2016年4月29日金曜日

気分転換はすべきですが、気は抜かないでください

本日15時09分、大分県由布市で最大震度5強の地震が起きました。
一度だけの地震なら問題なくても、何度も余震を繰り返すことにより、地盤や建物の骨格が次第に緩んできます。
これだけ大きな余震が起きることが、とても心配です。

私事ですが、2011年3月11日の東日本大震災の翌日は、大分で研修会の講師をする約束でした。
被災した11日の段階では、被災地の私達は電気もなく、全世界の人が見ている津波の映像は見ることができませんでした。ですから私は被災の規模を把握できていませんでした。
「明日どうすれば大分に行くことができるか」それを余震の続く暗い中で考えていました。
研修会の講師が行かなければ、大分会の研修会に穴を空けてしまいます。「飛行機が飛ばなければ新幹線を乗り継いでも行かなければならない」と思っておりました。
そんな時に途切れ途切れに大分会の役員さんと連絡が取れて、「明日は無理だから来なくても大丈夫」とのお話をいただきました。
私は、まだ状況が掴めずに「研修会に穴を空ける訳にはいかない。なんとしても行きます」と伝えたら、逆にその大分の役員さんから宮城がどれだけの被災をしているかを教えてもらいました。
そこで、やっと理解できて、講師に行くことができないお詫びをして諦めました。
飛行機が飛ぶようになって、早速大分にお詫びの研修会講師に伺ったのが5か月後の8月7日でした。
私の東日本大震災と大分会の研修会はセットで一生記憶されるものです。

その大分で大きな余震が起きました。
大分にはたくさんの友人がいます。

私達も5年前の3月11日に震災を経験して、それから復旧を始めて1ヶ月を迎えようとする4月7日にまた大きな地震が来て、それがトドメになった建物や擁壁もありました。
あの日は、再度停電や一部断水を経験することになり、「またか」という精神的にもとても辛い思いをしました。

大分でも熊本でも、被災地の皆さんは、肉体的はもちろん精神的にもとても辛い思いをしているでしょう。東日本大震災で長い間の余震を経験している私も想像はできるつもりです。
辛いでしょうが、もう少し我慢して、まだまだ注意をしてください。
気分転換はすべきですが、気は抜かないでください。
公私ともに復旧のために動いている方は、不安定な場所や被災建物の中にいるときや、屋根やハシゴに登るときにも、余震の可能性も頭に入れておいてください。

心配しています。
応援しています。










2016年4月26日火曜日

お金、時間、知恵、心、できることを、できるときに

熊本地震の被災者に対して全国が動いています。
東北も5年前にお世話になった恩返しも含み、早めに動き始めています。
まもなくゴールデンウィークに入りますので、ボランティアをはじめとする支援者がまたたくさん熊本に入るでしょう。

その反面、様々な事情で動くことができずに、後ろめたく感じている人はいませんか。
「私はまだ何もしていない」という強迫観念に襲われていませんか。
今、無理はしなくて良いのです。
支援は長いスパンで必要なのです。
これは5年経った東日本大震災を見ていただければ明白なことです。
だから、各々が支援できる時期に支援できる方法で考えれば良いのです。

このある意味の強迫観念は、東日本大震災の際に支援を受けている側の私達にも伝わりました。
「俺はまだ義援金を送っていない」
「俺は被災地に支援物資を運んでいない」などなど。
無理はしなくて良いのです。

「お金」でも、「時間」でも、「知恵」でも、「心」でも、各々が「できること」を「できるとき」に提供すれば良いと思います。

発災後11日めの2011年3月23日のブログにこんなことを書きました。
もう一度掲載させてください。


「あなたの出番」

大地震と津波に遭って避難所で頑張っている人、お疲れ様です。
その方々を現地でサポートしているボランティアの方々、お疲れ様です。
ボランティアまで物資を届けてくれる全国の皆さん、お疲れ様です。
物資や運搬のために道を作ったり、空から運んでくれる自衛隊や米軍の皆さん、お疲れ様です。
原発事故に命をかけて対処してくれている消防、警察、自衛隊、民間の皆さん、お疲れ様です。

