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2024年1月8日月曜日

ローリスク超ハイリターンの投資

 今年導入の新NISAで投資の話が盛り上がっていますね。

インデックス投信の積立であれば素人でも取り組みやすいからか、今まで投資に興味の無いと思われた方からも話題に出されることが増えてきました。

日本人があまり口にしなかった自分の資金についての意識が高まることは、とても良いことだと思います。


でも、我々のような専門家なら、まずは自分に積立投資してください。

毎月決まった予算で専門書を買うのです。

「読まないよりは程度の購入」で十分です。最悪「読まなくても良いから」本は買い続けましょう。

この話は何回かこのブログでも書いています。

土地家屋調査士   鈴木 修 ブログ: 土地家屋調査士として勉強すべき本を推薦してください 大阪ガイダンスの事前質問 (fermatadiary.blogspot.com)


専門書は高いと言いますが、その一冊を書くために、読者の先達である著者は、長い年月で身に付けた専門ノウハウを、かなりの時間を使って分かりやすくまとめて我々に提供しています。

それが手に入るのなら、この積立投資のリターンはとても大きなものになるでしょう。

新しい専門知識により、お客様の大事な家族関係や高額な不動産を守ることができる可能性が広がるのですから。

そうなんです、自分の知識への投資はローリスク超ハイリターンなのです。

特に新人は「早急に広範な」知識を身に付けなければなりません。がんばって、できるだけ多めの専門書購入資金を毎月捻出してください。そして毎月10,000円は専門書を買ってください。一気に買っても良いのですが、それだとどうしても「積ん読」率が高くなります。

あなたが資金的にほとんど余裕がないにしても最低5,000円は専門書購入資金にまわしてください。5,000円あれば専門書の1冊は買えるでしょう。その5,000円の余裕も無ければ、事務所経営はできないはずです。

私が「毎月◯冊」と言わずに「毎月◯円」と言うのは、毎月◯冊とすると、丁度良い本が無ければ買わないだけで終わるからです。

本を買わなかったり、本を買っても専門書購入資金が余ったりしたら、当然翌月に繰り越しですよ。そうすれば、翌月には予算外の高い専門書も購入できます。


我々専門家は、どこかに菓子折を持って行ったり、接待をしたりして仕事を受託するような業種ではありません。

最大効果の営業も、やはり周辺知識も含む専門能力を身に付けることです。


今朝も鈴木修塾の「塾生LINEグループ」で、「こんな専門書を買いました」と写真入りで報告がありました。このような報告が毎回嬉しいので、このブログを書きました。

今年も皆さんを応援します。






2023年3月26日日曜日

専門書の読書法(読書法その10) 目次をマインドマップで整理する

 後進の指導をしているときに、よく参考図書の相談をされます。

相談者のスキルを確認して、その人に合った本を紹介するように心がけています。

ただし、最近感じるのは、「何を読むか」よりも、「どのように読むか」の訓練ができていない方が多いように感じます。

小説を読むわけでも試験のために読むわけでもないのであれば、専門書ならではの別の読書法があると思います。

以前読書法を書いたことがありますが、今日はもう少し書き加えさせてもらいます。

土地家屋調査士   鈴木 修 ブログ: 私の読書法 まとめ (fermatadiary.blogspot.com)

まず専門家として、より専門知識を学ぼうとして読書をするつもりなら、少なくても以下の点はチェックして欲しいのです。


1.目的を持って読む

専門書を読む前に、何を知りたいから読むのか、その読書について明確な目的を持ちましょう。目的が明確であれば、読み方や読む順番と読む深さを決めることができます。目的に沿った読書をすることで、有益な情報を効率的に得ることができます。

2.前書きをしっかり読み、目次を整理してから読む

以前の読書法でも書きましたが、前書きと目次はとても大事です。
前書き等で著者の言いたいことを把握した上で、目次の項目と各々の項目に削くページ数を見ると、本文を読まなくてもこの本の言いたいこととがわかります。
自分の知っている分野であれば、前書きと目次を読めば、ほぼ全部理解できることも多いです。ある意味目次が要約とも言えます。
私は本を読むときに以下で紹介するマインドマップで整理することが多いです。

3.抜粋して読む

専門書を読む場合、必ずしも最初から最後まで読まなくてもよいです。
まずは上記2で整理した目次や索引を見て、上記1で設定した今回の目的に必要とする情報がどこにあるかを探してください。他の部分が必要がなければ、読まなくても良いのです。
必要な部分だけを抜粋して読んで良いのです。
必要な情報に出会ったら、その都度、その情報を自分なりに別途まとめることが重要です。

4.能動的に読む

専門書を読む際には、受け身ではなく能動的に読むことが大切です。
つまり、読みながら自分の頭で考え、疑問や質問を持ち、さらに書いてある専門用語以外の自分自身の言葉でまとめることが重要です。
能動的に読むことで、理解が深まり、自分なりの見解を持つことができます。

5.読んだことを必ずまとめる

専門書を読んだ後には、読んだことをまとめることが重要です。読みっぱなしにしていると、そのときに分かったつもりでも、すぐに忘れます。自分自身の言葉でまとめてください。

まとめるときのノートは余白を大きく取って書いてください。そのまとめたノートなどに、同じジャンルの本をよんだときに身についた新しい知識や気づきをさらに加えるのです。いずれかけがえのない自分専用の専門書がそこにできるはずです。


さて上記の2番目で書いた目次の整理ですが、私は以下のようなマインドマップで整理をしてから読み始めることが多いです。目次を機械的に整理してA3版の1枚に印刷して開きながら読むと、体系がよく理解できます。読み終わったら表紙に挟みます。

受験勉強が長い人は頭から精読したがりますが、今読んでいる箇所は、はたしてその本の体系ではどんな位置にあるのかに注目しましょう。本論の幹の部分なのか、枝葉の部分なのか、そこを意識せずに頭から読み始めると、理論体系が身につきづらいと思っています。


以下は

「実務必携 境界確定の手引」(新日本法規)を、著者の江口さんからちょうだいしたときに、その目次をマインドマップで整理したものです。今回ブログで紹介するために清書しました。

江口滋(土地家屋調査士)、岸田庄司(土地家屋調査士)、秋保賢一(弁護士)の各氏による執筆です。良い本だと思います。






2022年3月21日月曜日

専門家として本は何から読めば良いですか?

 3月19日に東北ブロック主催の「土地家屋調査士試験合格者のための開業ガイダンス」が開催されました。

3日前の大地震と前日の雪とで会場まで移動するのが困難な中、東北各地と新潟から11名の参加者がありました。欠席された方で何らか質問や悩みがある方は私個人アドレスにご連絡ください。個別に相談に乗ります。

さて、ガイダンス後に参加者から以下の質問がありました。

「鈴木先生のおっしゃったとおり力を付けたいと思いますが、本は何から読んだら良いですか?

業務などに関連して読んでおくべき本はとてもたくさんあります。また定番の有名な本もあります。

ただし、その相談者がどこまでの知識を持っていて、過去どんな本を読んできたのかわかりません。私たちが良い本だと思っても、その相談者には読みにくい本かも知れません。

それでまずは以下の答えを伝えました。

仙台駅前にはまだ開いている本屋があります。この会が終わったら必ず立ち寄って、何か土地家屋調査士に関係しそうな内容で、あなたにとって読みやすいと思う本を買ってください。

何でも良いです。不動産登記に関する専門書でなくても良いです。レベルは問いません。相続や税金の特集をしている雑誌でも良いです。

その1冊を読めば、必ず読みたくなる分野が3つは浮かぶはずです。あなたが次に読みたくなった分野の本を買って、次々に読んでください。

それを続ければ、自然に私が推薦したい本を読む力も付くでしょうし、いつの間にかその本にたどり着いていると思います。


そして以下の3点を守ってください。

1、本は毎月一万円以上買ってください。

忙しくて読む時間がない月でも必ず本を買ってください。前は「毎月最低2冊は読みなさい」とアドバイスをしていましたが、忙しいとか病気だとかで読めなかったという言い訳を聞くことが多かったので、最近のアドバイスは「読まなくても良いから本を買いなさい」というアドバイスに変えました。読まない言い訳を封じるためと、買う本を選ぶだけでも知識のプラスになるからです。

