新人の頃は本当に困りました。
でも隣接者が怒っているときは、まとまる可能性も高いのです。
なぜなら、その人は境界紛争解決に向けて、強い何らかの主張をしているわけですから。
自分の主張を押しつけるかも知れないけれど、何らかの「法的安定」を求めているわけです。
ですからその人に、「土地家屋調査士は、公平な立場で、その解決のお手伝いをするのだ。」ということが理解していただければ、むしろ話が早い可能性があります。
じゃあ、どちらも解決を望んでいるのに、なぜ喧嘩するのでしょうか。
どちらも自分が悪くないと思いこんでいることが多いからです。
私の経験からすると、意図的に境界を侵害したり、境界標を動かす人は、ほとんどいないと思います。
自分の持っている境界に関する資料(書証、物証、人証のいずれであっても)を信じて生活をしているところに、突然隣接者から「境界侵害だ」と言われて、喧嘩になるのです。
皆さんが、いつも経験するように、各々の資料は整合しないことが多いですね。それらが境界争いの原因となることが有ります。
でもそれらの資料は、法務局や役所に有る資料ですから、公的な資料であるわけです。公的な資料が各々整合しないことが有るなんて、一般の市民は分かりません。ですから、本人は善良な市民なのに、ある日突然泥棒呼ばわりをされるのですから、大変怒るわけです。
財産権の問題のハズなのに、その地価の10倍も高い裁判費用を支払って喧嘩していることを、私も見ています。このようなことを、境界問題に携わる人は、皆、深く認識しなければなりません。
「なぜ相手はここを境界と信じたのか」
この点をお互いに理解し合って、必ずしも隣地所有者は悪人ではないことを理解し合えば、必ず次の展開があります。
ちなみに上で述べた怒りの隣接者と区別する必要がある方は、「隣が嫌いで困らせようとしている人」です。この人は、別に解決を望んでいません。この場合は、お客様の目的に沿って、筆界特定等の別の方法を使うことになるでしょう。