事務所も設備も流されて命からがら避難した会員、お疲れ様です。
事務所が床上浸水でほぼ使えなくなった会員、お疲れ様です。
現地で会員の安否を捜したり、水や食料を届けた支部会員、お疲れ様です。
自分の事務所や自宅の被害を放り出して仲間のために動いた対策本部の皆さん、お疲れ様です。
その対策本部に温かい支援をしてくれた全国の土地家屋調査士の皆さん、お疲れ様です。

誰も楽している人はいません。
皆、頑張ってます。

金があって楽してて暇がある人が、サポートしているのではありません。
宮城県の土地家屋調査士も、大なり小なり全員被害があります。
それでも自分より被害のある人のために動いている人たちが増えてきました。

自分の足で立ち上がれる人から、少しずつ動きましょう。

また、対策本部やボランティアに乗り遅れたから、今更動きにくいと言う人。
気にしないでください。
試合はまだ1回の表が終わったところ。
これから長い戦いがあります。
代打の切り札やクローザーが今から出る必要もありません。
物資を運ぶだけがサポートではありません。

あなたの出番は有ります。




2016年4月24日日曜日

条件付き支援物資ではない

先日、熊本の土地家屋調査士からこんなお話をお聞きしました。

「全国の土地家屋調査士からいただいた支援物資ですが、目の前にオムツを捜している人がいたので、一部を渡しました。『熊本の土地家屋調査士の皆さんで』と言われたので、土地家屋調査士以外に渡して本当に良かったのか、迷いました。」

気持ちは分かります。
しかし、土地家屋調査士の団体から土地家屋調査士の団体に送られた物資であっても気にしないでください。
熊本で困っている人のために全国の人は支援物資を送っているはずです。

支援する方は何気ない会話でも、支援をいただく方は条件と捉えることが有ります。もらった方は「何としても近所の土地家屋調査士に配らなければならない。」と考えます。

日本人は真面目なのです。
そして被災地はナーバスなのです。
東日本大震災のときも、このような会話はありました。

当時、私たち宮城県土地家屋調査士会の対策本部も少し迷った上で、「全国からの支援物資の処分方法は当方で判断させてもらう」と決めて自由に動くことにしました。
あのときはガソリンがありませんでした。
車も自由に使えないときに、「どうすれば仲間に配ることができるのか」と悩んで、それに加えて「配らないと、自分たちもその物資に手を付けられない。」と考えてしまったかもしれません。

だから、支援物資を渡すときは、条件が含まれていると誤解されないように配慮しましょう。「ご近所の皆さんで」と言うのもやめておきましょう。
そして、支援物資を渡したら、その方がどう使おうと一切関知しないことが原則です。

そして、もらった方は、自分の判断で処理してください。
実際に被災地では、その時その時で、必要な物資と必要な人が変わるのですから。








2016年4月21日木曜日

まけないモン


世界中のたくさんの友だちが

おうえんしてくれているから

ボクたち


まけないモン !



2016年4月20日水曜日

熊本救援でボランティアを考える前に

熊本地震についてお亡くなりになった方々には謹んでご冥福をお祈りします。
また、今被災の中ご苦労されている方々には、できる限りの支援をしたいと思っております。

全国の仲間も心配して動き出しています。
困ったときに助け合う民族です。
日本人に生まれて良かったと思います。

支援に行く際には、頭をクールにしてから動きましょう。
個人個人が熱に浮かされたように行動すると、被災地にとって、かえって迷惑になることがあります。
また、当然に食べ物も飲み物も宿泊も、すべて自己責任です。
被災地で調達はルール違反ですから。

さて、ここまでは支援物資を次々に送る段階でした。
そろそろ支援物資が被災地に溜まってくる時期でしょう。
その支援物資を被災地隅々に届けるための人手が必要な時期になっているでしょうね。