また多様な本を理解する力も読書量なしには鍛えられません。受験中は数冊に絞って勉強してきたと思いますが、しばらくは1000本ノックのように多読した方が良いと思います。

2、受験本はしまってください。

東京法経やLECなどの受験本は、皆さんを合格に導いてくれた本ですから心から感謝して、しまってください。あれらは受験に特化した本です。受験を終えたのなら、これからはプロとしてオールラウンドの知識が必要です。

3、どの本でも良いから今日買ってください。

いつまでも良い本を求めて一冊も読まなければ、まったく意味がありません。何でも良いから、まずは今日一冊買ってください。仙台には大型書店が何軒かあります。行ってみてください。もし書店が閉まっていたら、Amazonなどで何か注文してください。早く独立したいのなら今日から始めましょう。




ちなみに読書法については過去にいくつか書きました。お時間のあるときにご覧ください。

私の読書法まとめ

また以下の記事も読んでください。

土地家屋調査士試験合格者が読むべき書籍について





2020年4月1日水曜日

建物できるまで図鑑

近年、土地家屋調査士試験合格者に対する事務所開業ガイダンスなどを通じて、開業の悩みや不明点に答えてきていますが、開業した新人の業務に関する相談も結構受けていました。

最近とても感じるのが、新人の土地建物に関する周辺知識の欠落と言って良いほどの知識不足です。
いつも言っていますが、あの程度の試験合格で一人前にお客様の登記を受託などできません。試験は不動産登記法や一部の法律だけです。土地や建物の基礎的知識もなく、単に登記書式や測量や作図ができれば業務ができると思っているなら、お客様にご迷惑をお掛けしますので、今すぐ看板を下ろすべきです。看板を下ろさないにしても、業務を受託してはいけません。
急いで勉強しましょう。

さて、最近直接相談を受けた方も、合格して建物の登記を受託したようですが、まったく建築に関して知識がありませんでした。
受託してしまったので今回の登記の処理は私が教えますが、これからも受託したいなら急いで勉強しなさいと指示しました。

具体的には、関連法律は全部読みなさいということです。
「土地家屋調査士六法」「登記六法」等という専門六法もありますが、それらに収録されている法律は関係あるから、言い方を変えれば勉強しなければならない法律だから、収録されているのです。土地家屋調査士の先輩達はそれら全部をマスターしているから業務を受けられるのです。(耳の痛い人いる?)

何も知識の無い人がすぐに全部を理解するのは難しいでしょうが、建物の登記をしたいのなら、まずは建築基準法から読みなさいと言いました。
精読はしても今は理解できないと思うので、とりあえず全部を流して読んで、建築基準法の理念と建築の流れを掴みなさいと言いました。

また建物の構造も理解していないと、現地で壁の外側から見ただけでは調査にならないこともあるでしょう。最低限の知識として以下の書籍からお勧めしました。

建物できるまで図鑑 木造住宅   1,800円+税
 作者: 大野隆司 · エクスナレッジ · Book · 113 ページ · ISBN: 4767825814
建物できるまで図鑑 RC造・鉄骨造 1,800円+税
 者: 瀬川康秀 · エクスナレッジ · Book · 112 ページ · ISBN: 4767817196

新人でもない先輩達にもお勧めです。
図鑑ですから、絵本みたいなものです。
見るだけでも楽しいです。





2020年3月17日火曜日

調査士実務にできるだけ沿った内容の書籍ですか

土地家屋調査士試験合格後の方が何を勉強すべきかということについて、たまに相談を受けます。一生懸命勉強するつもりの相談ですから、心から応援したいと思います。

以前このテーマで以下のブログを書きました。
これから土地家屋調査士の実務の勉強をする方は、一度お読みください。

2014/12/4「土地家屋調査士試験合格者が読むべき書籍について」
http://fermatadiary.blogspot.com/2014/12/blog-post_4.html

実は本日も以下の質問を戴きました。
本人を特定できない形に少し変更して、いただいた質問と答えを書きます。


土地家屋調査士
鈴木 修 様

はじめまして。突然のご連絡失礼いたします。
私は令和元年度土地家屋調査士試験合格者のYと申します。
◯◯在住です。
私は現在会社員ですが、知人が調査士を開業しており
色々相談をし、また自ら情報を集めて1年以内には現職から
調査士業に移行すべく準備を進めているところです。
現在、会社員ですので休日や空き時間にできるだけ多く
調査士実務に関係する書籍を読みたいと思い、そちらに関しても
情報収集、購買をすすめております。
一つ鈴木先生にお伺いしたいのですが、
都市計画法、農地法、建築基準法に関して調査士実務にできるだけ
沿った内容の書籍をもしご存じでしたら教えて頂けないでしょうか。
上記三法につきましては先例でもしばしば登場し実務に恐らく密接に
関わっているのではないかと思料しますがなにぶん知識が足りない為、
勉強したく考えております。
本来自らに必要な書籍は当然自らの足で探すべきものではございますし、
はじめてメールをさし上げるのにお願いをさせて頂くというのは
甚だ恐縮ではございますが、先生のお知恵を拝借させて頂きたく存じます。
たいへんご多忙のところ、申し訳ございませんが内容のご確認の程、
何卒宜しくお願い申し上げます。



Y様

ご連絡ありがとうございます。
合格おめでとうございます。
応援したいと思います。

しっかり答えたいと思いますが、Yさんのこれらの分野に関する知識、それ以外の分野の知識、書籍を読みこなす力、これからどんな場所でどんな事務所を開業したいのか、その知人から何かアドバイスはもらったのか、それらのバックボーンを教えて戴かないと適切な書籍をおすすめできません。
世間から名著と言われている専門書も、今のYさんには合わない本かも知れません。

また、これらの分野は土地家屋調査士の周辺知識ですが、何故これらの分野の知識が必要か具体的に分からないうちは、どの本を読んでも本当の理解はできないでしょう。

受験とは違います。プロは「これ一冊読めばOK」というレベルではありません。
具体的に何を身に付けるために読むのか、目的を持って狙いを付けて読むのです。
ただ読んでも、プロとして使える知識が増えることはありません。
エッセイを読むのではないのです。プロが書籍で学ぶとはそういうものです。
それらを明確にご相談くださらないと「自分の感覚で大型書店で探しなさい」ということになってしまいます。

一度お電話ください。
今晩にお電話戴くのは問題ありませんが、何時頃とこのメールに返信にて予告くだされば、合わせますので。




2019年12月21日土曜日

資格士業の幸せと矜持 江口滋さん

 長年の友人である愛知県の土地家屋調査士の江口滋さんが新しい本(共著)を出しました。タイトルは「実務必携境界確定の手引き」(新日本法規出版)です。
他の執筆者は、岸田庄司(土地家屋調査士)、秋保賢一(弁護士)のお二人です。
江口さんをはじめ執筆者皆さんの想いがこもった良書だと思います。

 さて、その江口さんがこの本を出すに当たって書かれた文章が新日本法規出版のHPに載っていて、そこで読むことができます。本人に了解を得たので以下に転載します。
内容は、普段私がガイダンスなどでお話ししている趣旨「土地家屋調査士の幸せ」「土地家屋調査士の矜持」と想いが重なりますので、是非読んで戴きたいと思います。




