタイトルだけではなく、その研修で具体的にどんな内容が話されるのかをずっと書いてきました。

実際、次回は「民法の研修会」とか「測量の研修会」とだけ聞いたら、受講する気になるでしょうか。
皆民法は知っていると思うでしょうし、測量なら毎日やっていると思うでしょうから。

民法なら「民法の中でも私達の業務に関連するこのような論点に言及します」と例示すれば、研修会の目的が明確になるし、受講するにも事前の準備ができるようになります。
たとえば宮城会では過去にも以下のような予告をしてきましたね。

http://fermatadiary.blogspot.jp/2013/01/blog-post_6825.html

今後も研修会を主催する方々には是非この点にご留意なさって欲しいと思っています。


また研修会に何を企画するかは、その土地家屋調査士会がどのような世界観を持っているかがとても重要です。
今の土地家屋調査士には何が不足していて、今後の世界はこのようになるからこれからの土地家屋調査士には何が不足しそうかを、常に意識しなければなりません。
それらの不足を補うのが研修会ですから。

ですから研修会で何を企画して良いか分からない役員は、おそらく土地家屋調査士を理解していない方でしょう。



なお研修会は、それらの論点を学ぶ切っ掛けに過ぎません。
すべてを最初から最後まで学ぶには、どのテーマでも連続講義を企画しなければなりません。
それは、なかなかできない事ですから、土地家屋調査士の世界観を伝え、会員はどこから歩み出せば良いかを伝えるものが研修と心がけてきました。


また研修は個人でできるから、組織で企画しなくても良いと嘯く人がいます。
おそらく一生建物登記などで生きていけると勘違いしている人です。
これだけ社会が「空き家問題」などと言っているのに、何を考えているのでしょう。

確かに自分で勉強できる分野も、たくさんあるでしょう。
しかし個人で勉強するには時間も費用もかかります。
また組織でないとお招きできない講師もいます。
そんなことを考えながら宮城会も研修を企画してきました。


さて1月30日は宮城会の研修会です。
今回もなかなか個人では触れにくい研修会を企画しました。
最新の測量機器やGISに触れる機会を創ろうと考えました。

最新測量機器も興味があるけど、販売店に問合せすると営業対応が面倒になるからとか、
今更GISって何?って聞きにくいとか、
有るでしょ。

以下のように気楽に聞くことができる研修会を企画をしてみましたので、会員の皆さんご参加ください。




2014年9月21日日曜日

関東ブロック新人研修会に向かう

本日と明日、関東ブロック協議会新人研修会の講師として東京に向かうため、只今新幹線の中で書いています。
関東ブロックの新人研修会講師は初めてですが、どこの新人もみな同じ想いでいるはずです。お会いするのが楽しみです。

各ブロック協議会の新人研修会は年に一度開催されますので、その参加者は原則開業して1年以内の方です。
ですから昨日開業したばかり(もしくは登録手続き中)から、もうそろそろ1年になる会員まで参加しているはずです。
念願の土地家屋調査士を開業してワクワクした気持ちで参加されている方もいるでしょう。1年やってみて思った以上の厳しさも感じている人もいるでしょう。

資格予備校では試験合格のノウハウを教えてくれますが、合格後の世界は教えてくれません。予備校のCMのイメージで、合格したら誰でも「即」バラ色の生活が待っているかのように理解されているのかも知れません。
それも含めて頑張って合格されたのでしょうね。

残念ながら、どんな業界でも数年の努力で(場合によっては1回の試験で)残りの人生がバラ色になる世界はありません。
でもこれは当たり前の話しで、下を向いたり、後悔したりする必要はありません。
努力次第で、自分の人生に納得できる生き方はあります。
これが独立開業の醍醐味です。

開業したけれどコネもないから仕事が来ない・・・と言うのですか。
コネや年功序列の世界が嫌だから、自分の実力で切り開くこの世界を目指したのではないのですか。
仕事が来ないのは実力が無いからだけです。

