2010年5月27日木曜日

ローラン・ギャロスのおとぎ話


クルム伊達公子が、全仏オープン1回戦で世界9位のサフィーナを破りました。ご存じと思いますが、伊達公子は世界ランキング4位まで昇った日本人テニスプレーヤーです。1996年にランキング8位のままのまま惜しまれて引退しました。
2008年に突然現役復帰を宣言して、39歳の今年、四大大会でサフィーナを破ったのです。サフィーナは昨年の準優勝者です。本当に世界中を驚かせました。

彼女の引退前の現役時代は、ほとんど笑いませんでしたが、今は時折笑顔が見えます。人生を過ごして別の境地が開けたのでしょう。

試合をリアルタイムで見ていましたが、肉離れを起こしたばかりの右のふくらはぎにテーピングが巻かれ、痛々しい状態でした。最終セットでは、時折苦痛に顔が歪んでいました。試合後のインタビューで「棄権も考えたが、1分でも長くコートに立っていたかった。アドレナリンだけが頼りだった。」と語っていたようです。

最終セットで1-4とリードされたのですが、そこから相手サーブをブレイクし、そこでメディカルタイムアウトを入れました。治療を受けている間も、苦痛を隠さずに顔に出していましたので、見ている私は、「これは棄権かも知れないな」と思いました。

しかし、伊達は試合続行し、できるだけ自分が走らず相手を走らせるように、コースを打ち分け、ドロップショットを使い、ここぞという時に苦痛を堪えてネットに詰める、その気迫にサフィーナの精神状態が乱れてきて、ミスをも目立ち始め、ついには逆転勝利をつかみ取ったのです。

今晩が2回戦です。相手はランキング下位のジャルミラ・グロス。足の状態が一層悪くなっているようですが、伊達は出たいと言っているようです。今日はキツイでしょうね。私も残業が終わったらテレビに駆けつけるので、試合に残っていて欲しいと思います。(ちなみに復帰した錦織圭も今晩2回戦を迎えます。)

どうしても、この話を書こうとすると、私の筆力では安っぽいドラマにしか表現できそうもありません。涙、汗、努力、根性、執念、冒険、等々だとかそんな言葉では伝えられない「何か強い力」を感じました。

ロイターはこの伊達の勝利を「おとぎ話のような勝利」と伝えました。