「資格士業の幸せと矜持」
土地家屋調査士 江口滋
社会が複雑になればなるほど多様な資格士が生まれている。
 今回「実務必携 境界確定の手引」を上梓し、自惚れではあるがようやく土地家屋調査士業の端緒にたどり着いたと感じたが、同時に、それぞれの資格士業の目的と、資格者・依頼者の幸せについて強く考えるようになった。
 遡れば、その一端は新人研修の時、今は亡き大先輩が「どんどん儲けてください。」と仰ったことにあるように思う。当時は「そうか、この資格で儲けられるのか。」と意識し、この先を思って嬉しくなった記憶がある。時はバブルの時代であった。
 しかし、そんな気分は最初の業務(境界確定・分筆登記)を終えて一変した。報酬として請求した金額が当時(30年前)のサラリーマン初任給の3、4倍であったことと、事前に見積りを提出していなかったことから、依頼者から「高っ!この仕事でこんなに取るの?」と言われてしまった。
 いま思えば、その業務内容は稚拙であったであろうし、当時の法務大臣認定報酬額基準(平成14年撤廃)を見て「こんなにもらえるんだ。」と他人事のように思ってもいた。また、その請求金額に同情していた自分がいたことは大いなる反省点であるし、いまだにトラウマでもある。
 ただ、ひとつ言い訳を許していただけるなら、土地家屋調査士の業務は非常に困難であったり簡単であったりと千差万別ながら、共通して言えることとして、業務における精神的な苦渋は常に報酬に表しにくく、また、依頼者に理解してもらうのも難しい実情があるということを付け加えておきたい。
 さて、新人資格者として認定された時の知識は最低限であったとしても、開業していざ社会に出たならば、社会から自身に注がれる眼差しは、当然に一定の経験を前提とするものとなる。それに応えるため、足りない経験をカバーするものがあるとすれば、知識と技術の研鑽しかないのだろう。
 もっとも、経験さえあればよいというわけではなく、士業で相応の経験年数を経た資格者であっても、知識と技術の研鑽を怠っている者は新人と同様である。
 そこでここからは、資格士業の原点について少し考えてみたい。
 各種国家資格には、まず第一に「目的」があり、それは依頼者が欲する「利益の成就」、又は「権利の実現」を提供することである。そして、依頼者の利益に対する報酬を資格者が得るという構図になる。
 資格とは個人に与えられたものであり、それぞれの資格士業法の目的から社会に貢献する役割を担うわけであるから、資格者の利益は目的に次ぐ二次的なものといえる。
 ところが、長年業務を行っていると、その立ち位置を時に間違えたり、最初から考え違いをして、「稼ぎたい」「儲けたい」とする意識を第一に就業する人が中にはいる。もちろん生活として、事務所経営として収入は非常に大切なものである。しかし、利潤の追求を第一の目的としてしまえば、それは単に営利企業の成長戦略と何ら変わらなくなってしまい、資格士業の本質を見失ってしまう。
 最近、私の所属する愛知県土地家屋調査士会では会員向けに実態調査アンケートを実施した。その中には、「収入」「やりがい」などに関する質問項目が入っていた。
 その結果は、業務の達成感や依頼者からの評価に対して幸福感を感じているとする回答が多く、必ずしも高収入を目的としない回答が多かった。士業としての健全さが見られたようで、非常に心強く思われた。
もっとも、業務の独占化・寡占化により、元々業務受託の少ない会員はそう答えざるを得ない環境にあるということなのかもしれない。
しかし、少なくとも私は、資格士業の矜持として専門業務を通して社会に還元し、その価値観を依頼者と共に共有できたらと願っている。

追記:年齢を重ねると、気力体力の衰えから一般的に人生下り坂と考えがちだが、終生高みに登り続けることを考えると、いつまでも人生上り坂ではないだろうか。楽しみだ。
(2019年12月執筆)









2019年11月19日火曜日

本を何度も読んでいるけど身につかないという人に

「この本を読んで3巡目なんだけれど、なかなか身につかないのです」という新人がいました。

身に付けるべき知識や技術を得るための本なら、おそらくやり方が違うと思います。
小説ではないのですから、読んで感銘を受けていてもダメです。
読んでヒントをもらって、それを自分に落とし込んで、なおかつトレーニングをしなければなりません。
そのトレーニングを通じて自分のものになるのです。

周りで聞いて見ると「勉強とはひたすら読書」というタイプの人が多かったので驚きました。
漫然と何回読んでも時間の無駄なだけです。
書いている内容について、角度を変えて検討しないと身につきません。

技術系の本だったら、すぐに試してみるべきです。
法律系の本だったら、自分の周りの具体的事例に当てはめて考察を書いてみるべきです。
最低でも手を動かす必要があります。

また「自分が来週この分野の研修講師をやる」というつもりで読むと、自ずと内容が整理されて入りやすいかも知れません。

以前書いたブログを参照ください。 2010年7月29日(かなり前だね)
★私の本の読み方(その4) スライドメモ編
http://fermatadiary.blogspot.com/2010/07/blog-post_29.html

何かを得たくて本を読むなら、実践は必須です。

オリンピックを何度も見ても選手にはなれませんよね。



2018年6月5日火曜日

私の本の読み方(その9) 読んだ本を覚えている方法

私は子供の頃から読書が好きでした。
小学2年生の時に出会った初めての小説「三銃士」に心躍ってからは、活字中毒になったようです。活字なら何でも良かったのです。
子供の頃から多読でした。
友人の家にある児童文学全集を毎日借りに行って、毎日1冊読みました。
友人の家の本を全部読み終わってから、小学校の図書館の本に移り、小さな小学校でしたから図書館の本の大半は読んだはずです。

ですから、有名な古今東西の名作と言われる本は、すべて読んだはずです。
しかし、残念ながらそれらの内容は結構覚えていません。

当時はただただ面白いから読んでいたので、別に覚えている必要も感じていなかったのですが、味わうことなく読み飛ばしたことを、もったいなかったとも思っています。

社会人になると時間が無いので、子供の頃よりもっと速読になります。
だから、読んだけど詳細は覚えていないという本は今でもたくさんあります。
それでも、まったく覚えていないという本は少なくなりました。
大人が本を選ぶときには何らかの意味が有って選ぶので、その点だけでも充分思い出すきっかけにはなるからでしょう。

さて、それでもせっかく忙しい中読んだ本ですから、もっと深く覚えていたいものです。
そこで、私がここ10年程継続していることが「何行でも良いから本のキーワードと感想をメモしておく」というものです。
本の内容を要約して文字にしようとすると、単語を選ぶ過程を経ることで、鮮明にしかも構造的に記憶が定着します。

これらは誰にも見せない前提で書いていますが、その本を他の人にも紹介するつもりで書けば、その本についての理解と記憶は完全に自分のものになるでしょう。
その本について、自分が感じた良いところ、自分が関心を持ったところを伝えるために、誰にでもわかる客観的な表現を探すだけで頭に定着します。
これは観た映画についても同じです。

一番良いのは読後にブログを書くことかも知れませんね。
確実に他の人にわかりやすい表現を考えるからですね。
さすがに数行ではブログにならないので、私は最近読書ブログを書いていないですが。



2010年7月29日のブログで紹介した★私の本の読み方(その4) スライドメモ編は、絶対に理解したい本や忘れたくない本を読む場合に今でもやっている方法です。
これもお勧めです。





2017年3月20日月曜日

★私の本の読み方(その9)積ん読防止編

最近、新人に本の選び方と読み方について質問されることが何度かありました。
本の選び方や読み方についての私のやり方は、このブログに過去何回かに分けて書いています。
以下リンクを貼っておきます。
何かの参考になれば嬉しいです。

私の本の読み方(その1)購入編
私の本の読み方(その2)学習書籍編
私の本の読み方(その3)速読法
私の本の読み方(その4)スライドメモ編
私の本の読み方(その5)インデックス編
私の本の読み方(その6)並行読書編

さて、本日は「積ん読を防ぐ方法」です。

本には大きく分けて二種類あります。
一つは「最初から最後まで読んで身に付ける本」で、
もう一つは「必要に迫られたときに該当部分だけ開いて調べる本」です。

後者は、保険みたいなものですから、必要がなければ最後まで開かなくても良いのです。
しかし、前者は読まなければまったく意味がありません。

でも、社会人は忙しいのです。
だから買っても読まずに積み重ねておくだけの本が増えます。
いわゆる「積ん読」です。

これを防ぐ方法があります。
本を買ったら、その日に10ページでも良いから読むこと」です。

本は買ったその日が1番読書のモチベーションがあるからです。
何故なら、読みたいから買ったのですから。

でも、だんだんそのモチベーションは失われます。
極端な話、翌日には読む気がしなくなってることもあります。

後日に読む気がなくなったとしても、買った日はその本にニーズが有ったはずです。
だから読まなければなりません。
解決方法として、買ったその日の内に少しでも読み始めることが有効です。
少しでも読めば、翌日もまた読むモチベーションが維持できます。
逆に、買いたいと思った日に少しでも読むことができないと、積ん読率が上がります。
少なくても私はそうです。