私達講師は担当の科目を教えているだけではないのです。
少なくても新人の研修会講師は、受講者のこれからの人生に深く関わります。
講師が意識するしないにかかわらず、その人の生き方に影響を与える可能性があります。
なにしろ新人が挨拶以外で会話した先輩調査士は、補助者時代に勤めていた事務所の土地家屋調査士だけかもしれませんから。
ですから我々講師は、しっかり講義内容を検討し、受講者に真摯に向き合い、絶対にごまかさないで、講師の土地家屋調査士人生をかけて講義をする必要があります。

すべての質問に答えます。

努力の必要性を教えましょう。
むしろ自ら努力したくなる世界を教えましょう。
次に努力の方向性を教えましょう。
そして明日何から始めれば良いかを教えましょう。

大丈夫です。
20代の頃から30年以上ワクワクしたまま土地家屋調査士を続けている人がいますよ。




2014年3月2日日曜日

中部及び東北ブロック新人研修会にて

一週間前に中部ブロック新人研修会の講師に、昨日東北ブロック新人研修会の講師に、連続で行ってきました。
私、1月の近畿ブロックと今回の中部ブロックと東北ブロックの3箇所の新人研修に10年以上お伺いしています。

土地家屋調査士の事務所を開業する際には、必ず土地家屋調査士会に入会しなければなりません。これを強制会と言います。
新人は自分の所属すべき会を、全国50会から選んでいる訳ではありません。
たまたま住んでいる都道府県の土地家屋調査士会に入会するのです。

本来強制会だからこそ、どの会に入会しても同じサービスを受けなければなりません。
たとえば研修会などは、同じ内容の同じ質の研修会を受けるべきです。
しかし、その会の研修会の企画ローテーションの都合や、その会の予算等様々な要因で、必ずしも各々の新人にフィットする研修会が毎年用意されている訳では有りません。

そこで全国の各ブロック協議会にたいして、最低でもこのテーマでこのレベルをこんな伝え方で、新人研修会を開催して欲しいという企画とテキストを、以前日調連が作り、その普及に努めました。その頃に私も日調連の研修担当理事として動いていたので、今の形態の新人研修が様々な議論で生まれたことを明確に記憶しています。

あれから15年ほど経っています。テキストは現在の法律改正等に対応しないものになってしまいましたが、新人研修会についての趣旨は残っています。毎年各ブロック協議会では研修スキルを磨いた講師たちが情熱的な研修をしています。

ただし、20年〜30年ほどの講師たちの経験と知識と情熱を、どんなに工夫して伝えても、各々2時間程度の持ち時間で伝えられることは「これからの行動と考え方のヒント」だけなのです。
ですから、どんなに良い研修を受けて、受講生が「為になった」と感じても、それだけでは何も生まれません。
それらの研修を受けて、次の日からどう行動するかが一番大事なのです。
今回のテキストも10年後読み返せば、また見方が違うはずです。

昨日は東北ブロック協議会で、受講生ひとりひとりに「修了証」をお渡ししました。
挨拶でも申し上げたのですが、新人研修は「終了」したのではなく、「開始のきっかけ」なのです。


2014年1月26日日曜日

近畿ブロック新人研修会にて

近畿ブロック協議会の新人研修会に今年も講師でお招き戴きました。



いつも書いていますが、この新人研修会や先日の開業ガイダンスで講義をすることは、他の研修会の講義とはかなり違った特別のものだと考えています。

試験に合格し、土地家屋調査士会に登録して開業し、これから土地家屋調査士として頑張ろうという意欲に満ちた新人達の未来を左右しかねない研修会だからです。だから細心の注意を払って研修を構築しなければならないと考えています。

研修では自分勝手な哲学を振り回す訳にも行きません。しかし、当たり障りの無いことだけ言っても、何も心に響かないでしょう。そんな研修は意味がありません。その兼ね合いがとてもデリケートなものだと思っています。

新人たちの中で補助者歴が長い人は変な自信を持っていて、慢心していることがあります。補助者歴が長くても、土地家屋調査士をしていた訳では無いのです。その事務所の登記事務や測量をやっていただけです。しかも勤めていたその事務所は、全国の土地家屋調査士の中の標準的なレベルの事務所なのでしょうか。

