2021年2月25日木曜日

区画整理に関する宿題

 明日、岩手県土地家屋調査士会で研修会の講師をさせていただきます。

新型コロナウィルスにより研修会の開催が難しい中、岩手会も会場とオンラインと併用して研修会を開催するようです。岩手会の工夫とやる気に敬意を表します。

今回のテーマは「土地家屋調査士が知っておくべき土地区画整理事業のしくみ」です。

土地区画整理事業は、土地家屋調査士にとっても司法書士にとっても身近な事業ですが、身近だからこそよく知っているようで逆に誤解されやすい部分が多いようにも見受けられます。そのしくみをきっちり理解をしている専門家はとても少ないと感じています。

土地区画整理事業は、長い期間を必要としかつ広範囲を施行するので、その近隣の土地家屋調査士や司法書士は何度も土地区画整理に関する経験を積むことになります。

しかし、よく考えてみれば、何回も経験したと思っているそれらの経験は、そのたった1つの事業の経験でしかありません。

そのわずか1つだけの経験に頼り、他の土地区画整理事業に関しても分かったつもりで、受けた相談に軽々に回答することはとても危険です。

実際、地権者の区画整理に関する相談に対して、他の土地家屋調査士が不正確な答えをし始めたところに同席したことがありました。冷や汗が出ました。

区画整理事業がらみの争いは結構あります。わずかな経験だけで答えることはとても危険です。

もちろん区画整理事業に関してだけではなく、あらゆることでプロはわずかな経験だけで「もの」を語らず、条文に戻り、深い理解をする必要があります。


明日の研修会に関して、岩手会の会員には事前の宿題を出しています。

宿題はもちろん答えが出なくても結構です。

研修会前に考えてみたかどうかで研修効果が変わります。

以下に書き出しますので、興味のある方は知識をチェックしてみてください。


専門家として以下の質問をされたら答えられますか。

Q1)区画整理地内に入れられたが不満だ。反対すれば良いのか。 

Q2)区画整理地内の地権者全員が反対でも施行される区画整理があるのか。 

Q3)仮換地と保留地と従前地と底地の違いはなにか。

Q4)清算金や賦課金、減価補償金とはなにか。 

Q5)従前地を売買したいのだがどうすれば良いのか。また気をつけておくことはあるか。 

Q6)買った保留地を転売したいのだが、どうすれば良いのか。 

Q7)融資を受けて仮換地に建物を建てるときに、土地の担保はどうすれば良いのか。また保留地ならどうすれば良いのか。 

Q8)区画整理事業で従前地はすべて測量するのか。 

Q9)区画整理地内はすべて創設的筆界だから基本的に境界争いは無いか。 

Q10)仮換地の分筆登記の方法はどうするか。 

Q11)仮換地の地目変更登記はできるのか。 

Q12)仮換地や保留地上の建物表題登記はどうするのか。 

Q13)仮換地上の区分建物の敷地権はどう考えれば良いのか。 

Q14)保留地上の区分建物の敷地権はどう考えれば良いのか。 

Q15)従前地はいつ新しい地番になるのか。 

Q16)仮換地時に登記された建物の敷地地番は、いつ誰が新しい地番に変更してくれるのか。 

Q17)換地処分に伴い所有権者の住所が変わった場合は、その所有権名義人の表示はいつ誰が変更してくれるのか。 

Q18)換地処分で登記識別情報は発行されるのか。





2021年2月14日日曜日

10年目の大地震

 つい一時間ほど前(13日23:08)に大きな地震がありました。

震源は福島県沖、宮城県と福島県では最大震度6強でした。

私の住んでいる仙台は震度6弱でした。

津波と原発の心配がないとのことで一安心ですが、余震は心配です。

緊急事態宣言の自粛の中の23時ですので、たいていの人は自宅にいたでしょうし、そういう意味では日中よりは被害が少ないと思われます。

被害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。

私は大丈夫です。

私の自宅でもいろいろ落ちたり倒れたりしましたが、想定内のものでした。

むしろ事務所のコンピュータ類が心配です。今すぐ見たいような、見たくないような。まあ明日行ってみます。


緊急警報が鳴る中10年前の東日本大震災を思い出しました。

あの年は3月9日に震度5の大きな地震があり、「余震に気をつけて」とこのブログで呼びかけた2日後の3月11日に東日本大震災が発生しました。

余震の方が大きいこともあるのです。だからしばらく気を抜かないでください。

余震は今もありました。震度3です。