アマゾンなどの通販で本を買うと、買いたい日と手に入る日にタイムラグが生じるので、積ん読が多くなります。宅配便などから受け取ったその時点が仕事の真っ最中だと、読書は間違いなく後回しになります。
極端な話、アマゾンなどの通販で買った本は、後日買ったこと自体忘れてることさえあります。同じ本を重複して買ったこともあります。
だから、本はリアル書店で書棚から取って買いたいと考えています。

また、リアル書店でも数冊のまとめ買いすると、その中の何冊かは積ん読になる率が高くなります。時間的に難しいですが、本は1冊ずつ買うことが理想です。

時間が無いからこそ、工夫して積ん読を防ぎましょう。











2016年7月22日金曜日

セトウツミ

「セトウツミ」
この映画好きですねぇ。




元サッカー部員の奔放な瀬戸と塾通いのクールな内海との2人の男子高校生が主人公の映画、だからセトウツミです。
この2人が放課後に川縁に座ってだらだらとしゃべるだけの映画です。これで映画が成立するのです。
この二人の会話は一見他愛もない内容なんですが、関西弁で絶妙な会話です。
これがハマります。

映画館内で皆が何度も声を出して笑っていました。
こんな感じ久しぶりに経験しました。

今人気の池松壮亮と菅田将暉のダブル主演です。
監督は大森立嗣監督です。
あの「まほろ駅前多田便利軒」を撮った監督です。
あの映画は、瑛太と松田龍平のいい感じのバディムービーでした。
だから、今回も主人公が男子2人なので期待して行きましたが、やはり期待以上に2人の関係が良かったです。

原作は人気マンガだと聞いていましたが、原作を読まずに映画に行きました。
特に原作を読まなければ理解できないという映画ではありません。
しかし、面白かったので、映画観てから原作マンガを読んでみました。
驚いたのは、この映画は原作に本当に忠実に作られていることです。
あの絶妙なセリフは、原作そのままのセリフでした。
そのセリフを池松と菅田の2人の自然な演技力で原作以上の味わいを見せています。

男子高校生のだらだらした会話ってこんなもんです。
内容が他愛も無いものです。
ゆるくて、ちょっとシュールで、絶妙な間がある会話で。
性格がまったく違う二人、でもどこかでお互いを思いやっている感じ。
こんな関係ありますね。
そして、こういう会話って、本人達より聴いている周りの方が面白いんですね。
何か良いですよ。懐かしい感じです。

宇宙人が攻めてこなくても、全米が泣かなくても、低予算で面白い映画はあるのです。
この二人のだらだら感を大画面で観るのも、やはり一興です。

観ていない人はお勧めです。
上映時間は75分、ちょっと気分転換程度に観に行ける時間でしょ。

この二人、いつまでも見ていたいですね。
iTunesで発売になったら、買うと思います。






2016年7月1日金曜日

殿、利息でござる!

久しぶりに映画を観ました。

観たい映画が結構あったのに、その時期は映画に行く余裕がなく、今更ながら何を観ようかと思い、結局宮城県(大和町吉岡)の実話である「殿、利息でござる!」を観ました。


時代は江戸中期、舞台は仙台藩吉岡宿。
藩主は第七代藩主伊達重村の時代。

飢饉による年貢不足に加え、島津藩に対抗するための政治工作などで、伊達藩は慢性的な財政難。そのため藩内で重い年貢や労役を課すが、その結果住民の破産や夜逃げが相次いでいた。

吉岡宿でも同様であり、夜逃げ等で町そのものの存続も危うい状況であった。
吉岡で造り酒屋を営む穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は吉岡の行く末を案じ、町一番の知恵者である茶師菅原屋篤平治(瑛太)に相談した。
篤平治は、仙台藩に大金を貸し付けて利息を取り、住民に配り、貢や労役を軽減することを考える。十三郎とその仲間達は、私財を投げ打って町を守る為に行動を開始する。


歴史家磯田道史氏の「無私の日本人」の中の短編「穀田屋十三郎」を映画化したもの。
ちなみに磯田道史氏は、同じく映画化された「武士の家計簿」も書いた方で、テレビにも多く出演されている方だからご存じの方も多いでしょう。
磯田氏がこの「穀田屋十三郎」書くきっかけになった話も読んで欲しいです。
本の話WEB を見てください。

良い映画だったと思います。
阿部サダヲ主演であのポスターですから、よりコメディタッチの映画かと思いましたが、コメディの要素を抑えめに、人情話にほんの少しのコメディが程良くバランスされて、良かったです。

とにかく町のために私財を投げ打って、しかも名さえ残さないという決まりを作って、動く人々がいました。
完全なるヒエラルキーの中で、次々と上の壁を説得していく交渉事は、当時有り得ないことだったでしょうし、打ち首になることだって有ったでしょう。
しかし、これが結局進んでいったのは、やはり仲間の無私の心が、次々とそれらの壁だった人々の心を打ったからだと思います。

これが実話でなければ、こんな話を書くことを躊躇するかも知れません。
名も無き庶民が自分が破産するまでやって、それでも自分たちの手柄にしないという定めをつくったのです。こんな「無私の日本人達」が出てくるストーリーは、あまりにも「きれいごと」過ぎて「現実感がない」と批判されるかも知れません。
しかし、これは実話なのです。

実話の重みに、俳優達の演技の重みが加わり、後世に残すべき良い映画になりました。

阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平、山崎努ら本当に良い俳優が揃ったと思います。伊達重村のキャスティングとして、あの羽生結弦くんですし。

中でも伊達藩の財政担当萱場杢役の松田龍平がとても良かったですね。
みんな良い人の中で一人だけの憎まれ役です。
彼も分かっているのです。この訴えを通してやりたいのは他の人と同じはずです。
同じく心を打っているはずです。
しかし、彼はこの役人ヒエラルキーのラスボスです。
逼迫している財政を建て直して殿様を守る為に憎まれ役をやっているのです。

ここで殿様に羽生君を持ってきた意味が出るのでしょう。
あの穢れのない王子様キャラの顔を見ていると、萱場氏だけでなくても「我が殿をお守りしなければならない」と使命感を持つでしょうから。

また特筆すべきは山崎努の存在感ですね。このキャラはネタバレが絡むのでここだけにしますが。


たくさんの人に、この映画もしくは本を見て、日本人が社会をどう考えてきたかを確認して欲しいと思いました。

そして「見つからなければ他人の金も使う」という行動をした某知事などに観せてやりたい映画でした。










2016年6月18日土曜日

★私の本のよみ方(その8) ふせんノート術

私は、昔から文具にこだわってきたけれど、あの頃「文具」は趣味の分類に入れてもらえませんでした。
最近では、テレビ番組の中でも文具を紹介する特集があったりして、やっと文具を趣味と言える時代になりました。

出版物の中でも、近年は文具を扱った書籍も増えています。
その大半はカタログ的な書籍です。
カタログはカタログで確かに楽しいのですが、やはり文具は何かの目的のために使いこなして初めて文具です。
その使いこなしについての書籍も出ています。

5月25日に出版された本が「ふせんノート術」(晋遊舎)です。


その中に「先輩が教えるふせんノート活用術」というコラムがあり、そこで「先輩」として取材を受けました。

その中で、私は、2010年にこのブログで書いた「★私の本の読み方(その4) スライドメモ編」の応用ですが、コンピュータを開くことができない際に「ふせん」を代わりに使う勉強法を説明しました。

ちなみに「私の本の読み方」は、その1〜その7を新人の皆さんのために書きました。
また、よろしければ「土地家屋調査士試験合格者が読むべき書籍について」もご覧ください。


さて、その取材に以下の様に答えました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

最初に私の読書法(勉強法)を説明します。

勉強のために本を読むときは、漫然と読みません。
どう考えれば良いかというと、「この本の内容を来月研修会で講師をする」というつもりで読むのです。
そうなれば、その本の全体構成を把握して、自分なりの論点を整理しなければなりません。また、その本の内容を理解するために、補助的な別の本や資料を調べる気になります。

私が新しい書籍で勉強する際には、環境が許す限り、コンピュータでパワーポイント等のプレゼンアプリを開き、そのスライドに直接要点をメモしていきます。
この方法は、2010年に以下のブログで書きました。

土地家屋調査士 鈴木 修 ブログ

★ 私の本の読み方(その4) スライドメモ編

なんらかの分野を体系的に把握したいとき、その分野の書籍を確認しますね。
読んだ内容を、何にどうメモしますか?