土地家屋調査士を知っていると言っても、勤めていた事務所の先生を含む数名程度の土地家屋調査士しか知らないでしょう。それで土地家屋調査士全体を見たつもりにならないでください。
また登記情報を含む地籍情報の動向や、これからの制度の見通しなど聞いたことも考えたことも無いでしょう。そんなことを考えておかないと、時代に取り残されてしまうかも知れません。
全国には様々な土地家屋調査士がいることをお知らせしたいのです。

一度謙虚に、今回の講師たちの話しを聞いてみて欲しいと思います。
近畿ブロック新人研修会の講師団は、後輩たちの為に熱心に講義をする人たちが集まっています。そしてこの講師たちは、受講している新人たちの為に、時間を割いて長年かかって身に付けた自分のノウハウを、分かりやすく伝える努力をしているのです。
それらの講義を聞いて、本来の、そしてこれからの、土地家屋調査士のあり方について、気がついて欲しいのです。

私個人としても、昨晩も研修後に夜中まで新人の皆さんと、お話しができました。
すべて聞かれた質問には答えたつもりです。
皆良い眼をしていました。
全国であのような新人たちが増えてきたら、彼らの事務所も、この土地家屋調査士業界も素晴らしい未来が待っているでしょう。



2014年1月22日水曜日

本日は研修会ですよ

本日は以下の研修会です。
宮城会会員の皆さん、忘れていませんか。

関連業務の研修会です。
関連業務の知識が曖昧のまま業務を続けてトラブルになることが有るようです。
会場でお待ちします。


平成25年度第3回研修会


日時 平成26年 1月22日(水) 13:00~17:00

会場 フォレストホール(宮城教育会館)
   〒981-0933 仙台市青葉区柏木1-2-45/TEL:022-271-9340

① 建築基準法(道路部分を中心に) 13:35~14:35
     講師 宮城県担当職員

② 都市計画法(開発行為を中心に) 14:45~15:45
     講師 宮城県担当職員

③ 開発行為の事例説明       15:55~16:55
     講師 宮城県土地家屋調査士会研修部


追記)

お疲れ様でした。
本日は、本当に多数の会員が出席されました。
また他の会からも20人ほどの会員が参加されました。
研修部も企画した甲斐がありました。
会員の皆さんの明日からの業務に役に立てて戴きたいと思います。

2013年12月12日木曜日

フィンガー・プレゼンター 黒曜石

私昔から研修については、受講するにも、講師をするにも、とてもこだわっている部分があります。

講師がどんなに中身に自信が有っても、受講者に伝わらなければ自己満足です。
貴重な時間を割いて来てくださる受講者の為に、いかに分かりやすくお伝えするかが、講師のすべてだと思っています。

自分たちの学生時代の大学教授の講義を思い出せば思い当たるでしょうが、研究者としての能力と、他人に伝える能力は、まったく別のものだから、講師をする人はそのための別のトレーニングすべきだと考えています。

知識を伝えただけでは「伝達」までです。
「そんな研修も有ったな」というだけに終わります。

噛み砕いて説明するだけでは「理解」までです。
「お前の言うことは分かった。でも俺は違う」ということになるかも知れません。

講義は、できれば「共感」まで行きたいものです。
「本当にそうだよな。俺もやってみるか」
そこまで行けば研修の意義が有ると思っています。

でもこれがとても難しいです。
謙虚さがオドオドしているように見えると知識すら伝わりません。
逆に「俺はこんなに知っているんだぞ」ということに終始する講師では共感は得られませんし、

私は、研修会では当日使うスライドの印刷は絶対に渡しません。講義の展開が見える資料を予め渡すと、当日の講義に集中してもらえません。受講者が「後でこの資料を見れば良い」と考えて、研修会では注意散漫になってしまいます。
お渡しする資料は後で見てもらえば良いのです。むしろ、「研修会後に再度この資料を開く気になるか」そこが研修の要です。