おそらく避難所によって支援の偏りがあるでしょう。
でも、東日本大震災のときよりも電話が通じています。
公的な避難所ではない人達も、積極的にヘルプを発信できます。
そのヘルプが届けば、支援者達が放って置くことは無いでしょう。
隅々まで行き渡るまで、もう少しの我慢です。

また、近くの小売店がそろそろ開くと思います。
そうなれば、私達支援者は物資よりも義援金に切り替える時期なのでしょう。

そして、そのまた次の段階として、復旧のためのボランティア活動の時期に移ると思います。
ゴールデンウィークが間近なので、これからボランティアの皆さんが次々に被災地に入ると思われます。
人海戦術でないと解決できないことが多いですので、ボランティアはありがたいものです。

しかし、一部のボランティアは阪神淡路大震災の頃から問題も起こしてきました。
ボランティアに行く方も受け入れる方も気をつけるべきことがあります。

以前ブログで紹介した本ですが、ボランティアを考える前に是非読んで欲しいと思います。

2012年11月1日木曜日ブログ
奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」


がんばろう! くまもと



2016年4月19日火曜日

支援物資の送り方について

熊本地震では、まだまだ飲食物が不足している避難所もあるようです。
特に公認されていない避難所にいる方には、なかなか届かないでしょう。
避難所による支援物資の偏りは、東日本大震災でも見られたことです。

今回の震災と5年前の東日本と比べて、携帯電話やネットがかなり繋がるようです。これが救いです。できるだけ情報共有して、偏りを減らせるようにしたいものです。

皆でできるだけ助けたいと思います。

ただし、5年前の東日本大震災で、支援物資を受け取り、仕分けして、避難所等に届けていた立場として、少しだけお伝えしたいと思います。

1つ目は、思い込みで送るよりも、ライフラインなどの復旧予定を調べたり、被災地のニーズをお聞きして、何をいつ送るかを決めて欲しいということです。

飲み物や食べ物は緊急なのです。ちょっと遅れただけで不要になることが多いです。
前回の東日本大震災では、水道が出てからペットボトルが届いたりしました。
地元で一部でも水道が出れば、そこから水を運べば良いだけですから、遠方から送る必要はありません。マンパワーの問題もあるでしょうが。
今回は東日本ほど復旧に時間がかからないように見えます。
また小売店も開き始めるようです。
本当にそうであれば、物よりも義援金の方が良いかも知れません。

2つ目は、荷造りに気配りをして欲しいということです。

これは、あちこちでも言われていることですから、ご承知とは思います。
ちょっとした気配りで、被災地で受け取る人の負担をかなり減らせるのです。
受け取る側の立場で本当に思ったことです。

具体的には、段ボール箱の外側に中の物を具体的に書いて欲しいのです。
「ペットボトル500ml 40本」のように具体的に書いて欲しいのです。それも
段ボールは積み重ねて管理することになるので、一箇所ではなくできるだけ箱の各面に書いてください。上面にだけ書いたとして、その箱を積み重ねると見えなくなりますね。
消費期限が短い物は厳禁ですが、それでも期限のある物を送るときには、箱にその旨も書きましょう。
箱を複数送るときには、その一覧表も付けると、被災地側はチェックが楽でしょう。

また、1つの段ボール箱には同じ種類の物を入れて欲しいのです。
個人から個人に送るなら喜ばれるでしょう。
しかし、不特定多数の避難所に送る場合はタブーなのです。
受け取った側は、たくさんの支援物資を避難所に配りやすくするために種類ごとに整理します。つまり「水はこちら」「カップ麺はこちら」などと整理しますので、1つに複数の種類の物が入っている箱は、結局その場で出して仕分けすることになります。
これが結構手間がかかります。

もう一つ、段ボールの箱の大きさはできる範囲で統一して欲しいのです。
やはり、重ねて管理するからできるだけ同じ大きさの段ボール箱が嬉しいです。
もちろんできる範囲で良いですが。