私は、パワーポイント等のプレゼンアプリを立ち上げて、メモを直接スライドに書き込んでいく場合があります。(ちなみに私はMacのKeynoteを使っています。)
昔流行った京大式情報カードに書き込んでいく要領です。

具体的には、私は、本のキーワードを箇条書きに打ち込んで、話題が変わる度にスライドを変えていきます。パワーポイント等にメモして、不足の部分を読書後に埋めます。
また、パワーポイント等にメモすると、後で紙の情報カードのように並べ替えが簡単です。

読み終わってからスライドを校正すると、その本の著者に代わってすぐに講義ができるスライドが揃っていますので、翌日には講義ができます。(そんなことはないか)

でも講義できるようなスライドとして意識して見ると、自分の為のメモに何が足りないかが分かります。そこを他の同じ分野の本を読んだり、ネットで調べたり、研修会を受講したりして、足りないと感じていたスライドを埋めたりします。
そうして自分のスライドが育ってくると、その分野は身に付いてきます。
また紙に手書きメモとは違って、ファイルの全文検索ができる事もメリットです。

この方法のポイントは、プレゼンアプリを清書でなくて、下書きに使うところです。


ただし、ノートコンピュータを持っていないこともあり、または持っていてもコンピュータを開くスペースがないことも多いものです。だから、最近はこのスライドの代わりに「ふせん」を使うことが多くなりました。その前提で以下の私の「ふせん」の使い方を読んでください。

●よく使っている「ふせん」の種類と、その理由

 文具としての「ふせん」が好きなので、かなりの種類を持っていますが、勉強で使用するのは75×50mmのものが基本です。
 本からキーワードを抜き出すためには5行程度は書くことができる広さが欲しいと考えています。上記のスライドの代わりですから。
そして、書き込んだ「ふせん」を、とりあえず本のページに貼っておくので、大きすぎる「ふせん」を使うと、1ページに数枚貼ると何が書いてあるページかわからなくなるという問題も発生します。
 この方法で様々なサイズを試して、この75×50mmサイズが自分としては最適になりました。
 色にはあまりこだわりません。(後述)

●数ある文具の中で「ふせん」ならではの利点

 「ふせん」の機能として、「好きなところに貼る」「はがす」が考えられますが、勉強する場面では、「移動できる」「ページ面積を増やす」なども重要な機能と考えています。
「ページ面積を増やす」とは、本の余白やノートに文字を書いてきてスペースがなくなったときに、「ふせん」を貼ってそれに書き込むことで、書き込む面積を増やすことができるという意味です。
 キーワード等を本に直接書き込む代わりに、本に貼った「ふせん」に書き込みます。
ひととおり読み終わり「ふせん」を加除してから、私の場合、それらの「ふせん」をそのまま本に貼っておかずに、別のノートに張り込みながら整理します。それをそのままコピーすると、勉強した書籍のサマリーになります。
必要なら「ふせん」と「ふせん」の間に別に調べた事項も書き込むことで、その分野のまとめ資料になります。

●「ふせん」の色やサイズに関して、使い分けのポイント

  「ふせん」のサイズは直接的に書き込む情報量に直結します。だから、用途に応じた丁度良いサイズは必ずあります。
私の勉強では、基本75×50mmの「ふせん」が丁度良い基本サイズです。
 もちろん、それ以外のサイズも使いますが、ノートに貼り込んだときにまとめやすいように、別サイズを使うときにも基本は横長75mmをベースにしています。つまり、基本サイズの75×50mmの半分(2〜3行書き込み)の75×25mmや、1、5倍(7〜8行書き込み)の75×75mmの「ふせん」を使います。
「ふせん」を別ノートに張り込んで、編集したり、ブレインストーミングしたりするのに、横サイズだけは合わせるようにしています。
 色も直感的情報として効果的ですから、抜き出すキーワードの種類によって色分けすることは意味が有ると思います。しかし、そのために使用する「ふせん」の種類が増えることで、勉強の自由度が下がる気がしています。
そこまで「ふせん」に意味を持たせると、出先で全色揃っていないと仕事にならなくなりますので、とりあえず私は色までは気にしないようにしています。
サイズの問題であれば、たまたま必要サイズの「ふせん」が切れても、問題は情報量ですから、とりあえず複数枚貼れば解決します。

●あらかじめ「ふせん」を使用する前に準備しておくと便利なこと

 とにかく「ふせん」に限らずに、なんらかの文具を仕事や勉強に使うと決めたら、絶対にその文具を切らしてはなりません。それがないと仕事や勉強ができなくなりますから。
 だから私は常に持ち歩いていますが、それ以外にも想定できるあらゆる場所に準備しています。
 たとえば、職場や自宅の机の引き出しの中やPCケースの壁などにはもちろん、ポケット、バッグ、ノ―卜の裏表紙などにも準備されています。

伊東屋の革製ふせんケース

75×50サイズ用のもの
気に入っていつも携帯しています。


書籍の裏表紙


 あたらしい本を読む前には、裏表紙や見返し等に「ふせん」を準備します。
これは六法ですので、文字を書き込むとすれば1〜2行程度なので、75×25mmのサイズがメインになります。
 ちなみに、私は長期間使う書籍にはタブのような見出しは使いません。そこからページが破れることがあるからです。
私は、この写真の小口のように、マーカーなどで色を塗ったり、小口に直接文字を書き込んだりしています。

PCケースに貼り込み

 「ふせん」を引き出しに入れると、いざというときに使えないことがあります。PCケースなど、あらゆるところに貼っておきます。

●読書やテキストの読み込みに「ふせん」を活用する場合の使い方

「ふせん」にキーワードや重要なセンテンスを書き込みながら本を読んで、その後「ふせん」を別ノートに貼り込みながら編集します。これが私の勉強法のキモになります。
 最後まで机で勉強できそうなときは、やはりプレゼンソフトに直接メモすることもあります。スライドを増やしたり、入れ替えたり簡単にできますから。





●ノートや手帳に「ふせん」を貼り付ける場合の使い方、貼り方や並べ方の工夫

勉強の際の「ふせん」は、いずれ別のノートに張り込む前提ですから、その書籍の該当ページに適当に貼っています。
 貼り替える先のノートは、書籍1冊あたりA4判1冊を使い切りにしています。
そのノートのページに、「ふせん」を少し離して貼ります。そこに様々な知識を書き加えるスペースを確保するためです。

●その他

 前述したように、すべての道具に言えることですが、その道具がなければ勉強(仕事)ができないと考えるなら、その必要な道具を絞ることです。何かがないだけで勉強(仕事)が進まないのは本末転倒ですから。
 そしてその道具を忘れないように常時携帯する工夫が必要です。
その必要とする道具が「ふせん」のように安いものなら、多数買ってあちこちに置きましょう。自分の勉強(仕事)の1時間ロスがいくらにつくのか考えれば、文具は本当に安いものです。

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さて、取材の概略はこんな感じでした。
初めての書籍を読む際の私なりの方法を説明したつもりです。
それがどんな感じで「先輩の教え」としてまとめられたのか。
書籍をご覧ください(笑)