ですから私が講師をするときには、お話しの仕方も工夫しているつもりです。
一回の研修会でお伝えできることは、時間的にも多くは無理です。
だから「最低でもコレとコレ」という具体的目標に絞ろうと考えています。それ以上詰め込むと「俺凄いだろう」という研修会になってしまいます。

重要なことは、研修受講者が研修資料を、講師がコンピュータのディスプレイを、お互いに凝視している中では共感は伝わらないと考えています。
ですから受講者の眼を見ながら、身振りも意識しながらお話しをしています。

そのために私の研修は両手フリーが望ましいのです。
そこで最近愛用しているのが、この指輪です。


「フィンガー・プレゼンター黒曜石」です。コクヨで作った指輪だから「コクヨウセキ」なんでしょう。(ビミョー)

写真をご覧になれば機能が推測できるでしょう。
2.4GHz周波数帯域のラジオ波でコンピュータと接続してページ送り等ができるガジェットです。今までもこの手のガジェットはいくつか使ってみましたが、今のところ一番良いです。
既に何度かの研修会で使ってみています。

しかし誰にでもお奨めするものでもないでしょう。
研修会のスタイルによるでしょうね。
指示棒やレーザーポインターを使うタイプの講師は、ちょっと手持ち無沙汰になるかも知れません。
両手フリーが望ましいと思っている講師にはおそらく一番良いでしょう。そのタイプの講師は一度検討されても良いかと思います。

ここまで書いてしまうと、明日の群馬の研修会で「お前、ブログで書いていることと、実際に今日やっていることが違うだろ」って言われるかも。






2013年11月25日月曜日

研修ライブラリについて

日調連の研修ライブラリをご存じでしょうか。
私が以前日調連研修担当理事の頃に提案して作ったものです。
どうも当時のコンセプトが今に伝わってなくて、あまり稼働せず、残念な思いをしています。
あの研修ライブラリを再度有効活用できるようにするために、少しここで当時のコンセプトを紹介させて戴きます。

全国の土地家屋調査士の世界では、とても多くの研修会が開催されています。
土地家屋調査士会、支部、青調会等の任意団体、ブロック協議会等々の研修会を合わせれば、どこの会に所属していても年間5〜10回の研修会は開催されているのではないでしょうか。

それでも私が新人の頃を考えれば、それではとても足りないくらいに研修会が必要でした。また自分の所属会だけではなく、他の所属会で開催されている研修も聞いてみたいと思っていました。

そこで考えたのが全国の研修を集積させて、その中からいつでも自己研修ができるようにする仕掛けです。
全国の土地家屋調査士会で一年間に開催される研修会を、支部等を併せて少なくても5回と考えても、50会あるので、最低年間250回の研修会が開催されています。
それを日調連の研修ライブラリに登録していくのです。それを土地家屋調査士なら誰でも、事務所からネットで検索して、閲覧研修できるようにする仕組みでした。

当時、日調連で私の提案がとおり、実際にライブラリを作ってくれたのは兵庫会の光川会員でした。
ライブラリに登録するには、もちろん講師の承諾が必要です。講師によって、動画まではNG、レジュメはOK等々、様々な制限はあると思います。それでも良いんです。
極端に言えば、「いつ、どこで、誰が、どんなテーマで」というデータだけでも勉強の切っ掛けになるはずです。また研修会を企画する担当役員のヒントにもなるはずです。

あれから10年、そのまま順調に稼働していたら少なくても2500回の研修会のライブラリができていたはずです。このライブラリのデータベースは、個人の勉強にとって力になりますし、組織的にも対外的に説得力を持つはずです。

残念ながら今まであまり稼働していなかったのは、当時ネット事情が今ほど潤沢ではなくて、動画などを閲覧するには回線スピードなどの問題もあり、少し時代が早かったという問題と、このライブラリのコンセプトが日調連内部でまったく引き継がれていなかったことが問題だと考えています。

できれば、再度日調連の研修ライブラリを充実させて欲しいと考えています。
私が個人的にサーバーを準備して、研修データベースを勝手に集めることもできますが、やはり組織的に集める方が全国の会員の為になるでしょう。
これから各会が支部や青調会なども含めて、ここ2〜3年の研修会のデータをライブラリに登録しただけで、簡単に1000件程度の研修会データベースができるのですが。





