今回の震災で一番大きく水平地殻変動したのは女川町江島二等三角点 「江ノ島」で、 東南東方向へ 5.85m移動しました。水準点の上下方向で一番大きく変動したのは、石巻市鮎川浜 電子基準点 付属標「牡鹿」 で1.14m沈降しています。この変動量は、阪神淡路大震災のそれの1桁上の変動でした。
南北に500km以上の範囲の地殻がこれだけ移動したので、すべての土地の境界がその点間距離と角度を精密に保ったまま移動できたはずがありません。実際に境界点間の相対位置が変動した箇所を現地でもたくさん見ています。
このような現実において、パラメータ変換処理だけで、以前の地図を生かすことは難しいと思います。
本来は全部測量調査すべきですが、その予算とマンパワーは膨大なものになるでしょう。
そこで提案です。
新たな測量成果が揃うまで、震災により誤差が多くなったと思われる法務局備え付けの14条1項「地図」を、同条4項の「地図に準ずる図面」に位置づけを変更するのです。
14条1項地図は、復元性が高い資料です。パラメータ変換だけでこの位置づけのままなら、震災が落ち着いた頃に民事紛争が起こることも容易に想定できます。しかし「地図に準ずる図面」の位置づけなら対応の仕方を工夫することができます。
実は、震災前からこの議論はありました。
地図に誤差が有る箇所が全国各地で指摘されていましたが、その事実が確認できない、または1項に指定された図面を4項に落とす手続きが存在しない、という理由で、そのままにされていました。
100歩譲って過去はそのとおりだとしても、今回の震災では事実を確認して欲しいのです。
手続きが無いのなら、創れば良いだけです。手続きは国民のために有るものですから。
地図に誤差を生じさせた犯人は、今回は東日本大震災です。
誰も悪くありません。誰も傷つきません。
動くなら今だと思います。