2016年4月4日月曜日

文房具図鑑 山本けんたろう

実際に手にとって感動しています。

山本けんたろう(山本健太郎)君の「文房具図鑑」です。
昨年から報道等で見ていたので、3月25日の発売を楽しみに待っていました。



この本は、小学6年生のけんたろう君が1年かけて描いた100ページを超える文房具の図鑑です。最初から出版を意識していたものではなく、あくまでも夏休みの自由研究として学校に提出したものでした。
それがあまりにも完成度が高いので、文具マニアの中で評判になり、ついには書籍化されたのです。

ネットでその完成度は知っていたのですが、それでも原寸の印刷で全ページを見ていると、感心どころか感動しております。

専門家である大人が書いている類書(絵ではなくほぼ写真です)はたくさん見ていますが、この本を見ると特別感動します。
何故感動するかと言うと、損得無い文房具への愛が溢れているからです。

少し見てみましょう。


すべてのページが手描きです。
定規を使わない絵なので、とても味があります。
直線が歪んでいるなんて気にならないほど、ほぼ原寸で正確に描いてあります。
大好きだから一生懸命に観察して描いたのでしょう。
あえて定規を使わないで味を出したいという大人のイラストレーターのテクニックではなく、おそらくけんたろう君が正確に描こうと思うと定規が邪魔になるのかもしれません。

各文具への感想も、けんたろう君の独自の感想です。
気持ち良いほど自分の気持ちを書いています。
しかも、それが文具マニアから見ても、とても的を射ています。


将来漫画家になる予定のけんたろう君ですから、オリジナルの漫画キャラクターもちりばめられています。


小学生の図鑑らしく、中にはクイズのページがあります。
問題のページも答えのページも、イラストがいっぱいで楽しいものになっています。
こんなページが100ページもあるのです。


目次が最後の「あとがき」の前のページにありました。

大きく「もくジ」って書いていて、最後の「ジ」に矢印で「なんでカタカナ?(まちがえた)」って書いています。とっても、いいなぁ。

そして、そのあとの記載です。
「はい!ということでなぜか本の終わりでもくじです.なぜ最初のページにのせなかったかというと もくじのそんざいをわすれてたから!ということで今ここでもくじをかかせてもらう.」と書いています。

という目次を見てください。
図鑑としてまとまっているでしょう。

当初、文具マニアの間で話題になったのが、書籍化の際の価格です。
なんといってもけんたろう君の図鑑の裏には、「定価【本体3兆円】+税」と書いていましたので。消費税だけで2400億円ですか。



書籍の帯に書いてあった文字「著者希望価格から、驚きのプライスダウン!」「3兆円→1,500円」「約99.99999995%オフ」
良かったです。これならおじさんも買うことができます。

実は、この本の書籍化では、単純にそのまま印刷するのだろうと思っていました。
変に手を加えると、オリジナルの良さを損なうと思ったからです。
それは「じめんのボタンのナゾ」でも経験済みです。

しかし、この編集は見事でした。

図鑑と言うからには誤りがあってはいけません。
誤りの部分の記述は、やはりけんたろう君の手書きで直してあります。

また、上から2枚目の写真を見てください。
少し黄色がかったノートの色をできるだけそのままに印刷し、その下の緑がかった欄に図鑑の文具のメーカーの感想を集めたのです。
その感想が、商品解説補足だけでなくけんたろう君への優しさの言葉が溢れるものです。

さらに、巻末には文具仲間や家族、親戚、学校の友だちなどのコメントも載せられています。
これらをひとつずつ集めるのには手間がかかったでしょう。
この編集にも愛が溢れています。

文具好きな方は当然として、それほど文具好きでない人も、この本を見ると様々な溢れる愛に触れて嬉しくなると思います。






2015年12月16日水曜日

「正義」は決められるのか? トーマス・カスカート

いわゆる「トロッコ問題」です。

40年ほど前、フィリッパ・フットが考えた思考実験であり、それ以来、哲学、倫理、心理学等々さまざまな立場から考察され、派生問題もたくさん考え出されている問題です。

最近では、ハーバード白熱教室で、マイケル・サンデルがこの問題に触れていましたね。

線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。
このままでは前方で作業中の5人が、猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。
この時、たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。
A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。
しかし、その別路線でも別の作業員が1人で作業しており、5人の代わりに1人がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。
A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?
なお、A氏は上述の手段以外では助けることができないものとする。

40年間、世界中で議論が続いている問題です。






「正義」は決められるのか? トーマス・カスカート

これを法廷劇に仕立てたのがこの本です。
思考実験を現実の事件にし、登場人物には固有名詞と人格が与えられます。

舞台は2015年、サンフランシスコ。
路面電車の進路を切り替えて5人の命を救った女性が、待避線にいた1人を殺した容疑で裁判にかけられるのです。
女性はオークランド在住のダフニ・ジョーンズ。
最初は、その5人の命を救った行為は評価されるが、待避線にいたチェスター・ファーリーの長女ソンドラが記者会見で有罪を望んだり、命を救われた5人のうちの1人サリー・カリアキディスが感謝を述べたりすると、さまざまな議論が湧き起こるのです。
検察、弁護士、大学教授、心理学者などさまざまな立場からの意見が交錯する中で、「世論の法廷」の陪審員たちはどんな結論を出すのでしょうか。

私は、昔からこのトロッコ問題の設定が、どこか現実離れして空々しい感じがしていました。
「上述の手段以外で助けることができないものとする」
うーん、あくまでも思考実験ですから仕方ないのでしょうが。

そのお馴染みのトロッコ問題に人格を与えただけで現実感が出て、確かに思考実験に深味が増します。

私が法律などの講師をさせて戴くときにも、ここまで具体的にやればもっと理解が深まることもあるなと再度気づかせられました。
本の趣旨とは違うけれど、私はその観点で買いました。


さて、この本の本筋としては、お馴染みの思考実験に上記のとおり人格が与えられ、裁判が進みます。
先に、新聞記事や警察資料により具体的事実が提示されます。
その後、陪審員への進行説明があります。
検察側は、「功利主義についての危険な罠」について述べ、有罪を主張します。
弁護側は、理屈以前に常識と直感から考えても無罪であると主張します。

法廷外でも、大学でクリティカル・シンキングの講座でこの事件が取り上げられたり、オンライン版心理学雑誌におけるチャットの見解が述べられたり、カトリック司教の意見が出たり、ラジオ討論が紹介されたり、大学教授の弁論があったりします。
その中で、とても巧みにイマヌエル・カントやトマス・アクィナス、ディヴィッド・ヒュームやニッコロ・マキャヴェッリなど著名な思想家達の理論を挟んで解説します。

5人を助けるために1人を殺すことが功利主義として正しいのなら、このケースにおいて、橋の上から1人の太った男をトロッコの前に落として暴走を止めることにより5人を助けることは、正義なのでしょうか。

さらに、5人の病人を助けるために、1人の健康な人から臓器を取り出して5人に移植することも(当然臓器を摘出された人は死亡します)、正義なのでしょうか。

さまざまな派生問題についても議論が続きます。

はたして「正義」とは何でしょうか?

「正義」は数で決められるのでしょうか?
「正義」は当事者が誰かで決められるのでしょうか?
また、手段によって「正義」は変わって良いのでしょうか?


このブログを読んでいる皆さんは如何でしょうか?
ダフニさんは有罪ですか?

そして、あなたがそのトロッコの分岐器の側にいたのなら?






