2009年12月4日金曜日

会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ

「会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ」(齊藤正明著、マイコミ新書)を読みました。
マグロの鮮度保持剤を研究していたサラリーマンが、ひょんなことからマグロ船に乗ることになって全く違う社会の考え方に触れ、新鮮な気づきを得た話しです。

他の社会を見て成長する話しは良くある設定ですが、マグロ船というのが意表をつかれたし、このマグロ船の親方や機関長の生の会話がそのまま載ってて、なかなか良いんですよ。
以下一部抜粋して紹介します。

「ええか、齊藤。おいどーらがマグロを捕りに行くとき、一番大事 なことを知っちょるか?」「それは『決める』ことど」
「決めないといつまでも海をウロウロすることになるんど」
「マグロが捕れるかどうかは、じっくり考えても、すぐに決めても、 結局、確率は50%ど。それであれば、早めに舵を取ったほうがええ。 ダメだったら次の漁場に移動すりゃええことじゃねーか。決めた回数を多くすれば、漁ができる回数も増やせるからの」

「人間はの、幸せのなかにいるときは、幸せに気づかんもんよ。マグロだって、海にいるときには、自分の幸せにはきっと気づいておらんち。おいどーらが釣り上げると、マグロはバタバタと大暴れし よる。海から引き離されて初めて、海のありがたみがわかったんじ ゃねーんかの?」

「結果にばかりこだわると、その途中にある、おもしれーもんや、 役に立つことを見逃すんど」

「おいどーらは、事前に縄に傷が無いか調べたど。針も磨いたど。エサを針につけたど。縄を海に入れてから3時間待ったど。」
「つまりの、おいどーらは、おいどーらにできることをすべてやったんど。それから後のマグロが捕れるかどうかなんて、海が決めることど。」
「齊藤ら陸の人たちは、人間ではどうにもならんことまで、なんとかしようとしちょる。それが疲るる原因よ」

「たいていの人が言う努力は、やったことが、3回に1回うまくいくことを望んでいるように聞こえるの。マグロ漁の場合は、単純な計算じゃが、100本の釣り針に1匹マグロがかかるぐらいど」
「海では誰もが完璧になろうと思わない。『完璧』を目指せば目指すほど、自分にできないところが目立って落ち込む。結果、完璧とはより遠くなるんど」


「他人からわかってもらおうとするからつれぇんよ。自分が自分の仕事に楽しさと誇りを持てば、あとは世話ねぇ話じゃ」
「人の言うことを聞くやつは、その場はいい子になれるが、いざと いうときに弱い。人の言うことを聞くってことは、自分なりの判断基準を持っちょらんことじゃろ?」
「齊藤は、自分のなかに計器を持っちょるか? 船は、計器やらがあるから、海の真ん中でも迷子になりよらん。これは人も同じど」


「『便利になれば幸せになる』、そんなん全部幻ど。むしろ、不便 なほうがみんなで助け合ったりして、心のなかに幸せを感じるし、 難しいこともできるようになるんど」

「『仕事が丁寧なやつ』は、たいてい『仕事が遅い』。ひとつのことを見て、長所として受け取るか、短所として受け取るかの違いだけでねーんか?だったら長所として受け取った方が、お互い気持よかろう」

「(人の短所に)イライラせんこともねぇ。けんど、技術が未熟なことを怒っても、うまくなれるわけではなかろーが。俺より処理がうまかったら、そいつが船長になっちょる」
「うまい処理の仕方は、後で本人に直接、『こうやるともっと早くできる』と教えてやってるんど」