2016年4月6日水曜日

新人が無料相談業務を担当できないこと

土地家屋調査士を開業したいAさんから相談が来ました。Aさんには同情すべき事情もありました。いくつかの質問や問題に混じって、以下の問題を投げかけられました。


Aさんの相談趣旨

各土地家屋調査士会で定期的に開催している無料登記相談事業には、新人土地家屋調査士は担当させてもらえないという内規があるようです。私が入会しようとしている会に聞いてみたら、入会登録後5年以上でないと、無料登記相談は担当させてもらえないとのこと。
私のように入会直後に業務受注を見込めない者は、受注機会を増やす相談業務に是非参加したいのです。この新人は参加できないという内規が、入会登録後1年ほどで退会休廃業する者を増やす原因になっていないか、この点を見直して下さると嬉しいです。

私の回答

私は見直すことのできる立場ではありませんが、私の考えをお伝えいたします。
Aさんは、無料登記相談事業について考え違いしているように思えます。

無料相談事業は、そもそも会員の為の受託営業の場ではありません。
土地家屋調査士会が費用を出して、住民の皆様から無料で相談を受ける公益事業です。
宮城会では、担当者が相談者に名刺を出すことも原則禁止です。
何故なら、自分が受託したいために回答の趣旨の方向性が違ってくることを避けるためです。
もし営業機会と考えるなら、相談担当者が日当をもらうことがおかしいのであり、むしろ営業費を支払うべきもののはずです。

もう一つ、「入会5年以上の会員」という縛りは全国統一の決まりではありません。
全国で、概ねそのような内規が多いだけです。
だから、法務大臣や日調連に訴えても解決はしません。

しかし、このような内規があるのは、私は当然だと思っています。
何故なら、新人は試験で学んだ登記手続の部分しか知らないことが多いです。
相談は、単純な登記手続よりも、裁判ギリギリの相談など複雑なものや深刻なものが多いのです。私道の問題や相続の問題、境界紛争などなど試験に出ない範囲の相談がとても多いのです。
特に、被災地宮城では復興に直結する相談も多いです。それを試験合格程度の中途半端なレベルで答えられて、相談者の生活を迷わせたり、土地家屋調査士全体の信頼を失ったりするわけにはいかないのです。
だから、全国でもそのような内規が多いのでしょう。
私の感想では、入会5年でもまだ危ないと思っています。

それから、Aさんのような境遇でも、毎日頑張って土地家屋調査士業で生活できるようになっている人は多いです。
今は、土地家屋調査士会に文句を言っている場合ではないと思います。
また、地元の公嘱協会でも、法14条地図作成などの仕事があるでしょう。
もちろん、実力がないと公嘱協会でも仕事を配分しにくいかもしれませんが。

まずは力を付けましょう。
力を付ければ、必ず仕事は有ります。
来年の開業ガイダンスにご参加ください。
力の付け方を教えます。

ただ、考え違いをしないでくださいね。
私は、私の睡眠時間を削って、自腹を切って、後輩の為に動いているのです。
「教わるのが当たり前、悪いのは世間の仕組み」と考えて、努力をしていない人のために動く気はありません。
お目にかかれることを楽しみにしております。