2015年11月12日木曜日

映画にまつわるXについて 西川美和

忙しくてまとまった時間が取りにくいとき、そんな時にじっくり読書は難しいですね。

そんな時は、短編集やエッセイ集などの精々数十ページで完結する内容の書籍を選びます。
ランチの待ち時間とか、ちょっとした移動中の隙間時間に読むことができます。
短編集やエッセイの場合はあまり選ばずに買います。
書店でなんか感性に合いそうだと思うと、とにかく買ってきます。
そして合わないと思った場合はすぐに止めます。
なにしろこのジャンルの本は、ちょっと読んだだけで、この本を買ったのが正解かどうか判断できますので。

それに比べて長編はそうはいきません。
きっとこれから面白くなるはずだと思いながら、長い時間をかけて読み進み、結局つまらない本だったと言うことがあります。

読書は途中で止めても平気です。
本代が勿体無いとは思いません。時間が勿体ないのです。

今回読んだのはこの本、

西川美和 「映画にまつわるXについて」
特に期待せずに失礼ながら移動中の暇つぶしのつもりで手に取りました。

この本の帯、すごいですよ。
「立ち読みして下さい。」
「買うことになりますから。」
いやぁ、思うツボでした。
立ち読みして買っちゃいました。

エッセイは作家その人が出ます。
半分は途中で止めるものが多いです。
この本は最後まで興味持って読むことができました。


西川美和さんは作家であり映画監督でもある人です。
その西川さんは、監督として個人として映画に向き合って考えてきたことを雑誌、新聞、ウェブなどに寄稿してきましたが、その7年分のエッセイを収録した本です。
直木賞など各賞候補になった彼女ですが、私、彼女の文章は初めて読みました。

オーディションで人を選んだときの話
松たか子と一緒に重機の免許を取りに行った話
映画のワンカットのために使った動物の話
夢で見たプロットを映画「ゆれる」にするまでの話
その映画の際の香川照之の話(香川照之すごい)
父親が作ってくれたカチンコの話
等々35編

良いですね。
感性が好きです。
言葉選びが好きです。
文体が好きです。
そして生き方がとても好きです。

実際人生や仕事に真摯に立ち向かっているからこそ迷い、そして迷ったからこそ書くことのできる内容で、だからこそ全く未知の世界に触れる読者にも説得力があるのでしょう。
そして最後まで興味深く読むことができました。

映画でも書籍でも、今後意識して彼女の作品に触れていきたいと思います。

皆さんも興味を持ったなら、本屋で立ち読みだけでもしてみてください。
買うことになりますから。(笑)




2015年10月19日月曜日

締め切りの大切さは分かっております

子供の頃から図工が大好きでした。
結構細かい作業が好きでした。

お絵画きや彫刻も、細かいところまで造り込まなければならない性格でした。
四つ足動物は体毛の1本ずつ、鳥なら羽の一枚ずつ描かなければ、気が済まない性格でした。
当時描いた日本間の絵では、畳をクローズアップして、畳の目を微妙に色を変えながら一目一目描いた記憶があります。

今考えると、あれはアートな絵ではなくて、テクニカルな図だったのかも知れません。

あるときに画用紙で家を作るという課題がありました。
同級生達が2階建等のきれいな家を作っていたときに、私は何の変哲もない四角形の平家に切妻の屋根を載せて、提出しました。

先生が「これだけ?」って聞きました。
普段の私の細かさに対して疑問を持ったのでしょう。
私、屋根に手をかけながら、にやっと笑ったと思います。(嫌な小学生...)
屋根を持ち上げて、家の中に作った各部屋の間取りと、その各部屋に据え付けた小さなソファーやテーブル等数々の家具を披露しました。

当時の先生はそれなりに評価してくれましたが、他の先生なら「課題を正確に理解していない」と言うかも知れません。テストであれば大幅な減点でしょう。

細かなところにこだわり過ぎて、図工の時間内に描きあげることができなくなり、宿題になることも多かったです。自分で満足するまで描かないと提出したくなかったからです。

通知表で図工の成績は大抵5でした。(5段階評価の頃ですよ。念のため)
あるときに図工の成績表に2を付けられたことがあります。
当たり前です。締め切りまでに提出ができなかったことが有ったからです。

当時ショックを受けました。
目が覚めました。

物事には締め切りがあると言うこと。
その締め切りに間に合わせなければ、どんなに素晴らしいアプローチをしていても零点であること。



はい、分かっています。

日司連のKさん     m(_ _)m
日本加除出版のNさん   m(_ _)m






2015年7月16日木曜日

私の文庫本は、ほぼ日手帳カバーに

私は並行に、傾向の違う本を数冊読んでいるということは、

その中で小説ジャンルは、ランチタイムのお供です。
小説は新刊本も買いますが、文庫本が多いです。
ランチタイムの待っている間に読むことが多いです。

ランチタイムで外食の場合は、大きなバッグが邪魔になることが多いです。
だから必要なものだけ持って出かけます。

待ち時間に読むための本、コインを含むちょっとしたお金、いざというときのクレジットカードや名刺、何かの際のメモのための筆記具とノートでしょうか。外に携帯電話も持ちます。
これらをコンパクトに持ち歩きたいというニーズが有りますね。


ここ数年私のそんなニーズに応えてくれているのは、「ほぼ日手帳オリジナル」のカバーです。



元々文庫本のカバーではなく、手帳のカバーです。


この「ほぼ日手帳オリジナル」は文庫本サイズで、見開き2日分の手帳ですので、400ページ程度の厚さがあります。
大抵の小説は入ります。


もともと手帳のカバーですので、ちょっと外出する際のちょっとした身のまわりのものを収納できます。
ペン挿しに2色フリクションボールペンを挿しています。
表紙見開きの上にフィルム付箋を貼り付けています。
また見開き下にツバメノートの名刺サイズノートを収納しています。




裏表紙の見開きにはカード類とテンプレート、1000円札とコインを入れて、文庫本の最終ページに大判の付箋を貼っています。



今日入れているものを出してみるとこんな感じです。
スターバックス・カードやQUOカードと現金2600円が入っていました。
大体私のニーズが分かるでしょ。
もうちょっと遠出をするときにはクレジットカードを入れておくこともあります。



これは中身を全部出したところです。
手帳カバーですが、なかなか良いでしょう。
数年使っています。
栞が2本有るのも結構使えるものです。
特に推理小説などを読むときは、2本の栞が便利です。



カバーの表です。カバーの開きとでも言いましょうか。
表にもポケットがあります。




先程書いたペン刺しですが、ペンが2本挿せるように2つ有ります。
2本挿せることが便利かも知れませんが、私は下の写真のようにペン1本を両方に挿しておきます。



これでカバーが開かなくなります。
持ち歩いているときも便利ですが、バッグに入れておくときにも、微妙に開いて本のページが折れることを防ぎます。

ほぼ日手帳ではこの2つのペン挿しを「バタフライストッパー」と言うらしいですが、この工夫がとても気に入っています。

また出張の際の移動中に、大きなバッグを網棚等に置いて、必要なものを手元におくにも、同じようなニーズが有ります。
このカバーなら、切符を安全に収納するスリットもあるし。


明日は金沢に研修会講師で伺いますが、台風の影響で飛行機から新幹線に変更しました。
もちろん、いつものように、このカバーを手に新幹線移動を楽しみます。



2015年7月8日水曜日

独眼竜の忍び 平谷美樹

坂上田村麻呂の蝦夷征伐から戊辰戦争まで、東北の歴史は常に敗者の歴史です。
そして歴史は事後に勝者側が作ります。
だから平安初期のアテルイ、安倍、藤原をはじめ東北の英雄はたくさんいましたが、それらの詳細は勝者側ほど多くは残っていません。

物語に関しても高橋克彦の一連の東北の英雄を扱った作品には胸熱くなる小説も多いですが、他の歴史小説では東北を扱った作品はとても少ないです。

その中では、全国区の知名度第一は伊達政宗でしょう。
天下を取る野心と実力を持ちながらも、東北という地域性と、信長、秀吉、家康に一世代遅れて生まれた為に、天下取りの争いに間に合わなかった武将として認識されています。
ただし、秀吉や家康にあれだけ野心と実力を警戒されていながら、伊達家は結局滅ぼされずに生き残り得たのは、あの環境における最善の勝利と言うことができるでしょう。


さて「独眼竜の忍び」(上・下)(平谷美樹・富士見新時代小説文庫)を読みました。



筆者の小説は初めてですが、筆者は「エリ・エリ」で第一回小松左京賞を受賞し、近年時代小説を精力的に執筆しているとのこと。「エリ・エリ」はタイトルを聞いたことが有ったのだけれど、この機会に読んでみようと思います。

