2016年7月27日水曜日

熊本地震被災のこと

yahooニュース(毎日新聞アンケート)によると、熊本地震から3か月経った今でも、7割の方が自宅再建のめどが立っていない、4割が避難生活、とのことです。
前回のブログに書いたように復興には時間がかかります。

見出し記事の部分だけ抜粋します。

熊本地震の発生から14日で3カ月になるのを前に、毎日新聞が追跡アンケートを実施している熊本県内の被災者100人を対象に現在の状況などを聞いた。回答を得られた73人の7割にあたる51人が修繕も含めた自宅再建のめどが立っていないことが分かった。また、4割弱にあたる28人がいまだ避難所など自宅外での避難生活を送っていた。1カ月前の4割から大きな変化はなく、避難生活のさらなる長期化が懸念される。

まだまだ私達は、被災地に注目しておく必要があります。

以下は益城町に行った際に撮影した写真のほんの一部です。
お気の毒な状況が続いています。
本人にとって、損害という具体的な数字に加えて、家族の想い出なども加算されて、心の痛手も大変大きなものなのでしょう。




鉄骨の基礎から地震の揺れで歪んで崩れています。




立派な瓦屋根が続く地域ですが、柱や壁が崩れて潰れた家屋がたくさんあります。




手前の建物は完全に潰れています。
周辺の建物も屋根だけでなく柱も歪んでいるでしょうから修理も大変でしょう。




断層に沿った割れ目です。




断層による割れ目はずっと続いていて、目で追える状態です。



断層による土地の逆方向への移動です。
上の写真の畑の間の畦畔は、上から真っ直ぐ下りてきて、写真の途中で左に曲がっています。
地震前はもともと写真の下まで真っ直ぐだったのです。
この写真の中程の左右に断層が走っていて、その線でずれたものです。

土地家屋調査士として一番着目している問題がここです。

阪神淡路大震災でも東日本大震災でも、地震による広域的な地殻の水平移動は、移動したその位置を筆界とみなすと決まりました。
例外はあるにしても、各筆の境界点の相対的な位置関係がほぼ変わらないのなら、以前の座標にパラメータを与えて補正する処理で処理することが原則でした。

皆さんニュースでもご覧になっているように、今回の熊本のこの地域の土地は、断層を境に逆方向に移動しています。
ですから、ここはシンプルな地殻の広域的移動で済ませることができないようです。

私が熊本を訪問する前には、断層付近では局所的なパラメータを設定する必要があるかなと思って伺いました。現実の筆界はそのような動きをしているからです。

しかし、現地では農地を耕作しやすいように、自分たちで畦の位置を直しているところも見られました。この写真の右側の方では、問題なく占有界を解決しているようです。

なるほどなぁと思いました。
私達が勝手に法律論や筆界論に振り回されて問題解決を悩んでいるうちに、地元の方はとりあえず問題解決しているのです。少なくても私法上の問題は。

もちろん、まだ後処理の結論を聞いていないので、勝手なことは書けないのですが、おそらく、この占有界に沿って新たに地図作成がなされ、公法上の境界としての対抗力を持たせるのではないでしょうか。

やはり、問題を把握して解決するということは、机上ではなく現地に行ってみないとできないと思いました。










2016年7月25日月曜日

ブレックファスト・クラブ

先日の「セトウツミ」は日本の高校生2人の映画です。
この世代の映画は面白いものが多いです。
青春映画ですね。洋画邦画に関わらず私の好きなジャンルです。

今回はアメリカの高校生5人の映画について書いてみましょう。
「ブレックファスト・クラブ」
1985年の映画です。公開から31年。

「今更?」「観たよ」という方もいるでしょう。
当時リアルタイムで観た方が年齢を重ねてから今観ると、また別の感慨があるかも知れませんよ。




ガリ勉(ブライアン)、スポーツ馬鹿(アンドリュー)、不思議ちゃん(アリソン)、お姫様(クレア)、チンピラ(ジョン)の5人の高校生が主人公。
まったく境遇も性格も違う5人。
当然、同じ高校でもまったく接点もなく、名前も知らない5人。
彼らは、それぞれ何らかの懲罰により、土曜日の休日登校を命じられ、図書館で1日缶詰にされます。
やることは1日かけて「自分とは何か」をテーマにした作文を書くこと。

