2020年2月25日火曜日

春の開業ガイダンス延期のお知らせ

何人かに開催のお約束をしていた「春の土地家屋調査士事務所開業・運営ガイダンス」ですが、新型肺炎のために延期いたします。

今年合格された方々から今春開催のガイダンスについてお問合せがありましたが「3月は忙しいので4月か5月に開催したいと思う」とお伝えしておりました。
そこで、適当な開催地と適当な日程を検討していたのですが、実は日々刻々状況の変わる新型肺炎の動向を見ながら迷っていました。
しかし、これから本格感染拡大しそうなニュースが続いていますので、本日春に開催する予定のガイダンスは延期することに決定しました。
お問合せが多いので、今年は少し開催地と開催日を増やそうと思っていたのですが、とても残念です。

暑くなれば新型肺炎が収束しそうです。
その状況を見ながら今年の予定を立てます。
決まったら、またこのブログでお知らせいたします。

ただし、それを待てない事情がある方々や土地家屋調査士事務所を開業したいと考えている試験合格者や、土地家屋調査士法人から独立したい土地家屋調査士や、土地家屋調査士事務所運営上困っている新人の皆さんには、メールで相談を受け、メールや電話等で回答いたします。

ご希望の方は具体的な相談内容を書いて、まずは下記までメールをください。
年度末に向かい即日回答は難しいかも知れませんが、何かはお答えできると思います。

鈴木修 Email  mucha@rr.iij4u.or.jp




2020年2月17日月曜日

補助者勤めと即独の選択肢

Sさん、昨年末東京で開催した土地家屋調査士事務所開業・運営ガイダンスに遠方からご参加いただき、その後、
「お陰様でモヤモヤがワクワクへと変わり決心が付きました。
「土地家屋調査士」になります。」
とのお便りをいただき、とても嬉しかったです。

また先日、試験合格の報告をいただきましたね。
「お陰様で土地家屋調査士試験に合格する事ができました。
ガイダンス後の懇親会で先生に「合格してます」と言い切った手前内心ハラハラの発表でした。正直かなり嬉しいです。
今後ですが幸せにも妻に理解してもらう事ができ開業(即独)に向けて進める事にしました。困難な道だと思いますがワクワク感が止まりません。
この気持ちを忘れず、誠実に真摯な姿勢で取り組みます。
先生のブログで沢山のヒントを貰いました。
先生にお会いできて本当に良かったです。
追いつくのは難しいとは思いますが必死にやってみます。
土地家屋調査士として鈴木先輩にお会いできる日を楽しみにしてます。
ありがとうございました。」

宣言どおりに合格されたこと、そして奥様のご理解も得て土地家屋調査士を目指すとのこと、そして誠実に真摯な姿勢で取り組むということ、私のガイダンスだけでなくブログも役にたったということも含めて、とても嬉しいお便りでした。

ただし、この開業(即独)という言葉が少し心配になりましたので、昨日お電話で話しました。ご理解なさったと思いますが、念のため電話の内容をまとめますからもう一度確認してください。

お電話によると、近隣の先輩のお手伝い(アルバイト)をしながら実力を付けるとのことでしたね。
「何故、どこかの事務所の補助者になって実力を付ける道を選ばないのか」という私の問いに「いろいろな事務所のお手伝いをすることの方が実力が付くと思う」という言葉がありました。

Sさんがある程度の実力を持っているのなら、それも良いと思います。
しかし、Sさんはまったくこの業界のノウハウを持っていません。
そんな何もわからない人が、先輩の事務所の手伝いがあるとすれば、事務所が忙しいときのスポット的な測量の助手程度だと思います。
それだけで測量能力や筆界鑑定能力や法律的判断能力が身につきますか。また、一番大事なお客様の問題解決能力などが身につきますか。
報酬計算や事務所経営の能力が身につきますか。
それらの点を独学でどのようにカバーすると計画していましたか。

お話しを聞いていると「補助者は給料が安い」という言葉がありました。
結局、それがSさんの本音でしょうか。
補助者は確かに今の給料に比べたら安いでしょう。
だって、Sさんが何歳でもこちらの世界では新入社員ですし、何もノウハウが無いのですから。
おそらくSさんは、今更新入社員から始めるのに抵抗が有るのではないですか。

Sさんの考えているアルバイトを2,3年する選択を考えてみましょうか。
どんな事務所でも、そんなに頻繁にお手伝いは不要でしょう。
毎日アルバイトが必要な事務所なら、その分の人材を雇っていると思いますから。
まったくノウハウのないSさんが得るアルバイト代は、月数回ですから月数万円程度でしょう。
それこそ生活ができないでしょう。
そして、それを何年続けたら一人前になるのですか。
ビジョンが甘すぎますよ。

