2017年11月25日土曜日

土地家屋調査士開業は、生き方の問題でもあります

土地家屋調査士試験の口述試験合格発表待ちの方からお便りをいただきました。
抜粋したものを、個人を特定できそうな部分を変更して紹介します。

「自分は生涯現役で働くぞと考え、・・・
独立開業出来る国家資格を3つ取得しようと取り組み、
なんとか宅建士、行政書士、土地家屋調査士と3つ取得が出来ました。
・・・
ネットで検索すると土地家屋調査士のネガティブな情報が溢れる中、
先生の調査士に関する前向きな情報は僕が勉強続ける糧でした。
自分には業務経験も周りに調査士もおりません。
勉強を進める中、土地家屋調査士になりたいという思いが強くなりました。
合格後すぐに開業と考えたいところですが、小さな子供もおり、若い頃なら出来たかもしれませんが、情けなく思うのですが、すぐに仕事を辞めて補助者に転職という勇気がありません。
そのため、これから1年間出来る限り様々な人の話を聞いて独立の可否や独立の時期などを判断していこうと思います。」


口述試験の発表を待っている状況とのこと。とりあえず問題ないでしょう。
サラリーマンを続けながら、試験勉強は大変だったかも知れませんね。
まもなく報われますね。

「独立開業できる資格と思うならなぜ3つ必要なのか」という話は、経営ガイダンスで別にお話ししますが、ここでは「土地家屋調査士1つだけで十分独立開業できます」と答えておきます。

ただ開業をどうするか、確かに大問題ですね。
おっしゃるように「出来る限り様々な人の話を聞く」ことは大切です。
ただし、独立してある程度成功していると思える人の話を聞いてください。
すべてのビジネスで言えることですが、ぼやいている人の話から学ぶことはありません。
よく聞くぼやきで「土地家屋調査士は他の業種の下請け」的なニュアンスは、申し訳ないけれど、その人が下請け程度の仕事しかできない視野と実力だからだと思います。
かわいそうに、その人の学んだ事務所がそのような昭和モデルの事務所だったのかもしれませんね。これも詳しくはガイダンスで説明します。

「子供さんがいるので、転職という勇気が無い」とのこと。
これも、よく理解できます。
この件については、個人的な要素が多いので、一般論では答えられません。
やはり開業ガイダンスで直接お目にかかった際に、様々なお話をしますので、その中からご自分の方法を選択してください。

一つ言えることは、いつも私が書いているように、プロとして勉強をし続ける意思があるのなら、同じ年齢の平均サラリーマンの年収は確保できると思います。(退職金が無いけど定年も無いですが)
逆に、資格試験合格程度で勉強をやめて日々の業務だけをこなすだけなら、事務所の先行きは難しいかも知れません。

ここまでは想像の範囲だと思います。
しかし、実は土地家屋調査士の開業の一番の問題は、年収の問題ではなく、生き方の問題が大きいと思っています。
勤め人と自営者の違いが、とても大きいようです。

収入の安定は、難しいです。
その業務上の責任も、訴えられたときに自分が被告席に立つという直接的な責任になります。
自由に休めるかといえば、むしろ休日も夜も少なくなるでしょう。
比較的楽に儲けられる仕事を探しているのなら、お勧めはしません。

では、なぜ鈴木は土地家屋調査士を楽しそうにやっているのでしょうか。
実際楽しいからです。

全部自分で決済する業務です。
仕事の段取りを自分で決めるのですから、苦痛はありません。
外業だけの仕事ではなく、内業だけの仕事でもなく、理系も文系もどちらも勉強するので一生刺激になります。

勤務時間的にはブラック企業と同じですが、その時間割は自分で決めたのですから、ストレスはありません。(ブラック企業だと訴える相手もいませんし・・・)
お客様やその関係者などとのストレスが全く無いとは言いませんが、そこは対外的なものですから、考え方次第です。
少なくても、内部的にはストレスになる理不尽な上司や足を引っ張る後輩もいません。

たまに、2年に1度有るか無いかですが、地権者に「先生のお陰でこれからゆっくり寝ることができます」と涙ながらに言われるとことがあります。
これだけで、この職業を選んで良かったと思います。

とにかく個人業が合うか合わないかは個人差があります。
完全にその人の「生き方」の問題になるはずです。
私は楽しいです。満足しています。
しかし、私は皆さんとは性格も違います。
収入の問題よりもこの点に焦点を当てて考えてほしいと思います。


「世間が休日にもかかわらず、勤労できることに感謝する日」
勤労感謝の日にFacebookに書いたつぶやきです。
本心です。
早く一人前になりたかった新人のころから変わっていません。
自分がなりたかった資格者として、やりたかった専門業務を、休日でもやって良いのですから。