さて、明日は皆さんに通知しているとおり、新オンライン申請システムと民法(債権)の研修会です。二日続けての日程で厳しいでしょうが、内容を吟味していますので、是非参加してください。
新オンライン申請システムについては、オンライン委員会の皆さんがしっかり準備を重ねています。
また、明日の研修会の中の債権の部分ですが、なるべく基礎的な話をしながら、具体的論点に触れようと企画しています。債権講義の内容を少しリークしますので、「問題意識」と「六法」を持って参加ください。
民法(債権)研修質問
買主甲より建売住宅の建物表題登記を受託し、甲より同登記の委任状、売主乙より建物引渡し証明書の交付を受け同登記を完了後、同建物が落雷により焼失してしまった。甲はまだ同建物に住んでいないし、売買代金も支払っていない場合、民法第534条第1項(債権者主義による危険負担)により甲は建物の売買代金債権を免れないのでしょうか。また同条の要件である乙の債務履行前(建物の引渡し)かどうかの問題になったとき、調査士が直接乙から同証明書を受け取る事は問題となる行為なのでしょうか。
質 問②
分筆登記手続きを受託し、着手金として見積金額の半額を受領した。事前調査業務を終え測量業務に入ろうとしたところ、依頼人から契約解除の告知と、着手金全額の返還請求を受けた。全額返金しなければならないのでしょうか。
質 問③
土地の地積更正登記業務を受託し隣接所有者立会の上境界杭を埋設したところ、契約の解除の告知と、境界杭を抜き取り原状回復するよう求められた。境界杭を抜き取り原状回復しなければならないのでしょうか。
質 問④
土地家屋調査士Xは、8年前A土地の所有者甲の依頼を受けA土地の地積測量図を作成したが、甲の指示により隣接者の立会を求めず現地に有る境界杭を測量して作成したため、地積測量図には「隣接者の境界の確認は行っておりません。」と記載していた。
同土地を甲から買い受けた乙が、ブロック塀を設置するに際し、隣接者丙に境界の確認を求めたところ、丙は「既設の杭は甲が立会を求めず勝手に埋設したものであり、認められない。真実の境界は30cmA土地側であると主張され、止む無く丙の主張する場所に境界杭を移設した。
乙は売買契約時甲の示した土地家屋調査士Xの作成した地積測量図の面積により売買代金を支払っていたが、甲が破産者の為土地家屋調査士Xに損害の賠償を求めた。
土地家屋調査士Xは損害賠償責任が有るのでしょうか。
質 問⑤
土地家屋調査士法第3条第2号不動産の表示に関する登記の申請手続は準委任行為と思いますが、第1号不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量は、委任、請負のどちらになるのでしょうか。
また登記を前提としない地積測量図の作成や土地境界確認図面の作成業務は、いかがでしょうか。
質 問⑥
登記業務を受託した場合、受託書を作成しないと、どのような紛争を生じる恐れがありますか。
質 問⑦
登記手続の報酬債権の消滅時効は第167条第1項により10年と考えて良いのでしょうか。商事債権の場合は5年となっておりますが、土地家屋調査士の報酬債権は商事債権には当らないのでしょうか。
質 問⑧
登記手続を受託した場合、全額前払いの請求をすることは問題ないのでしょうか。
質 問⑨
土地家屋調査士Xは金融業者甲から「乙より1000万円の融資を申し込まれたので、甲が新築したばかりの自宅(未登記)を譲渡担保として自分名義で登記することを条件に融資に応ずる事にした。乙も承諾しているので、自分を所有者とする建物表題登記を申請して欲しい。」との依頼を受けた。土地家屋調査士Xは乙に確認したところ、甲の説明の通り甲名義で登記することを承諾したので、乙を建築主とする建築確認書、検査済書、同建物を甲名義で登記することを承諾する乙の承諾書を添付して、甲を所有者とする建物表題登記を申請し完了、その後保存登記も完了した。
しばらくして、乙の自宅を建築した工務店丙から「建築代金を受け取っていないので、建物はまだ自分のものであり、甲名義で登記申請したことは、おかしいのではないか。」との話があった。
調べてみたところ、乙は同建物の銀行からの住宅ローンを受取っていながら、丙に支払いをせず、競売を逃れる為、甲名義で同建物を登記したとして、競売等妨害罪及び電磁的公正証書原本不実記載罪の疑いで取調べを受けているとの事であった。
本件において土地家屋調査士が譲渡担保を原因とする、冒頭省略登記申請することに問題は無かったのでしょうか。また建物引渡しの確認をしなかった事に、損害賠償を請求される可能性の有る、過失はあるのでしょうか。
なお土地家屋調査士Xは乙から、同登記を申請するに際し、上記事実を一切知らされておりません。