受け取る側のわがままではないのです。
被災地には、時間も人手も不足しています。
支援する側のちょっとした工夫で、被災地の手間も減らしたいものです。








2016年4月18日月曜日

サポーターにヒーローはいらない

東日本大震災を経験した私達にとって、熊本や大分の皆さんのご苦労は分かるつもりです。まもなくライフラインが通じるはずですから、もう少しだけ辛抱をお願いいたします。

震災の真っ只中でも、被災地の公的な立場の有る方たちは、自分のことだけでなく皆さんのためにすぐにでも動きたいと思っているのでしょうね。
でも、無理はしないでください。
震災から復興までは長丁場です。
今すぐ無理しなくてもやることはいくらでも出てきます。
まずは、自分や家族の安全を優先して、それから動いてください。
皆、抱えているものが違います。
だから、他の人と同じことができなくても、それは当たり前のことです。

私を含む他の地域の者は、九州の被災地の支援が一時的な支援ではなく長い支援になると理解しましょう。
だから支援する方も無理をしてはいけません。長続きしないからです。
こちらも、他の人と同じことができなくても、それは当たり前のことです。
できることを着実に、そして継続的にやっていきましょう。

私達はサポーターです。
サポーターは長い年月を通して継続してチームを応援をするのです。
どう応援すればチームや選手が動きやすいかを研究し、皆で相談するのです。
そして、サポーターは集団で応援するのです。
個人で勝手に大声を出すよりも、声を合わせて応援することの方が効果的です。
主役はチームです。チームのための応援です。
皆で動きましょう。
サポーターに個人的ヒーローは不要ですから。









2016年4月17日日曜日

支援物資搬送について

熊本地震についてお亡くなりになった方々には謹んでご冥福をお祈りします。
また、今被災の中ご苦労されている方々には、支援と応援をしていきたいと思います。

とても大変な状況ですね。
5年前を思い出しております。

まず何ができるかですが、一番大切なことは、
必要な人に、必要な量を、できるだけ早く送ることです。

必要な人と必要な量は毎日変わります。
東北の時は最初に大量の衛生用品が届いたりしました。
水道が通ってから水が大量に届いたりもしました。
まずは「どこで、何を、どの程度」必要なのか具体的に把握すべきです。
ライフラインの復旧予定や流通の回復予定を確認することも必要でしょう。

どちらにしても物を送る手段も難しいのです。
今現在、宅配便は熊本までの荷物を受け付けていないようです。
前回の東日本大震災の時も、宅配便は東北宛の荷物を取り扱っていませんでした。
我々の土地家屋調査士業界では、全国の仲間がリレー方式で物資を運んでいただきましたが、それでも最後は生命をかけて頑張って運んでくれた人のおかげで、被災地東北に物資が届きました。
今回、あの再現はとても難しいことだと思います。

また、当時被災地の道路は常に渋滞でした。
本来の生命維持のための車や復興のための車が渋滞に巻き込まれることは本末転倒です。
各自が勝手に動くと、この問題も生じます。
被災地の道路はなるべく空いていることが理想です。

被災地では物が買えないとして、それでは被災地からどこまで離れれば物が流通しているのか、その土地から被災地までは交通が可能なのか、そこがポイントです。
被災地に一番近い最前線の仲間まで送金した方がスピーディーであり、運送料などのロスも減るかも知れません。
その仲間に地元で物資の調達をお願いした方が早いし、車の台数も減らせると思います。
その人が物を買う手段があって届ける手段と仲間がいるのなら、北海道や東北から物を送るよりも、その人に送金してお願いした方がはるかに効率が良いでしょう。

報道などを調べていると、意外に早く流通も回復するかも知れません。
そのときは物よりも義捐金の方が良いでしょう。

5年前と比べてネットがかなり使えるようです。
情報交換して組織的にスピーディに動きたいと思います。













2016年4月15日金曜日

熊本で地震!!

