山本けんたろう(山本健太郎)君の「文房具図鑑」です。
昨年から報道等で見ていたので、3月25日の発売を楽しみに待っていました。
この本は、小学6年生のけんたろう君が1年かけて描いた100ページを超える文房具の図鑑です。最初から出版を意識していたものではなく、あくまでも夏休みの自由研究として学校に提出したものでした。
それがあまりにも完成度が高いので、文具マニアの中で評判になり、ついには書籍化されたのです。
ネットでその完成度は知っていたのですが、それでも原寸の印刷で全ページを見ていると、感心どころか感動しております。
専門家である大人が書いている類書(絵ではなくほぼ写真です)はたくさん見ていますが、この本を見ると特別感動します。
何故感動するかと言うと、損得無い文房具への愛が溢れているからです。
少し見てみましょう。
すべてのページが手描きです。
定規を使わない絵なので、とても味があります。
直線が歪んでいるなんて気にならないほど、ほぼ原寸で正確に描いてあります。
大好きだから一生懸命に観察して描いたのでしょう。
あえて定規を使わないで味を出したいという大人のイラストレーターのテクニックではなく、おそらくけんたろう君が正確に描こうと思うと定規が邪魔になるのかもしれません。
各文具への感想も、けんたろう君の独自の感想です。
気持ち良いほど自分の気持ちを書いています。
しかも、それが文具マニアから見ても、とても的を射ています。
将来漫画家になる予定のけんたろう君ですから、オリジナルの漫画キャラクターもちりばめられています。
小学生の図鑑らしく、中にはクイズのページがあります。
問題のページも答えのページも、イラストがいっぱいで楽しいものになっています。
こんなページが100ページもあるのです。
目次が最後の「あとがき」の前のページにありました。
大きく「もくジ」って書いていて、最後の「ジ」に矢印で「なんでカタカナ?(まちがえた)」って書いています。とっても、いいなぁ。
そして、そのあとの記載です。
「はい!ということでなぜか本の終わりでもくじです.なぜ最初のページにのせなかったかというと もくじのそんざいをわすれてたから!ということで今ここでもくじをかかせてもらう.」と書いています。
という目次を見てください。
図鑑としてまとまっているでしょう。
当初、文具マニアの間で話題になったのが、書籍化の際の価格です。
なんといってもけんたろう君の図鑑の裏には、「定価【本体3兆円】+税」と書いていましたので。消費税だけで2400億円ですか。
書籍の帯に書いてあった文字「著者希望価格から、驚きのプライスダウン!」「3兆円→1,500円」「約99.99999995%オフ」
良かったです。これならおじさんも買うことができます。
実は、この本の書籍化では、単純にそのまま印刷するのだろうと思っていました。
変に手を加えると、オリジナルの良さを損なうと思ったからです。
それは「じめんのボタンのナゾ」でも経験済みです。
しかし、この編集は見事でした。
図鑑と言うからには誤りがあってはいけません。
誤りの部分の記述は、やはりけんたろう君の手書きで直してあります。
また、上から2枚目の写真を見てください。
少し黄色がかったノートの色をできるだけそのままに印刷し、その下の緑がかった欄に図鑑の文具のメーカーの感想を集めたのです。
その感想が、商品解説補足だけでなくけんたろう君への優しさの言葉が溢れるものです。
さらに、巻末には文具仲間や家族、親戚、学校の友だちなどのコメントも載せられています。
これらをひとつずつ集めるのには手間がかかったでしょう。
この編集にも愛が溢れています。
文具好きな方は当然として、それほど文具好きでない人も、この本を見ると様々な溢れる愛に触れて嬉しくなると思います。