何か書くこともせずに、ただ時間が過ぎて行く中で、それまで一度も口もきいたことのない5人が、雑談を始め、次第に心を開いていきます。
時間が進むにつれて、家族や周囲の人間との自分の関係を少しずつ話し始めます。
嘘をついたり、本音がでたり、自分から正直に話したりしながら、徐々にお互いを理解し、友情を感じ始めます。

最終的に彼らは「自分とは何か」のテーマで作文を書くことができるのでしょうか。


登場人物は、この5人の高校生と先生と用務員の7人のみ。(ちょっと各自の親が出るけれど数に入れなくても良いでしょう)
ロケも学校だけ。低予算ですね。
その中でこれだけの物語を作ったのは、さすがにジョン・ヒューズ監督です。
(先日のセトウツミはもっと予算かけていないと思うけれど)

冒頭のシーンから素晴らしいです。
デビッド・ボウイの詩の引用があり、ブライアンのナレーションが始まり、主人公高校生5人のそれぞれの登場シーンが続きます。
この登場シーンはワンカットでできていて、その中にそれぞれの人物背景が見事に描かれています。
この冒頭シーンは、全部観終わってから再度観て欲しいです。

その冒頭からラストシーンまで、緻密な計算がされている映画です。
雑談に見える会話の中にも、おそらく発している登場人物本人も理解していないかも知れないけれど、この映画のテーマに関わる計算されたセリフが用意され、それらの緻密な構成にとても感心します。
それぞれの人物造形も良いですね。完全なステレオタイプな人物像にしないのは、この映画のテーマだから当然ですが、各々が良いキャラクターだったと思います。
特にアリソンの不思議ちゃん行動には何度も笑いました。
シーンごとに5人の優劣の関係も変化し、不安定な彼らの社会における立場と心情が良く現れています。

そして、次第にお互いを理解していきながら、最終的に理解するのは自分自身なのです。
自分は本当に、ガリ勉で、スポーツ馬鹿で、不思議ちゃんで、お姫様で、チンピラなのか。
つまり「自分とは何か」です。

コメディもしっかり挟みながら、若者の自分探しを爽やかに描いている映画です。

配役も、大人の登場人物は先生だけではなく用務員がいるのですが、この用務員の存在が大人の世界の生き方にも少し触れることになります。とても考えられています。

最後に彼らは作文を残します。
それは、どんな文なのか。
興味のある方はこの映画を観てください。

彼らが週明けの月曜日に学校に来たときに、彼らの何かが変わるのか。また変わらないのか。彼らのこの土曜日とその後について観た方と話しをしたいですね。

良い映画です。
やはり、私はこのジャンルが好きですね。




2016年7月22日金曜日

セトウツミ

「セトウツミ」
この映画好きですねぇ。




元サッカー部員の奔放な瀬戸と塾通いのクールな内海との2人の男子高校生が主人公の映画、だからセトウツミです。
この2人が放課後に川縁に座ってだらだらとしゃべるだけの映画です。これで映画が成立するのです。
この二人の会話は一見他愛もない内容なんですが、関西弁で絶妙な会話です。
これがハマります。

映画館内で皆が何度も声を出して笑っていました。
こんな感じ久しぶりに経験しました。

今人気の池松壮亮と菅田将暉のダブル主演です。
監督は大森立嗣監督です。
あの「まほろ駅前多田便利軒」を撮った監督です。
あの映画は、瑛太と松田龍平のいい感じのバディムービーでした。
だから、今回も主人公が男子2人なので期待して行きましたが、やはり期待以上に2人の関係が良かったです。

原作は人気マンガだと聞いていましたが、原作を読まずに映画に行きました。
特に原作を読まなければ理解できないという映画ではありません。
しかし、面白かったので、映画観てから原作マンガを読んでみました。
驚いたのは、この映画は原作に本当に忠実に作られていることです。
あの絶妙なセリフは、原作そのままのセリフでした。
そのセリフを池松と菅田の2人の自然な演技力で原作以上の味わいを見せています。