本日(14日)21時26分ごろ、熊本県で最大震度7の激しい揺れの地震がありました。
大きな被害があるようですが、夜なので被害全体を把握できるのは夜が明けてからになるでしょう。

倒壊した建物があるようです。
火災も起きているようです。
道路も陥没してるところもあるようです。
新幹線が脱線したようです。
建物の下敷きになった方もいるようです。
怪我をなさった方も多いようです。

まずは自分の安全を確保してください。
暗い夜の時間ですから、やむを得ない場合を除いて、まずは出て歩かない方が良いでしょう。

そしておそらく1週間以上続くと思われる余震にも備えてください。
これだけの震度ですから、地中のダメージが大きいでしょう。
簡単には収まらないでしょうし、他の地域に歪みの影響が現れるかも知れません。

とても心配です。
先程も(15日0時過ぎ)も震度6強の大きな余震がありました。

今大丈夫でも、これから被害が増える可能性があります。
次の余震がたとえ先程の地震より小さくても、先程の地震で緩んだ地盤や建物の構造が、次の余震で崩れる可能性もあります。

今ライフラインが無事なところも、これから切れることもあるかもしれません。
今からでも風呂に水は溜めておきましょう。
今電気が通じているなら携帯などは十分な充電をしておきましょう。

そして何か困ったら、遠慮なくヘルプを発信してください。
皆さんの無事を祈ります。









2016年4月11日月曜日

一番難しかった研修会

私は過去20年程、様々なリクエストに応じて、様々な科目の講師をしてきました。
講師の依頼については、日程の重複以外では断ったことはありません。
リクエストいただく内容なら、大抵の講義はできると思っていますし、何時間でもネタは大丈夫という自信もありました。

しかし、今年の1月に担当した研修は初めての試みであり、とても難しいものでした。
日本司法書士会連合会のe-ラーニング研修で「区画整理事業に伴う登記実務」というテーマをいただきました。
区画整理法の研修については、過去、各地の土地家屋調査士会でも司法書士会でも所轄官庁でも講師を担当させていただいておりますので、今回も受講者に合わせてフォーカスを変える必要がありますが、まあ研修の内容には問題がないと思って受託しました。

難しかったのは研修の方法でした。
今回の研修はe-ラーニングによるものです。
全国の司法書士の皆さんがネットで研修するものです。
つまり、講師が事前にカメラに向かって講義するものを収録する方法で行います。
講師の前にはカメラ以外誰もいないし、スライドもアニメーション効果は禁止であり、事前に提出した読み原稿を読むだけでアドリブは禁止のものでした。

この研修方法が、私にはとても難しく辛いものでした。
そして、この制限の中で講師をしてみて初めて自分の研修スタイルに気がつきました。
私は、研修会では常にライブ感を重視しています。
以前にも書いたように研修は受講者の「理解」だけではダメで、その先の「共感」まで伝えないと効果がないと思っています。

だから、研修会講師を受託すると、その研修会開催地域の実情や考え方を調べます。
受講者に「知識」を渡して「理解」していただくだけなら、そこまでしなくても良いでしょう。しかし「共感」まで求めるなら、実情や考え方などを調べるべきです。
その上で、半月かけてスライドを練っていきます。
その段階で95%程度まで仕上げます。
残りの5%は、研修会直前の主催者との打合せや会話でスライドを入れ替えて埋めます。
そのようにして100%まで仕上げたスライドを持って研修会に臨みます。
読み原稿を書いたことはありません。
予めの原稿は「生きた言葉」にならないからです。会場の反応を見ながら、説明手順を変えたり比喩を加えたりしながら、自分の言葉で話すから伝わるのです。
当日のライブ感を加えて120%の研修を目指しています。

ところが、今回の研修収録は、そんないつもの方法とまったく違った条件だったので、とても難しかったです。
もちろん、今回の研修内容について責任を持たなければならない日本司法書士会連合会としては、当然の選択だと思います。まったく正しい選択です。
しかし、受講者の反応が見えないのに、1ヶ月以上前に原稿を固めて、当日のアドリブは禁止という研修方法は、講師としては(少なくても私にとっては)とても辛いものでした。