2013年5月8日水曜日

「研修の機会が少ないのではないか?」に答える

今日も茨城青年土地家屋調査士会の研修会からの質問に答えましょう。

「研修の機会が少ないのではないか」

この質問者はとても前向きな方でしょうね。まだまだ研修が足りないと考えているのですね。専門家として国民の皆様のお役に立つために、日々変化している専門分野の技術や法律に精通していることは当然ですし、事務所経営や事件管理の研究も必要だと思います。

さて質問者はその研修の機会が少ないと言っています。
茨城県土地家屋調査士会の研修会と質問者の所属する支部の研修会の回数が年間何回開催されているのか不明ですが、それを不足していると考えているのですね。それなら質問者はどの程度の研修機会が必要と考えているのでしょうか。

宮城県土地家屋調査士会を含むどこの土地家屋調査士会でも、研修会は予算次第で何回でも開催できます。予算付けが本当にできるなら、極論を言えば毎週でも研修会を開催できます。そうしたら質問者は本当に毎週研修会に参加するのでしょうか。
(まあ宮城会の場合は会費が不足しているので、そこまでは絶対無理ですが)

研修会は回数も大切ですが、むしろその内容の吟味が大切です。
土地家屋調査士会の研修担当者も苦労しているところです。分野によって会員のスキルが違いますので、会員全員が納得する研修会の企画はとても難しいのです。

土地家屋調査士会は会員全員を意識しながら研修会の企画をしています。ですからもし質問者にフォーカスした研修会なら青年土地家屋調査士会を積極的に使うことも必要でしょう。強制会と任意会で、お互いにできない研修会を開催することで、補完的な役割を担うことができると思います。

ただし、私が研修会についてもっと大事なことと考えていることは「研修会はきっかけに過ぎない」ということです。
研修会は何回受講しても、またそれがどんな充実した内容であっても、帰宅してからのご自分の研鑽が伴わなければ身につかないものです。
私は、研修会の役割は、その分野を勉強しなければならないという「気づき」と研鑽する「ヒント」と「モチベーション」をお渡しすることだと思っています。
ですから、仮に毎週研修会が有っても、モチベーションの維持はできるでしょうが、会員に本当の実力が付くとも思えません。むしろ研修会で学んだことを課題として次の研修会までに身に付けることが大事と考えています。

なお、研修の中身や回数に不満なら、調査士会の研修担当者にリクエストをしても良いと思います。実現できるかどうかは様々な方向で検討しなければ答えられないかも知れませんが、研修会は皆さんの会費を使っていますので、リクエストなどは当然の権利だと思います。



2013年4月24日水曜日

茨城青年土地家屋調査士会研修会

先週末は講師として茨城青年土地家屋調査士会研修会に行って来ました。
地元では宮城青調会の総会でしたが、茨城の講師の方が先に決まっていたので、総会を休んで失礼致しました。

茨城青年土地家屋調査士会に講師で伺うのは2回目です。前回の時も思いましたが、茨城の皆さんはとても熱いです。
全国こういう前向きな方々に会えるだけで、私個人の研修に行く楽しみになっています。

「土地家屋調査士の未来のために〜いるやるか?今でしょ」
この研修タイトルは、私のブログで書いたテーマからの茨城の藤井さんのリクエストです。

3時間のうち2時間を講義にして、1時間を質疑応答の時間にしました。
「ぶっつけ本番で何を質問しても良いですよ」と言っていたら、茨城の皆さんは事前に打合せをされて、何と質問だけで25問を用意されていました。
これは無理ですね。1問2分強ですね。質問を聞いただけで2分過ぎます。
そしてそれらの質問が結構重いのです。
新人の土地家屋調査士としての生き方から、資格制度、役員論、様々です。
その1問を答えるためには1回の研修会ができるものもあります。
質問だけでこれだけの準備時間を割くところはあまりありませんし、良い質問が多いのでとても嬉しかったです。
時間の関係で答えられなかった質問が多いのですが、差し支えないものについては、このブログで少しずつお答えいたしましょう。

でもぶっつけ本番で皆の前で何でも質問を受けると確かに言ったけれど、緊張感で一杯になりますね。
もう次回から止めようっと・・・。





2013年2月24日日曜日

今でしょ!

