2010年4月11日日曜日

ゴールデン・スランバー

仙台在住の伊坂幸太郎の作品です。
いつものMOVIXのレイトショーで見ました。

日本の新首相が、オープンカーに乗り仙台で凱旋パレードをしているところを、爆弾テロで殺されてしまうのです。そのオズワルドにされてしまった主人公が逃げ回る映画なのですが、それほどの緊迫感がないのは、ハリウッドサスペンスではなく伊坂作品らしいところです。
全部仙台ロケなので、主人公が逃げ回る狭い路地までどこで撮影されているのか分かるという、地元の土地家屋調査士的楽しみもありました。

伊坂作品の特徴は、
  • 綿密な計算のもと、伏線がとにかくたくさん張り巡らされている。
  • 登場人物のキャラクター造りがしっかりと為されていて、登場人物は全員魅力的である。
  • 舞台は仙台若しくは宮城県である。
  • 理由が有れば犯罪、例えば殺人でさえ仕方ない。
等が有ると思います。

今回もやはり伊坂作品らしく、たくさんの伏線が張り巡らされているのを充分堪能しました。
これだけの伏線を書き込む作家は今珍しいと思います。
ただし、これらの伏線が謎解きのために有るのではないということに注意しなければなりません。

ミステリーとすればこの作家の他の作品にも見られるように都合の良すぎる偶然な展開が多く、理論的なパズルを解く楽しみが少ないのです。
伊坂幸太郎の伏線はそんな事ではないのです。設定された舞台がサスペンスのようでミステリーのようなので誤解しますが、実は違うのです。なんか、ほんわかとした嬉しい伏線が多いのです。

また今回も、脇役である登場人物までも、全員皆魅力的に描かれていました。すべての登場人物について、その魅力について感想を書きたいのですがネタバレになるので書けません。でも書きたくなるほど、本当に魅力的なのです。この世界観はいつも感心しています。

私、伊坂作品は結構読んでいますが、最後に上げた「理由があれば、犯罪、例えば殺人でさえ仕方ない」の展開には、いつも違和感がありました。これは私だけかも知れませんが。
今回の作品については、その部分もあまり気にならず、十分に楽しめた映画となっています。

この映画について、ミステリー的現実感とハリウッド的ノンストップサスペンスを期待しなければ、楽しめる映画だと思います。私は、もともと映画に現実感は求めていないですし。見終わってから、伏線と登場人物を一人一人思い出しながらニヤッとする映画でしょう。