普段は身振り手振りで講師をしているので、今回は手をどこに置くか困ったり、アナウンスの訓練も受けていない私がどのような抑揚でお話しすれば良いのか見当がつかず、ただただ原稿を読むという方法でどこまで研修効果があるのか、不安なまま終わりました。

今まで放送大学などの収録講義をテレビで受講して、講師にもっと表現力が無いのかと失礼なことを考えながら見ていたことを申し訳なく思っています。
事前収録による講義は、とても難しいことだと理解しました。

しかし、たくさんの受講者に対して短期で研修するためには、e−ラーニングはとても重要な方法ですし、日本土地家屋調査士会連合会でも同様に開催しています。
このような制限の中でも「共感」を得られるような原稿の内容と表現力の研究も、今後の講師には必要なのだと実感しました。
私にも新たな課題を与えられたような気がします。

司法書士の方は機会があったらご覧ください。
内容は役に立つと思います。
そこでは、普段と違う鈴木が居心地が悪そうに講義しています。












2016年4月6日水曜日

新人が無料相談業務を担当できないこと

土地家屋調査士を開業したいAさんから相談が来ました。Aさんには同情すべき事情もありました。いくつかの質問や問題に混じって、以下の問題を投げかけられました。


Aさんの相談趣旨

各土地家屋調査士会で定期的に開催している無料登記相談事業には、新人土地家屋調査士は担当させてもらえないという内規があるようです。私が入会しようとしている会に聞いてみたら、入会登録後5年以上でないと、無料登記相談は担当させてもらえないとのこと。
私のように入会直後に業務受注を見込めない者は、受注機会を増やす相談業務に是非参加したいのです。この新人は参加できないという内規が、入会登録後1年ほどで退会休廃業する者を増やす原因になっていないか、この点を見直して下さると嬉しいです。

私の回答

私は見直すことのできる立場ではありませんが、私の考えをお伝えいたします。
Aさんは、無料登記相談事業について考え違いしているように思えます。

無料相談事業は、そもそも会員の為の受託営業の場ではありません。
土地家屋調査士会が費用を出して、住民の皆様から無料で相談を受ける公益事業です。
宮城会では、担当者が相談者に名刺を出すことも原則禁止です。
何故なら、自分が受託したいために回答の趣旨の方向性が違ってくることを避けるためです。
もし営業機会と考えるなら、相談担当者が日当をもらうことがおかしいのであり、むしろ営業費を支払うべきもののはずです。

もう一つ、「入会5年以上の会員」という縛りは全国統一の決まりではありません。
全国で、概ねそのような内規が多いだけです。
だから、法務大臣や日調連に訴えても解決はしません。

しかし、このような内規があるのは、私は当然だと思っています。
何故なら、新人は試験で学んだ登記手続の部分しか知らないことが多いです。
相談は、単純な登記手続よりも、裁判ギリギリの相談など複雑なものや深刻なものが多いのです。私道の問題や相続の問題、境界紛争などなど試験に出ない範囲の相談がとても多いのです。
特に、被災地宮城では復興に直結する相談も多いです。それを試験合格程度の中途半端なレベルで答えられて、相談者の生活を迷わせたり、土地家屋調査士全体の信頼を失ったりするわけにはいかないのです。
だから、全国でもそのような内規が多いのでしょう。
私の感想では、入会5年でもまだ危ないと思っています。

それから、Aさんのような境遇でも、毎日頑張って土地家屋調査士業で生活できるようになっている人は多いです。
今は、土地家屋調査士会に文句を言っている場合ではないと思います。
また、地元の公嘱協会でも、法14条地図作成などの仕事があるでしょう。
もちろん、実力がないと公嘱協会でも仕事を配分しにくいかもしれませんが。