我々は学んだはずです。

地震に慣れてはいけません。勇気はいりません。甘く見てはいけません。















2021年2月8日月曜日

修業先と就職先は区別して考えなさい

土地家屋調査士の最終合格発表は今週ですね。筆記試験のままであれば、今年は仙台管区(東北)で28人です。

東北ブロック協議会では3月27日(土)に開業ガイダンスを開催します。東北の合格者には直接ご案内が届くはずです。これも講師は私が担当しますが、主催は東北ブロック協議会ですから、東北の合格者限定になります。懇親会も予定していますが、もちろん、コロナの状況を見ながらの開催です。突然の中止や延期も有り得る前提ですのでご了解ください。

その他の地方の合格者のためには、私主催の開業ガイダンスを開こうと思っています。

さすがにコロナの緊急事態宣言の中では無理ですが、合格者の皆さんの将来がかかっていますので、できるだけ早めに開催したいと思っています。


さて、そのガイダンスで丁寧に説明するつもりですが、このブログで急いでお伝えしたいことが、合格後の修業先としての土地家屋調査士事務所のことです。すぐに土地家屋調査士事務所に就職する人もいるでしょうから急いでお話ししたいと思います。

まずは実務経験が無いのなら、できる限り土地家屋調査士事務所で働きながら勉強すべきです。そしてその土地家屋調査士事務所はどこでも良いとは言いづらいのです。

皆さんが独立をめざすなら、今回の土地家屋調査士事務所への就職は、単なる補助者としての就職ではなくなりますので、就職と修行は区別して考えた方がよろしいと思います。


「できるだけ楽して、たくさん給料は欲しい。そして勉強は教えて欲しい」これを客観的に見て、この人は何を言っているか分かりますか。

いつも書いているように、事務所側には雇う目的があります。それは間違いなく合格者に勉強を教えたいためではありません。事務所で働かせるためです。事務所が給料を払うのだから当たり前です。その当たり前が何故か合格者には分かりません。

早く独立したいのなら、学ぶことができる環境を優先して捜してみてください。

募集している事務所ならどこでも良いと思って応募すると、その事務所で飼い殺しになる可能性もあります。教えると言いながら、実際は「経験から学べ」という事務所もあるでしょう。そうなったなら独立できる実力が付くまで何年かかるか分かりません。


事務所の選び方として参考になるかも知れないことを申し上げます。

何かと募集をしている事務所は、何かと人が辞めている事務所です。そんなに毎月毎月人が必要になるほど急拡大するような時代でも業界でもありません。常に募集していることについての明確な理由が無い限り、お勧めしません。

また大きな事務所への就職は、組織の歯車の一つとしての働きを求められることが多く、結果として仕事全体を見る機会が少なくなるかも知れません。

元々合格したら大きな法人などに就職したかったということなら良いでしょうが、独立をめざすのなら得策とは思えません。就職を決める前にこの点を事務所としっかり話し合う必要があると思います。

逆に小さな事務所は、その先生の能力と相性次第で、当たり外れが大きいでしょうね。

どちらにしても難しいことは、事務所のトップがどれだけ勉強を続けているのか、そして教える気があるのか、教える気があるとしても教える能力があるのか、でしょう。

難しい点は、それらは実際に事務所に入ってみないと分からないという点です。


皆さんは「事務所を選べと言われても、相手が募集していないのだから」と言うでしょうね。

別に募集していない事務所でも、こちらから相談に行っても良いと思いますよ。もちろん社会人として失礼の無いように、時間も考えて、アポイント取った上でです。

当然電話した時点で断られる可能性がほとんどです。事務所としても募集をしていないのですから。しかし待遇の良い条件の就職先を探すのではなくて、修業先と考え直せば、まったく無いとも言えない気がします。

事務所に相談に行けば、そこの土地家屋調査士が話を聞いてくれる可能性があります。もしかしたら不定期のアルバイト程度は何とかなるかもしれません。

そこでその事務所の先生の人柄や相性が分かるかもしれません。熱心さが伝われば、雇わないと言っていた先生の気が変わるかもしれません。


生きていくのに給料はこだわりたいという気持ちは分かります。ただそれにこだわり過ぎたら独立開業が遅くなるおそれがあります。

事務所を選ぶべきです。そして事務所と話し合いをすべきです。

頑張って早めに実力を付けて独立開業をして、取り戻せば良いだけだと私は思います。