昨日2月23日は中部ブロック新人研修会に講師を担当しました。
毎年、中部ブロックと近畿ブロックと東北ブロックの新人研修会で講師を担当させていただいている事が、新人研修をライフワークにしている私にとってはとても嬉しい事です。

新人はまったく新しい世界に入って、これからどうにでも変わる可能性を持っています。
新人研修は、一般の研修会以上に会員の人生に関わる可能性がある研修会だと認識していますので、誠心誠意講師を務めさせていただいています。
この世界に入って最初の研修がガッカリするものなら、今後土地家屋調査士会がどんな企画をしても参加しないでしまうかもしれません。
それによって、その人の可能性も業界の可能性も失われる事になります。

それでも地元の宮城会なら、まだ後からフォローする可能性がまったく無い訳でもないのですが、他所ではそれもできず、他のブロックから依頼される場合は本当に気を使います。ということで、今回も新人の為に工夫してスライドを作り、工夫して研修を担当したつもりです。

ところで、最近研修会をやって感じる事は、最近の新人が本当に大人しく、真摯に講義を聴いてくれているということです。それ自体はとても良い事で、実際に最近の新人は、昔に比べれば研修好きで勉強好きのようです。

しかし以前にも書きましたが、問題は研修を聞いて納得するだけで、動かない人が多いという事です。
全国には研修のはしごや研修のおっかけをしている人達もいます。彼らはとても前向きな人たちですし、心から頭が下がります。ただし、その人達すら、研修を聞くことが目的化していないのかが、たまに心配になる事があります。

研修は明日動く指針をもらう為に受講するのです。
行動が伴わない研修は、少なくても私たちの業界の研修には有り得ないはずです。
全部理解してから動くということでしょうか。
研修を何回聞いても、全部理解することは無理です。
むしろ動くから理解が深まる事もあります。
だから動くべきです。

では「いつやるか?」






2013年1月28日月曜日

近畿ブロック新人研修会にて

毎年お招きいただいている近畿ブロック新人研修会に今年も講師で行ってきました。
土地家屋調査士試験に合格し、土地家屋調査士会に登録して開業し、これから一人前の土地家屋調査士として頑張ろうという意欲に満ちた新人達に会える事が、私にとってもとても嬉しく大切な時間となっています。

今まで様々な分野の研修会の講師をしてきましたが、この新人研修だけは特別なものと考えています。
なにしろ受講生である新人の人生に関わる研修だからです。
この研修会が、受講生の方向性を決める大きな影響を残します。
だから、新人研修会の講師をするということは、とても難しい事だと思ってい
自分勝手な哲学を振り回す訳にも行きません。しかし、当たり障りの無いことだけ言っても、何も響かないでしょう。だから、新人研修会の講師をするということは、とても難しい事だと思い、とても気を遣っています。

私の研修の一番の目的は、受講生の固定概念を崩す事です。そして崩して迷いはじめた方向性を、改めて判断する指針を示す事です。
本来の、そしてこれからの土地家屋調査士のあり方について、気がついて欲しいのです。

受講生は合格率数%の試験に合格して世間から褒められるから、慢心している事があります。土地家屋調査士会に入会したら、土地家屋調査士の全員が合格者だから、その成功体験は何でも無い事だと気がつかなければなりません。
全国模試何位以内なんて、入会してから自慢げにお話ししている人を見た事が有りますが、それこそまったく意味の無い事です。今何をしているか、何ができるかが問題です。