男子高校生のだらだらした会話ってこんなもんです。
内容が他愛も無いものです。
ゆるくて、ちょっとシュールで、絶妙な間がある会話で。
性格がまったく違う二人、でもどこかでお互いを思いやっている感じ。
こんな関係ありますね。
そして、こういう会話って、本人達より聴いている周りの方が面白いんですね。
何か良いですよ。懐かしい感じです。

宇宙人が攻めてこなくても、全米が泣かなくても、低予算で面白い映画はあるのです。
この二人のだらだら感を大画面で観るのも、やはり一興です。

観ていない人はお勧めです。
上映時間は75分、ちょっと気分転換程度に観に行ける時間でしょ。

この二人、いつまでも見ていたいですね。
iTunesで発売になったら、買うと思います。






2016年7月18日月曜日

病気を持っているのですが土地家屋調査士はできますか?

こんな質問が来ました。
私はこのように答えました。


Q) 私は病気を持っています。
薬を飲みながら、一生付き合わなければならない病気です。
それで会社も辞めました。
それでも土地家屋調査士はできますか?


A) 会社を辞めなければならなかったのはお気の毒です。
病気の詳細はお聞きしませんが、今は落ち着いたのですか?
今、医者から止められていることはありますか?


Q) ええ、落ち着きました。
ハードな仕事はできないかも知れませんが、今医者から止められていることはありません。
定期的に病院に行って、薬を飲み続けることです。


A) それなら、何が問題なのでしょうか。

何をハードな仕事と思うかは人それぞれでしょう。
どちらにしても医者が止めていないのなら、あなた自身の問題でしょうね。

土地家屋調査士の業務で測量の現場があります。
現場によってはハードと思える作業があるのかも知れませんが、一般的な現場は普通に歩き廻る体力があれば問題ないでしょう。
今は機械化が進み、作業がかなり楽になりました。
高齢の土地家屋調査士や女性の土地家屋調査士が何の問題も無くこなしているのですから、おそらく若いあなたには問題ないことでしょう。

真夜中まで働く仕事がハードでブラック企業というのなら、私の事務所もそうかも知れません。
でも、他人にやらされているのではありません。
自分で決めて、自分のペースで仕事ができるのです。
そして、それが自分に返ってくるのですから、辛くはありません。

有給休暇はありません。
でも、日中病院に行って、夜に仕事をすることもできます。
工夫次第です。
お客様に迷惑をおかけしないようにすれば、365日24時間の中で好きな時間に仕事をすれば良いのです。
それを自分で決めるのですから、ある程度の融通は利きます。
このあたりは一般的な勤め人では難しいことでしょうが、自営業ならできます。
自営業の利点と思っています。

あなたは周りの人と比べて、若くて病気になったので、自分が不幸と思っているのでしょう。
でも、オジサンになると、皆なんらかの病気持ちになるのです。
定期的に病院に通って、一生飲む薬も何種類か持ち歩いているのでしょう。
でも、そんなことで土地家屋調査士をやめる人はいません。

あなたは、他の人より早めにそれが来ただけです。
その分、他の人よりも早めに対策が立てられます。


その病気が原因で土地家屋調査士ができないのなら、他の何の仕事でもできないような気がします。もう一度、あなたが一生付き合う病気について整理してみてください。







2016年7月15日金曜日

マネー・ボール

我がベガルタ仙台は、今とても苦しんでいます。
選手層の薄さの中、多くの怪我人を抱えて、選手のやり繰りに苦労しています。
大金持ちのチームなら簡単に助っ人を呼んでくることができるのですが、我がチームは使えそうな選手を引き抜かれる方の逆の立場です。
豊富な選手を抱えて優勝を目指すチームと、現有戦力をやり繰りしながら上位を目指すチームでは、その戦略も異なるでしょう。

