私は宮城青調会で育ちました。宮城青調会は高橋眞先生が中心になり設立されたものです。私もこの青調会には大変思い入れがあります。大変良い組織と思っていますので、全国の新人のためにも大変役に立つと思い、ここ数年全国に広めたいと行動をしていました。
以下は昨年東京会会報に載せていただいた宮城青調会の紹介の抜粋です。
(前略)
宮城は「青調会の発祥の地」らしいのです。青調会とは青年土地家屋調査士会の略で、最近全国各地で設立されています。東京会でも平成14年に設立されましたね。 宮城青調会は今年36年目です。(2008年時点)知っている限りの情報では、全国で一番古い歴史を持っているようです。 そこで宮城青調会の紹介を書かせてもらうことにします。 まず青調会の意義ですが、青年の志を持って集まった会員の相互の情報交換と研鑽の場です。これは、あくまでも任意団体です。 (中略)
宮城青調会は、単位会としての宮城会とは対立関係ではなく、相互補完的な役割を担ってます。なにしろ宮城の歴代会長と協会理事長は、ほぼ宮城青調会出身です。うまく役割を分けています。
青調会は任意団体なので、この点で、強制会である宮城会ではやりにくいある意味偏った研修ができるというメリットを持ちます。 単位会の研修のレベルが平均の上程度を狙っているとしたら、青調会は誰も知らない最先端の研修も今年の新入会員のためだけの基本的な研修もやれます。 また、一業者に肩入れして研修を開催することも問題有りませんし、新人の業務上の愚痴や不安を聞いてあげるだけの集まりも持てます。
ちなみに私のいた頃の青調会の活動を紹介しましょう。
1. 弁護士を育てようプロジェクト
当時は筆界と所有権界との正確な理解をしている弁護士がきわめて少なく、境界紛争で相談する弁護士もいませんでした。それでは我々がこの分野で頼りになる弁護士を育てようという大それたプロジェクトです。 具体的には、一人の有望な若手弁護士を選び、我々の研修図書を次々に提供し勉強してもらう。青調会の忘年会等には無料で招待する。年に一回は青調会で法律分野の研修を無料で講義してもらう。最終的には調査士と筆界を理解した顧問弁護士になってもらう、といったものです。
2. 請求書作成コンペ
お互いの請求書の書き方を紹介し合う研修会を開催しました。報酬額のカルテルをするつもりは全くなく、報酬額の高い安いは議論しません。 調査士は、報酬額の内訳詳細を説明する義務があるのに、説明が下手な会員が多すぎます。このお客様に対する報酬額についての説明が下手なために結果的にダンピングになってしまう会員を救うためで、具体的には請求書の項目の書き方などの研究でした。
3. 現場ランチマップ
調査士が現場近くで外食をするときのガイドマップをつくるというプロジェクトです。ミシュランなどの基準とは違い、作業着や長靴等で入れ、駐車場完備であり、安くておいしく腹一杯に食べられる食堂をお互いに紹介するマップを作りました。みんな何軒はネタを持っているはずなので、出し合い、新入会員でも他人の役に立てる情報を発信できるという実感を持ってもらうためのプロジェクトでもありました。
4. お下がり友の会
販売業者の口車に乗って新しい機器を次々買うのは新入会員では大変厳しいこと。「トータルステーションを買い換えるけど、誰か古いもの下取らない?」「不要なプロッタ有りませんか?」といった情報交換をする場を設けました。
5. 東北ヤングサミット
昔は隣の会の会員と会ってご挨拶できるのは常任理事以上、ブロックを超えてとなると、副会長以上でした。何かを背負ってから話をするより、立場のないうちに語り合いたいという単純な発想で、10数年前仙台で飲み会を開催しました。当時の参加者は、今では東北ブロック各会の重鎮になられ、頼もしい仲間になっています。一応、昼間は県境の報酬額や技術基準の違い等を議論しました。
6. 各会会報ダイジェスト
宮城会事務局には各会からの会報が送られています。ほとんどの会員がそれを見ていないのは、大変もったいないことだと考えます。会報にはその会の工夫した有益な記事も沢山あるはずです。そこでそれらの会報からこれはという記事をダイジェストにして、半年に一度コピーを配りました。
7. 共同購入
高価な機器を購入するのに青調会で交渉して、人数をまとめるからと言って、安価で購入しました。販売業者は事務所訪問をしようとしても調査士がほとんど留守ということで効率が悪い営業を解消できるメリットがあります。会員は、安く買えるだけでなく、同じ機器を持つことで、使い方の裏技等を教え合うというメリットも生じます。
8. 調査士法人、合同事務所シミュレーション
調査士の仲間は、調査士法人等の事務所形態に興味あがっても、イメージだけで語ることが多いようです。また、合同事務所でも酒を飲んだときだけ、「お前とやろうか」程度の話ししかしていないようです。会社合併でも、数々の試算表を前に協議を重ねるのに、まったく数字等は考えていないことが多いのです。 そこで少人数グループに分けてシミュレーションをみんなでやりました。 事務所をどこにどの規模で、今いる補助者をどうするか、顧客はどうなるか、実際に受託した事件を誰がどう処理するか、経費と収入を誰が決定するか、とにかくたくさん課題が見つかります。
こんな感じで工夫次第で、強制会である単位会や支部ではやりにくい企画が可能です。もちろん、その後の懇親会の場が、もっと勉強になるのですが。
土地家屋調査士の新人達は、「社会は何もしてくれない。会社は何も教えてくれない。だから自分の力で生きていく。」って考えて調査士になったはずなのに、調査士になった途端に、「調査士会は何もしてくれない。日調連は何も教えてくれない。」って・・。 絶対おかしいですね。自分たちに必要な情報は自分たちで取得すればよいのです。そしてそれを単位会や支部に還元すれば良いのです。 私は宮城会や日調連の役員をさせていただいた時期がありますが、いつもこの青調会の自分で創る感覚は忘れないようにしていました。宮城青調会で育ったお陰と思っています。今、宮城会の役員は、この青調会の感覚をベースに会務を行っています。
現在、全国にこういった青調会の設立が進んでいることは、時代の変革に対応しようという仲間の意欲を感じます。変な全国組織を作るのが目的ではなく、自然体の情報交換ができる会ができ、単位会同士も肩肘張らず、お付き合いができると良いですね。 その東京会の仲間の輪に宮城会も入っていれば大変嬉しく思います。
最後に、私の新入会員の頃からの信念です。これが青調会の原動力と思っています。
Q:自分の未来を占う一番良い方法は? A:自分で未来を創ること。