2011年11月4日金曜日

路線価調整率と政治判断

今週国税局が公表した路線価は、阪神淡路大震災に次いで2度目の「調整率」が適用されました。
阪神淡路の際は最大で25%減だったそうですが、今回は女川で80%減と遙かに大きく、福島第一原発周辺は100%減(価値0)との調整がなされました。

これにより被災地の路線価を大幅に落とし、相続税や贈与税等の納税額を減らす効果がでます。

今回の東日本大震災において、死者と行方不明者を併せて2万人程を数えます。
私たち宮城県土地家屋調査士会で、実際に被災地を廻って相談を受けていると、確かに相続の問題の件数が多いです。
身内の方を亡くした相談者は、大抵不動産や動産も失っています。大変気の毒な状態で、物心両面の支えがないと復興できないと思います。
その観点では、この調整率適用は、この方々にとって大変助かることと思います。

路線価は実際の不動産価格を反映させなければなりません。ですから、現状では取引の対象にもならない被災地の不動産は、路線価評価をさせたら大幅に減額されるのは自明の理です。

ただし、この不動産の路線価は他の大きな役割も担っています。
この路線価は、地域経済の下支えであり、地域経済の根拠でもあります。
この公的な発表は、地域経済の更なる鈍化を招く恐れがあります。
経済的復興が遠くなる可能性が大きいと思うのです。

行政は間違っていません。この調整率適用は正しい措置だと考えます。
ですから、ここでは政治が考えて欲しかったと思います。
路線価をここまで落とさずに、相続税や贈与税等については、他にも多く見られる特別な措置で対応しても良かったと思うのです。

被災地が復興するためには特区創設も含めた政治判断が必要です。
平時のルールでは対応できないことが多いのです。

被災地だけ助けることが、他の地域の人々から不公平に思えるかも知れませんが、いつまでも被災地に日本経済が引っ張られていたら、日本全体がダメになります。
政治が早めに手を打つことが、日本全体の為になるはずです。

ギリシャ経済の破綻が、遠い日本に大きな影を落としそうな状況を考えて欲しいのです。


以下河北新報の記事2011年11月02日水曜日です。転載します。

路線価調整率 沿岸部の下落顕著 内陸も5~30%減額


仙台国税局が1日公表した路線価の調整率によると、商業地、工業地を含む県内の宅地は0.20~0.95で、路線価は最大で80%減額された。調整度合いは津波に見舞われた沿岸部が大きく、内陸の市町村の路線価は5~30%の減額となった。


県内市区町村別の調整率(宅地)の適用幅は表の通り。このうち女川町は鷲神浜や尾浦町、黄金町、寿町などが県内で最も低い0.20となり、インフラや経済的影響も含めた津波被害の大きさが反映された。
次いで路線価の減額が目立ったのは南三陸町。歌津、志津川、戸倉などでそれぞれの中心部のほぼ大半が調整率0.25となった。
このほか、東松島市の新東名1~4丁目、野蒜、矢本、山元町の坂元、高瀬なども0.25。仙台市宮城野区の岡田、蒲生、港1~5丁目、若林区の荒井、荒浜、今泉や、気仙沼市の朝日町、魚市場前、多賀城市栄1~4丁目、岩沼市押分、石巻市大街道南2~4丁目などが0.30となった。
7月に公表された県内税務署別の最高路線価(1平方メートル当たり)との比較では、東北最高の184万円だった仙台市青葉区中央1丁目の青葉通が調整率0.85で、156万4000円に減額された。
ほかは気仙沼市本郷の県道26号通り(調整率0.30)が5万円から1万5000円に、石巻市鋳銭場の石巻駅前通り(調整率0.60)は4万9000円から2万9400円に下がった。ともに津波で冠水した。
調整率は丁目、大字などごとに設定しているが、大字では震災の被害程度によって異なる場合がある。詳細な調整率は国税庁のホームページや各税務署などで閲覧できる。