補助者経験が長い人も気をつけなければなりません。
その事務所内で「何でもできる」と自他ともに評価されているのかもしれません。
ただし、それはその事務所の中の、しかも登記事務能力の評価です。
その事務所は全国の土地家屋調査士の中の標準的なレベルの事務所なのでしょうか。
補助者経験の長い人や2代目3代目の人は、他の土地家屋調査士をあまり知りません。
今の土地家屋調査士は不動産登記申請の代理業だけやっている訳では有りません。
全国には様々な土地家屋調査士がいることをお知らせしたいのです。

一度それらの小さな成功体験を謙虚にリセットする必要が有ります。
それが早くできる人が、一流の土地家屋調査士の入り口に立つ事が出入ると信じています。そうなれば、事務所経営についても考え方がブレなくなるでしょう。
物事を決めつけている人がブレない人ではないのです。柔軟で謙虚な考え方ができるからブレなくなるのです。

そんな新人が増えれば、この土地家屋調査士業界の未来も素晴らしい未来になるでしょう。そう堅く信じているから、新人研修をライフワークにしています。






2012年12月5日水曜日

研修会の構成と落語の構成

昨日12月4日は宮崎県土地家屋調査士会の研修会と(社)公共嘱託登記土地家屋調査士協会の研修会の講師をするというダブルヘッダーがありました。
調査士会の研修は土地家屋調査士を対象に「土地家屋調査士の事務所経営と業務報酬」を、公嘱協会の研修は土地家屋調査士と行政担当者を対象に「東日本大震災からの報告〜被災する前にできること」をお話ししました。

私にとっては初宮崎でした。初めての会に伺うときには、とても気を使います。
事前にその地域の業務、気質、過去の研修会の雰囲気を把握しないと、研修に実感が伝わらない事があります。特に午前中は業務報酬に関する話ですから、宮崎の調査士の事務所の形態や、一般的な不動産の規模、不動産の価格、業務の方法、業務報酬などを把握しないと、講師として上滑りする事があります。
「お前の言う事はわかるが、それは仙台の話だろ・・・」などの感想を与えたら、何の意味も無いからです。

以前も書きましたが、私は子供の頃から寄席番組を見て古典落語で育ちました。
研修会では、あの落語の構成がとても参考になっています。
最初に「つかみ」があり、「まくら」があります。そのあとで「本筋」に入り、最後に「さげ」で終わります。

研修会でも最初に何らかの「つかみ」が必要です。
聴衆に興味を持ってもらわなければなりません。
聴衆は最初の数分でこの講師の話を聞くべきか、寝ても良いか決めます。
その後どんなに良い話をしようとも、聴衆が寝てしまうと何も伝わりません。
品の良い範囲で、自分に興味を持ってもらう。初めての地域では特に必要です。

次に「まくら」です。
本筋と関連する話をしながら、場を和ませ、自分の世界に持っていく馴らしをしながら、無理なく本筋に入ります。このときに「羽織」を脱いで、「今から本筋だよ」と聴衆に理解させる場合もあります。昨日はやりませんでしたが、私も上着を脱がせてもらう事があります。落語家ではこの「まくら」を話ながら、聴衆の雰囲気を見て、その場で「本筋」を選ぶこともあるようです。まあ私は講師ですから研修の本筋を変えることはできませんが、表現や使うスライドを変える事はよく有ります。
この場面で少しずつ話しながら、聴衆の表情を見ています。長年講師をしていますので、この場面で表情を見ていると、だいたい業務に対する考え方が把握できてきます。
研修会の構成の中でこの部分がとても重要だと思っています。

本筋を話し終わってからの「さげ」。これも研修でも大事だと思っています。
研修の「さげ」は、なにもウケを狙う訳では有りません。最後の余韻が残る様な話やスライドで終わる事を意識します。それが少しでも研修効果が残る秘訣だと思うのです。

研修会は講師の知識を披露する場面ではありません。時間をとって参加した聴講者のお役に立つように努力すべき場面だと思っています。
聴講者に媚びるのではありません。
どうすれば、頭に定着できるのか工夫すべきだと思っています。

そんなときに落語の構成はとても良くできていると思います。
たまに古典落語を聴いてみませんか。

追記)
もちろん、本筋をどこまで考えて、練り込んできたか、どれだけ稽古を重ねたかは当たり前の話です。