2020年8月12日水曜日

病気を抱えて土地家屋調査士事務所を運営すること

先日のガイダンスに参加された方の中で、ガイダンス後に聞いたのですが「実は病気を抱えておりまして、今までも土地家屋調査士業をやってきた中で、それが障害になったこともあり、今後も業務上障害になる可能性がある」という悩みを抱えている方がいました。

病気にもよりますが、病気を抱えている方は、大なり小なり業務遂行には影響があるでしょう。しかし、病気を抱えて企業に勤めているよりは、個人事務所を運営している方が融通が利きます。
自分で自分の病気を理解しているのだから、その病気とうまく付き合いながら、業務のスケジュールや段取りを考えていけば良いでしょう。
企業勤めなら、そうはいきません。
我々の仕事は経過評価ではなく、あくまでも結果評価です。
お客様に迷惑をおかけしない範囲で結果を出せば良いのです。そのためにスケジュールを工夫するのなら何の問題もありません。

悩まなくて良いですよ。
自分が健康でも、家族の介護をしながらの人や、育児をしながらの人もいます。
また自分が健康でも、年齢を重ねれば、昔できたことが徐々にできなくなることもあるでしょう。
大なり小なり、誰でも何らかを抱えて事務所運営をしているのです。

自分だけが特殊で、ハンディを背負っていると考える必要はありません。
大きく見れば皆同じです。

時間の調整は365日24時間を使えるのです。
勤務時間が決まっている職業より調整は楽です。

病気による苦手の分野があるのなら、あなたが苦手とする分野を逆に得意とする人と補い合う形で一緒に仕事をするなど、あなたの得意とする分野を今以上に活かす方法を見つけていくという手もあるかも知れません。

病気を抱えているあなたには、むしろ「勤め人ではなく、土地家屋調査士を選んで良かったね」と言ってあげたいと思います。



2020年8月6日木曜日

5年間教わるのを待っているのですか?

先日の名古屋にて開催した「土地家屋調査士事務所開業・運営ガイダンス」ですが、参加された方々のお役に立てたようで、礼状やメールが多数届いています。
新型コロナウィルスの第二波到来と見られる情勢の中での開催ですし、ほとんどの方が他県からの参加者でしたので、開催決定にかなり迷いましたが、結果的にお役に立てて良かったと思います。
また「名古屋の感染者数が急増したので、小さな子供を抱えているから今回は参加を見合わせる」と連絡をいただいた方には、今週夜にリモートで個別ガイダンスをすることになっています。

さて、当日の参加者の中に「試験合格して、最近補助者として実務を勉強し始めて、5年後開業したい」とおっしゃった方がいました。
「どのような計画で5年ですか?」と尋ねると、具体的なプランが有るわけでもないようです。
「測量はできますか?」と尋ねたら「まだトータルステーションに触らせてもらったくらい」とのことでした。
「登記申請はどこまでできますか?」と尋ねたら「建物滅失と地目変更登記はやりました」とのことでした。
その方は良い事務所に勤めています。私も知っている事務所です。
仕事中にトータルステーションに触らせてもらったのも、事務所のためではなくその方のために触らせてもらったのでしょう。

でもそのペースで5年経てば、本当に専門家としての実力がついているのでしょうか。
その方は何故受け身なのでしょうか。
その事務所は土日が休みですか。
その事務所が休みの土日は、その方の勉強は進まないのでしょうか。

休日は事務所の古いトータルステーションなどを借りて練習することはできないのでしょうか。事務所の機械が無理ならレンタルして練習すれば良いのではないでしょうか。
自分で練習もできないレベルであれば、できる人に個人レッスン代を払っても、練習すべきではないでしょうか。

いつもこのブログで書いているように、事務所に勤めるということは、その事務所のために自分の時間を使うということです。給料もらうとはそういうことです。
だから勤務時間中にしっかり教えてもらえるなんて考えは、とても甘いと思います。
一生懸命働いて、先生の時間を捻出して、その余暇で教えてもらうようにすべきです。
それも自分で問題意識を持っていないと、効率的に学ぶことはできません。
長年事務所で働いていれば経験を得られるという考え方も、典型的な年功序列の発想です。
そんな年功序列の世界が嫌でこの世界に来たかったのではないですか。

何故5年なのでしょうか。
それも「修行期間はそんなもの」と考えている程度なら、その人は5年で開業は無理でしょう。
事務所を開業すれば、そこには先生も先輩はいません。
もちろん報酬も全部自分に入りますが、そのために全部自分で考えて、全部自分で責任を持つのです。
たんなる測量や登記申請手続きができるくらいなら補助者でもできます。
あらゆる業務に関する判断が、法的責任に耐えうるレベルでなければなりません。
お客様から指示受けた業務によっては、専門家として別の提案ができなければなりません。
それらは自らが主体的に動いていないと絶対に身につきません。

この方には私の考え方が伝わって、納得できたようです。
ガイダンスの翌日にメールをいただき「日々精進していきます」とのことでした。
もう大丈夫でしょう。
結果的に開業まではやはり5年かかるかも知れません。
しかし、その5年は濃密なものでしょうし、それらを経て開業するのなら、立派な土地家屋調査士になれると思います。

この方に限らず、ガイダンスを受講された方々については、私は今後も応援を続けます。

いらすとやさんに土地家屋調査士の徽章の絵がありました。嬉しいので使います。
                      
 「いらすとや」さんに土地家屋調査士の徽章がありました。ちょっと嬉しいので早速使いました。