まずは力を付けましょう。
力を付ければ、必ず仕事は有ります。
来年の開業ガイダンスにご参加ください。
力の付け方を教えます。

ただ、考え違いをしないでくださいね。
私は、私の睡眠時間を削って、自腹を切って、後輩の為に動いているのです。
「教わるのが当たり前、悪いのは世間の仕組み」と考えて、努力をしていない人のために動く気はありません。
お目にかかれることを楽しみにしております。











2016年4月4日月曜日

文房具図鑑 山本けんたろう

実際に手にとって感動しています。

山本けんたろう(山本健太郎)君の「文房具図鑑」です。
昨年から報道等で見ていたので、3月25日の発売を楽しみに待っていました。



この本は、小学6年生のけんたろう君が1年かけて描いた100ページを超える文房具の図鑑です。最初から出版を意識していたものではなく、あくまでも夏休みの自由研究として学校に提出したものでした。
それがあまりにも完成度が高いので、文具マニアの中で評判になり、ついには書籍化されたのです。

ネットでその完成度は知っていたのですが、それでも原寸の印刷で全ページを見ていると、感心どころか感動しております。

専門家である大人が書いている類書(絵ではなくほぼ写真です)はたくさん見ていますが、この本を見ると特別感動します。
何故感動するかと言うと、損得無い文房具への愛が溢れているからです。

少し見てみましょう。


すべてのページが手描きです。
定規を使わない絵なので、とても味があります。
直線が歪んでいるなんて気にならないほど、ほぼ原寸で正確に描いてあります。
大好きだから一生懸命に観察して描いたのでしょう。
あえて定規を使わないで味を出したいという大人のイラストレーターのテクニックではなく、おそらくけんたろう君が正確に描こうと思うと定規が邪魔になるのかもしれません。

各文具への感想も、けんたろう君の独自の感想です。
気持ち良いほど自分の気持ちを書いています。
しかも、それが文具マニアから見ても、とても的を射ています。


将来漫画家になる予定のけんたろう君ですから、オリジナルの漫画キャラクターもちりばめられています。


小学生の図鑑らしく、中にはクイズのページがあります。
問題のページも答えのページも、イラストがいっぱいで楽しいものになっています。
こんなページが100ページもあるのです。


目次が最後の「あとがき」の前のページにありました。

大きく「もくジ」って書いていて、最後の「ジ」に矢印で「なんでカタカナ?(まちがえた)」って書いています。とっても、いいなぁ。

そして、そのあとの記載です。
「はい!ということでなぜか本の終わりでもくじです.なぜ最初のページにのせなかったかというと もくじのそんざいをわすれてたから!ということで今ここでもくじをかかせてもらう.」と書いています。

という目次を見てください。
図鑑としてまとまっているでしょう。

当初、文具マニアの間で話題になったのが、書籍化の際の価格です。
なんといってもけんたろう君の図鑑の裏には、「定価【本体3兆円】+税」と書いていましたので。消費税だけで2400億円ですか。



書籍の帯に書いてあった文字「著者希望価格から、驚きのプライスダウン!」「3兆円→1,500円」「約99.99999995%オフ」
良かったです。これならおじさんも買うことができます。

実は、この本の書籍化では、単純にそのまま印刷するのだろうと思っていました。
変に手を加えると、オリジナルの良さを損なうと思ったからです。
それは「じめんのボタンのナゾ」でも経験済みです。

しかし、この編集は見事でした。

図鑑と言うからには誤りがあってはいけません。
誤りの部分の記述は、やはりけんたろう君の手書きで直してあります。

また、上から2枚目の写真を見てください。
少し黄色がかったノートの色をできるだけそのままに印刷し、その下の緑がかった欄に図鑑の文具のメーカーの感想を集めたのです。
その感想が、商品解説補足だけでなくけんたろう君への優しさの言葉が溢れるものです。

さらに、巻末には文具仲間や家族、親戚、学校の友だちなどのコメントも載せられています。
これらをひとつずつ集めるのには手間がかかったでしょう。
この編集にも愛が溢れています。

文具好きな方は当然として、それほど文具好きでない人も、この本を見ると様々な溢れる愛に触れて嬉しくなると思います。