先日11月19日、宮城県司法書士会の研修会に、講師としてお招き戴きました。
戴いたテーマは、「大震災、大津波と不動産表示登記業務の諸問題」でした。
司法書士の皆さんも、大震災後様々な相談を被災地の方々から受けているようです。
私たち土地家屋調査士が対応する相談でも同じですが、相談者は資格者の守備範囲を正確には分かりません。なんでも相談に来ます。
もちろんそれで良いのです。
困っていらっしゃる相談者に、たらい回しのような対応は、できるだけしないようにしたいものです。
司法書士の皆さんも、様々な相談の中に土地家屋調査士業務も含まれるので、概略だけでも知って相談者に対応したいとのニーズからの研修会でした。
「大震災や大津波により破壊された土地・建物について、土地家屋調査士の分野はどのような判断をし、どのような手続きをするのか」
大変関心のあるテーマだと思います。
この研修会の講師を受けて、研修の構成を考えました。
私の研修会は、いつも構成に時間をかけます。
どのような話の展開が、受講者にとって理解しやすいか。
それには、その受講者の力量や関心の方向をリサーチしなければなりません。
今回も、研修担当者の方ともお話しして、以下の構成にしました。
○本来の平時の土地家屋調査士業務を解説する
・登記総論と手続きの各論を解説する
・筆界論と手続きを解説する
・近時の業界周辺のトピックスを解説する
○震災により何が平時と変わったかを確認する
・要件の確認
○その変化に対応するために登記手続き等がどう変わったかを解説する
・土地、地図、筆界
・建物、滅失
○宮城県土地家屋調査士会の震災対応の考え方を説明する
最初の項目の平時の業務解説の部分は、分かっているようで分かっていない部分です。
これは、土地家屋調査士が司法書士業務を分かっているようで分かっていない部分があるのと同じです。我々も勉強する必要があります。
この部分が理解されないと、今回の震災対応も理解されません。
そこで、リクエストとは違うのかも知れませんが、上記のような構成で講義をさせて戴きました。
平時をしっかり把握しないで、非常時は語ることができません。
すべてがそうだと思うのです。
これは東日本大震災という非常時に確信しました。
平時にしっかりと物事を把握して、正確な判断を続けていることが、非常時対応の一番の準備だと思います。
平時では、中途半端にその場凌ぎで暮らしていても、それなりに格好が付くかも知れません。
でもそんな暮らしをしながら、格好の良い台詞を語っていた人達は、非常時では小手先の選択肢に振り回されて、何もできなかったようです。
何が本質で、何が使命で、我々は何をしているのか、普段からそこをブレずに暮らしていると、非常時でも、うろたえないでしょう。