さてこの小説は、このような話しです。

秀吉による小田原征伐後のいわゆる奥州仕置をきっかけに、新たな領主とその体制に不満を抱く旧葛西家、大崎家の地侍や百姓たちが起こしたのが葛西大崎一揆。
その背後には、将来天下を狙うのに必ず邪魔になるはずの伊達政宗を陥れようとする家康の陰謀があった。
政宗が秀吉に服従しているように見せながらも陰で一揆を煽り、奥州を伊達家のものにするつもりだという話しを、家康が捏造し、伊達家を潰そうとしたのである。
伊達家が一揆を扇動していたという証拠を捏造しようとする徳川家の伊賀の忍びと、それに立ち向かう伊達家の忍び黒脛巾組との戦いが始まる。

実際に、政宗が葛西大崎の一揆を扇動したのだという説は、現時点で有力説です。
しかし、伊達側の立場でこの小説を読めば、徳川陰謀説もあるかも知れないと思わせられます。そして伊達家に黒脛巾組という忍び集団がいたのも史実です。


歴史小説は制約の中で、虚実を織り込みながら表現するエンターテインメントです。
歴史の最終結果を読者は皆知っている中で創造するのですから、そこは難しいです。
歴史小説において伊達政宗側を主人公にしても、政宗が天下統一をすることはありません。
ですから、我々の知っているあの史実は、陰でどんな力が働いた結果なのか、そこが歴史小説の面白みの一つでしょう。だから本能寺における秀吉陰謀説のようなものが出るのですね。

この家康と政宗の表面に出ない戦いなども、当時おそらく有ったに違いないと思いますが、何しろ歴史の表面に出ないのですから、そこは作者の想像力と説得力次第です。
今回は、その歴史小説独特の面白さに加え、忍者対忍者の戦いが描かれています。
そして黒脛巾組の精鋭7名の人物の性格を書き分けて、陰に徹する忍びとは一線を画する物語にしています。そこに政宗の明解な決断力が加わり、更に暗さや重さの無い話になっています。
歴史小説の面白さに時代劇の面白さも加味してあるので、退屈はしないでしょう。


また上記のように、伊達家が残ったことがあの時代環境の中では最善の勝利だったと、私は思いますが、そこについても読者にストレスがない範囲で描かれていると思います。


普段近畿を中心に書かれる時代小説の地名や地形にピンと来ないときには、地図を見て地形を読みながら小説を読んでいたけれど、今回はほぼ不要でした。
この小説の舞台は、今の宮城県と岩手県です。
私のように土地勘の有る地元の人間には、今も残る地名が出てくるので、戦いの布陣やそれぞれの城の距離、山の起伏や川の形状が頭に浮かび、そこを進軍する各軍の時間感覚や疲労などとても分かりやすかったです。

改めて地図を読み解くことができないと、戦略は立てられないと実感しました。

・・・と強引に土地家屋調査士の世界に持っていくことは今回我慢します (笑)






2015年6月8日月曜日

夢を売る男 百田尚樹

夢を売る男 百田尚樹 著 を読みました。



今や「表現を受けたい人」よりも「表現を発したい人」の方が多いという世の中。
そうこの本の著者百田尚樹は言います。
そして多くの人には書物を出版したい欲望があるとも言います。

この本には、そのような出版を夢見る人々が出てきます。
自分にはスティーブ・ジョブズと同様の才能と未来があると根拠のない自信をもつフリーター、他のママ友とは違うという自慢の教育論を発表したい主婦、自分の波乱に満ちた生涯をまとめた自伝を書きたい団塊世代の元私大教授など。この人物造形が秀逸です。

そんな本を出したい人たちを食い物にするビジネスが、この本の丸栄出版のジョイントプレス。ジョイントプレスとは、自費出版とは違い、出版社と筆者が資金を出しあって出版する事業と説明しています。
この本では、上手いことを言って著者をその気にさせて結局著者だけに大金を出させることで成り立つビジネスで、出版社側として本は印刷するが最初から売るつもりは無いというビジネスです。

この詐欺まがいのビジネスの中心にいる丸栄出版の編集者が牛河原勘治であり、本書の主人公です。嫌なビジネスをしている中心人物なのですが、とても魅力的な人物です。彼のお客になる著者達へのトークは実に見事で、その説得力に引き込まれます。
「著者は本を出版するという夢を買っているのだ」というのが彼の信念で、少なくてもこの本では、騙されたはずの著者達は被害者として自覚が無く、最後まで夢を見続けています。誰も傷ついていません。
牛河原は後輩に、出版業界と著者の関係やその裏側を説明しながら、ビジネスを説明します。読んでいて、このビジネスもそれほど悪くないのかもと、牛河原に私も騙されます。

丸栄出版の事業を真似した競合出版社が現れたとき、牛河原の対応に彼の信念が見られます。ほぼ同じに見えるビジネスですが、やって良いこと悪いことの線引きを牛河原は後輩に説明します。おやおや私、またしても騙されそうです。
最後まで詐欺ビジネスで終わる本かと思っていると、最後にちょっと良いエピソードで締めています。もう牛河原のファンになりました。

一度でも本を書こうかと思った人、本までは書かなくてもブログを書いている人は是非読んでみてください。牛河原の言葉では日本語を書ける人なら全員だと言っていますから、皆さん読んでみてください。読んでズキッとします。そして無類に面白いです。

私は読んでみて「とんでもない本が出た」と思いました。
私も6年弱このブログを書いていて、先日会長ブログを終えたはずなのに、まだブログを続けています。
そして書籍出版を過去2冊出し、毎年加除式の書籍の原稿を書いてもいます。何と3冊目の本も書いていますし。
私はこれらは後輩のため書いたと自分で信じていたけれど、本当は自分で書きたかっただけなのか、何か表現したかっただけなのか。
私ごときの駄文が、これ以上何か世間に発して良いのだろうか、牛河原のセリフにはいろいろ考えさせられました。

いや、考えただけです。
だって、この書評をまだブログで表現していますし。





2015年5月21日木曜日

じめんのボタンのナゾの寄贈

私達の業界では大変有名な本、
「じめんのボタンのナゾ いちばんえらいボタンをさがせ」を、
本日(5月20日)に仙台市教育委員会に寄贈してきました。
近いうちに仙台市内の各小中学校の図書館に届くでしょう。





左は、仙台市教育局 学校教育部 教育指導課課長 坂本憲昭 氏、
右は、宮城県土地家屋調査士会 三浦幸治副会長


「じめんのボタンのナゾ いちばんえらいボタンをさがせ」は
平成23年度、第29回全国小中学生作品コンクール生活科部門で
最高賞「文部科学大臣奨励賞」受賞した作品です。
当時、富山県富山市立蜷川小学校2年せいの本吉凜菜(もとよし りんな)さんの自由研究です。
読んだことの無い人は是非このリンクを見てください。
「じめんのボタンのナゾ」

改めて読んでもとても素晴らしい研究です。
全国小中学生作品コンクールホームページには以下の解説があります。

通学路で地面にたくさんのボタンがあるのを見つけた凜菜さんが、そのボタンの正体を探りまとめた作品です。
ボタンの目的や誰がどうやってつけたかなどの疑問を解決すべく、ボタンに書いてある「土地家屋調査士会」に行って、 ボタンが土地の境界を示す「金ぞくびょう」などであることを知ります。
さらに、もっと大事なえらいボタンがあることを教えてもらった凜菜さんは、国土地理院まで出かけ、 『街区三角点』などの基準点があることも知り、その街区三角点がなんと凜菜さんの小学校の屋上にあるという嬉しい発見に至ります。
ボタンそのもの以上に「そのち点にふかいいみがあるんだなとわかりました」というしっかりした結論が見事です。
日常のふとした疑問を深く探究する姿勢、そして読み手を引き込む工夫のあるまとめ方が大変素晴らしい作品です。

その後日本土地家屋調査士会連合会でも、この本を題材にした書籍や特別番組を作りました。

書籍    ←日調連がこの研究を題材に新たに解説を加え編纂したもの

特別番組 ←宮城会のホームページの真ん中に動画へのリンクが有ります。

この書籍は、土地家屋調査士会の中部ブロック協議会が、被災地の子どもたちのために役立てて欲しいと贈ってくださったものです。
まだ他にも届けるお約束が有り、一冊も無駄にしないように致します。
本当にありがとうございました。