2010年3月12日金曜日

現場で象に会いました

以下は10年近く前の文章です。宮城会と連合会の会報に載ったものです。
久しぶりに見つけたので、以下転載します。

現場で象に出会ったことありますか?
よく先輩調査士から現場で「まむしにあった。」「熊にあった。」「猪にあった。」等々お聴きしますが、私は現場で象に会いました。
皆さん「嘘だろ」と言うと思います。
私だって目の当たりにしながら「ウソだろう」と思ったのだから…。

12年程前の秋でした。仙台市の西部の某山中でした。
土地の境界の立ち会い確認業務に補助者の吉田君と行きました。
所有者がたくさん集まって、いつもの様に「境界があそこだ。いやここだ。」と始まりました。
一角に六畳ほどの草の寝ている何となく広場のような場所がありました。
「ここのゾウどうした?」
隣接者の一人のおじさんが言いました。
「さあ、どこに行ったかな。」
人間思ってもいないことを突然言われると、脳が反応しません。
冷静に考えれば答えが一つしかないことを言われているにもかかわらず、自分の理性が崩壊しないように脳が事実を無視するのかも知れません。
その時は何にも気にとめず、
「こんな山の中に銅像でもあったのかな?」程度のことが浮かんだだけでした。
その日はめでたく境界も確認できて、トラバー用の木杭を設置して帰りました。

翌日現場に行くと、せっかく昨日設置したトラバー杭が何本も寝ています。
「本当に悪い悪戯をするヤツがいるな。困ったもんだ。」などと思いながら、
補助者の吉田君とまた細い山道に設置始めました。

30分ほどたったでしょうか。
3メートルほどの幅員の山道を向こうから灰色の大きな動物がやってきました。
くどいようですが人間考えてもいないことを目の当たりにすると、頭が白くなり行動が遅れます。
2人は黙ってその動物の動きを見ていました。我に帰ったのはかなり近づいてからでした。
山道の真ん中のトータルステーション(当時リース開始直後)を抱き上げ、林の中に入りました。木の間から目の前を悠然と行く大きな動物を吉田君と黙ったまま見送りました。

通り過ぎてから吉田君が私に訊きました。
「先生、あれは何でしょう?」
「ゾウ・・・だよね。」
「先生、野生でしょうか?」
「・・・・・・・」
結局その日はそれで仕事は終わりました。

後で聴いた話ですが、仙台のスーパーのTVコマーシャルで使った象が、たまたまこの山に預けられていたということでした。
なんと言われようが私は現場で象に会ったんです。
調査士20年やってきた中、これは大変自慢です。