言い方を変えましょうか。
Sさんがよくご存じの宅建業での開業に置き換えて考えてみてください。
まったくの素人の方がたまたま宅建試験に合格して、即開業することを想定してください。試験合格程度では宅建業を営むノウハウは何もないはずですね。
その必要なノウハウをアルバイト程度で身に付けようとする考え方は、かなり危険なことだとSさんならお分かりですよね。
不動産業のスポットのアルバイトなら、せいぜいチラシ配りとか旗立てなどでしょう。宅建業の決済や重要事項説明の場にアルバイトが同席することは有り得ないでしょう。
そんなアルバイトを2,3年するだけで、収入が安定する宅建業者になれますか?
もう少しじっくり考えてみてください。

まずは、少し土地家屋調査士の業務を見た方が良いでしょう。
アルバイト代を稼ぐと考えず、「ただで良いですから1週間(1ヶ月)ほど事務所を手伝わせていただけませんか?」と何カ所かお願いした方が、Sさんの勉強の機会はあるかも知れません。

私は確かに補助者勤めをせずに即独しました。
自分の経歴ですから嘘は書きません。
それを上辺だけで理解されても困るのです。

私の開業はインターネットの無い時代で、しかも師匠も無かったわけですから、疑問点を簡単に調べることはできませんでした。
本当に身を削って勉強しました。
自分のことで恐縮ですが、新人であれだけの量を勉強し続けている人にほとんど会っていません。

土地家屋調査士はとても良い仕事だと思います。
専門家として広く深いノウハウを身に付けたら、とても魅力的な仕事になります。
反面、勉強不足で仕事が無い先輩達もたくさんいます。
良いことだけではなく、厳しいことも正しく伝えたくてガイダンスを続けてきたつもりです。

私はSさんをどこまでも応援します。
Sさんにはどこまでの覚悟がありますか。




2020年2月9日日曜日

土地家屋調査士試験合格後どの事務所で修行するのか

2月14日が今年の土地家屋調査士試験の口述試験の合格発表日ですね。
一週間を切って発表をわくわく待っている人達が多いでしょうね。
私のところにも筆記試験合格発表あたりから、また合格者から沢山の質問や相談が届いています。

皆さん、開業するのにどうすれば良いかという相談ですが、大きな問題として3つでしょうか。
1.開業資金
2.専門家としての実力
3.継続的な業務受託

詳細は開業ガイダンス等でお話していますが、参加できない方が多いので、継続してこのブログにヒントを書いてきました。よろしければ過去の記事もご覧ください。

昨年末の東京で開催した開業ガイダンスに参加されたNさんの当初の質問が以下のとおりでした。
「現在、私はまったく異業種の会社員です。実は、開業を前提に補助者としてお手伝いをさせて頂けそうな先輩方からのお声がけを頂戴しております。私としては、業務に全く自信がありませんのでそのような形で実務の勉強をさせて頂けることは非常にありがたいと思っており、まずは補助者としての経験を検討しております。
そこで、ご質問させて頂きたいことは

 1. 即独立してしまったほうが自己研鑽に磨きがかかりそうですが、反面失敗してしまうリスクも大きいように感じておりますがいかがでしょうか。

 2. 家族もおりますので、特に1年目の補助者の間の薄給に耐えることができるでしょうか。
 3. (省略。開業ガイダンスで答えました)」

開業資金は現職の間に準備できたようです。目標を持ってこられたのですね。立派です。

1の「即独立」か「補助者修行」か、についてコメントしました。
「専門家としての実力」については、試験合格程度の能力では、まったく役に立ちません。これは、ちょっとでも先輩土地家屋調査士とお話しすればすぐ分かることでしょう。
ではどうするかですね。
私は以前から書いていますが、即独の道を選びました。
補助者もやらずに独立したのです。
自分でやってみて思いますが、これはとてもキツイ道です。誰にでもお勧めするものではありません。
多額の専門家責任を問われるリスクのあるなかで、必死で独学をしながら業務をしていくということは無謀に近いものがあります。
できればどこかで修行すべきと思います。

さて、2の「1年目の薄給に耐えることができるか」って質問ですが、昨年の東京のガイダンスの質問に対する一番短い回答になりました。

「知らんがな」(笑)

私がいつも書いているように、修行したくてどこかの事務所の補助者になるのですよね。本来教えてもらうのなら授業料を払うべきものです。それを給料もらえるのだから諦めましょう。それも含めて開業資金だと思うしかありません。

ではどこで修行するかです。
募集しているところが丁度理想的な事務所なら良いですが、頻繁に募集しているところは間違いなく頻繁に退職している事務所ですし。

一番考えて欲しいのは、補助者は通過点で永久就職でないのですから、その期間の待遇を気にしすぎないことです。最近の傾向として、長期間の待遇を考えて法人勤めを検討する人が多いです。
「それってサラリーマンになりたかったのですか?」と聞きたくなります。
人数の多い法人はルーチンワークで回しているところが多く、何年勤めても土地家屋調査士として総合的な実力が付かないところが多いです。もちろん全部の法人を否定しているのではありません。少なくても私に相談してくる方々の環境はそんなものです。

