2012年7月1日日曜日

さよならドビュッシー


私は出張で電車に昨日29日5時間半、本日30日に3時間半程乗っています。
一昨日も遅くまで用事があり、出張当日に慌ただしく出張準備をして、発車10分前に仙台駅に到着して、本を持って来なかったことに気がつきました。
これだけの出張だと大抵本を2冊程持って来ます。一册は勉強の本、もう一冊は暇つぶしの娯楽の本。急遽10分で本を探しました。

じっくり読み込む勉強の本を探す事は無理なので、娯楽本を探しました。私にとって、電車での娯楽の王道はミステリーです。何しろ目的の駅まで完全に読書時間が何時間何分と約束される電車は、犯人探しの思考を途中停止させられない環境としては最適です。

さて、何の予備知識も無く手に取ったのが「さよならドビュッシー」中山七里でした。
第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞と書いてあったし、もともと私の好きな音楽ジャンルが絡めば、ミステリーとして弱くてもまあ我慢できるかもと買いました。
森雅裕「モーツァルトは子守唄を歌わない」など、クラシック音楽とミステリーの融合は秀作が多いと考えたからです。

結論、大当たりでした。ミステリーとして上質。音楽の描写も秀逸、大変素晴らしかったです。

何不自由無い生活をして音楽学校に進む主人公が、突然の火災で資産家の祖父と仲良しの従姉妹を失い、自分も全身大火傷を負う。主人公の、指も満足に動かせないところからピアニストを目指しての壮絶な闘いと、それに不審な事件が絡む。

キャラクター設定が見事で、一人一人がよく描かれています。ハンディキャップを背負ったヒロインが頑張る姿と素晴らしいコーチ。私の世代にドンピシャのスポ根テイストも満載。
ミステリーが無くてもピアニスト物語としても十分読み応えが有るストーリーで、なおミステリーをさんざん読んでいる者も納得させる力のある上質なミステリーでした。

のだめカンタービレの成功は、単なるラブコメだけではなく音楽の描写に説得力が有ったからですし、このミステリーも音楽や演奏の描写の部分はまったく同じ事が言えると思いました。

明日も6時間以上の電車移動です。中山七里の次作「おやすみラフマニノフ」をなんとか探して電車に乗りたいと思います。