かと言って、少人数でやっている事務所の方が総合的な実力が付くのかは、やはり各々の事務所次第です。
だから最終的に独立するつもりなら、そこの先生と会って、しっかり相談してから選ぶべきです。

募集していなくても、嫌われない範囲で気になる事務所に相談に行くのはいかがでしょうか。
募集していないのだから、おそらくほとんどは雇ってもらえないと思いますが、運良く土地家屋調査士に会えればなんらかヒントはもらえるでしょうし、あなたの社会人としての良識あるアポイントと話しぶりによっては、気に入られることもあるかも知れません。







2020年2月3日月曜日

キャッツ 映画版

私はミュージカルが好きです。
たいていのミュージカル舞台は観ていますし、映画になったものも観ています。
もちろん「キャッツ」も観ています。
私が事務所で残業するときの定番は「オペラ座の怪人(25周年記念公演 in ロンドン)」や「キャッツ(2013)」などの映像をBGVとしてかけっぱなしにすることです。

その「キャッツ」をトム・フーパーが映画にして、しかも評判が悪いとのこと。
まあ観てみましょうと行ってきました。

結論、私には十分楽しめました。





帰ってからどんな理由で評判が悪いかちょっと見てみました。

「ストーリーが分かりにくい」
「ストーリーがない」
「猫メイクのCGが気持ち悪い」
「映画にする意味が分からない」etc.

なんだそんなことですか。

ストーリー云々についてですが、もともとこのミュージカルの原作は、様々な猫の性格や人生(猫生?)を人間になぞらえたエリオットの詩であり、起承転結の分かりやすい物語ではないのです。だから次々と現れる猫の猫生を表現する歌と踊りを楽しむのが「キャッツ」の見どころです。ミュージカルが嫌いなら、この映画はこの点でつらいかも知れません。

猫のCGメイクについては確かに馴染みのあるものではないでしょう。
顔に猫メイクをせずにそのままにして、その他をCGで毛を生やしている姿は、誰も見たことのないものでしょう。
でも舞台の猫の衣装とメイクだって違和感があったはずです。それに慣れただけの話しだと思います。
映画の場合は舞台と違い顔をアップで見せることになるので、このような顔出し設定にしたのでしょう。
私は見始めてすぐに慣れました。少なくても「アバター」を観たときよりも早く違和感がなくなりました。
さらに、猫の行動学の専門家の監修を得て、動きが人間らしくなるとすぐに注意されたとのことで、皆の動きがより猫に見えました。尻尾の動きも自然で良かったですね。

映画化については当然賛否が有るでしょう。
舞台が完成形なのに何故映画が必要かという問いですね。
私はこれにも肯定派です。
他のミュージカルも舞台と映画がどちらも存在するものは多いです。
私は映画の方が好きだということではありません。
自分の好きなものを同様に好きな人がいて、その人なりにもっと良いものにしたいと思ったわけですから、それは良いことでしょう。
選択肢が増えることは否定しなくても良いでしょう。

いつも思うのですが、違和感のあるものを排斥しなくても、選択肢が多い方が楽しいでしょう。
その上で「今回の映画化が失敗だ」と思えば「私は舞台が好き」と言えば良いだけです。
それなら次の映画化を楽しみにしても良いでしょう。
舞台版だって配役も演出も少しずつ変わっているのですし。

今回の映画化に際して、原作に戻ってエリオットの詩から作り直すことも考えられたでしょうが、敢えて既に完成形である舞台を尊重して、それに手を加える選択をしたようです。限られた舞台の演出に映画の自由度を加えるというアプローチでした。
それが成功かというとやはり意見が分かれるでしょう。

少なくても私は楽しめました。
舞台版で熟知している猫の見せ場を「映画ではこう来たか」などと思い、ニヤニヤ(ニャーニャー?)して観ました。
なにしろ、各登場猫にバレエ、ダンス、歌唱、演技の第一人者をキャスティングしているのですから、十分楽しめました。
フランチェスカ・ヘイワードの優雅なバレエが猫に見えて可愛いし、まさかの雌猫設定の長老猫がジョディ・デンチでとても納得だったし、ジェニファー・ハドソンの「メモリー」の歌唱は感動ものだったし、書き始めたらほかにも見どころはいくらでも書けそうです。

本当に楽しかったですよ。
どちらが好きかと言われたら私も舞台版の方だと思いますが、この映画も動画として配信されたら買うと思います。
残業時には、舞台版をメインにして、たまに映画版を流す感じですね。
実は残業時の「オペラ座の怪人」も、たまには映画版(2004年)も流していますし。

猫好きなら、怖いもの見たさでいかがですか。