さて、大リーグでそんなお金のない弱小球団のGM(ゼネラルマネージャー)を主人公にした映画が「マネー・ボール」(2011)です。主人公はあのブラッド・ピットです。



野球選手が主人公でも監督が主人公でもなく、GMビリー・ビーン(ブラッド・ピット)が主人公の実話です。

ビリー・ビーンは、かつてニューヨーク・メッツから1巡目指名を受けたスター候補生だったのですが、結局成績が出せずに27歳で引退します。その後スカウトを経てオークランド・アスレチックスのGMになるのですが、そのアスレチックスは資金難で、優秀な選手を獲得することができず、当然弱いチームでした。
ビリーは、イエール大学卒業の野球経験のないピーター・ブランドに出会いました。ピーターは野球経験からくる勘や選手の見た目からの評価ではなく、各種統計から選手を客観的に評価するセイバーメトリクスを用いて、選手を評価する方法を提案しています。
この理論を採り入れたビリーは、他のベテランスカウト達の反対を押し切り、他球団から評価されていない選手を再評価し採用します。
監督とも対立し、四面楚歌の中、低予算でチームを改革しようとします。


この映画を観ていると、どうしても我がベガルタ仙台を考えてしまいます。
ベガルタ仙台も現役の日本代表もオリンピック代表もいません。
毎年、個人の能力というよりも、選手の組み合わせと戦術により戦っています。
それでも2012年にはJ1の首位を走っていました。
しかし、あと一歩というところでサンフレッチェ広島に逆転優勝をさらわれました。
「あの戦力のベガルタ仙台でJ1準優勝を果たしたことは立派」という言い方も誤りではないでしょう。
しかし、2位ではダメなんです。
優勝でないと誰も覚えてもくれません。

ビリーも同じでした。
優勝以外は満足しません。
だから勝つために周囲と対立してもこの改革を断行しました。
このプロセスを観て、選手でもなくGMが主人公のスポーツ映画で私は熱くなりました。

この映画は実話です。
実話を映画にするのは難しいです。
どこから始まりどこで終わるか、その切り取り方で物語が決まります。
また、物語なら「本当は結末をこうしたい」ということがあっても、実話だから改竄はできません。
その制約の中で、とても良い映画になったと思います。
むしろ、だからこそ説得力のある映画になったのでしょう。

実話だから結末もネタバレでは無いでしょう。
この改革は成果が出ます。
「一定の」成功もします。

そして、ビリーはその成果でボストン・レッドソックスからGMとして破格の条件で引き抜きを打診されます。豊富な資金のあるレッドソックスなら、この理論の実現を完成させられます。
さて、野球人の夢や思い込みを統計と数字で切り捨てながら、結果を求めて戦って来た男の選択は・・・。


この映画面白いです。
少なくてもスポーツ好きなら楽しめると思います。

なお、更に野球に興味のある方は、日ハムも採用したという「セイバーメトリクス」理論を調べてみてください。とても面白いですよ。





2016年7月13日水曜日

熊本地震復興支援のこと

熊本地震から明日(14日)で3か月です。
(大分を忘れているわけではありません。「熊本・大分地震」と呼ぶ方もいらっしゃいますが、気象庁発表の名称の「平成28年(2016年)熊本地震」に合わせただけです。)

先月末、熊本に地震対策の支援に行ってきました。
がれきを運ぶボランティアではありません。
東日本大震災を経験した東北の被災者として、土地家屋調査士として、また被災時の土地家屋調査士会の会長として、体験したこと、考えたこと、理解したことをお伝えしたいと思ったのです。

震災復興において、何が起こったのかと、今後何が起きるかと、個人として組織として今何をすれば良いのかとを、経験者として具体的にお伝えしたいと思いました。
私達の業界が直接役に立つのは、もう少しだけ先になります。
でも、間接的なら今でもやることはたくさんあります。
だから、このようなことをお伝えしたいと思って、熊本県土地家屋調査士会の皆さんの会議に2日間参加させていただきました。


天下の名城、熊本城の遠景です。とても残念です。近づくことができませんでした。

道路の先が崩れた石垣でいっぱいで、通行禁止でした


土地や建物に関する法的問題は、東北と同じものと新たなものがありそうです。
この土地や建物に関する法的問題については、差し支えない範囲で後日書かせていただきますが、とにかくお気の毒な状態でした。

全国の皆さんは、熊本地震をどのように捉えているでしょうか。
ニュースに出る頻度が減りました。
ボランティアも減ったようです。
おそらく「もう大丈夫だ」という風潮でしょうか。

東日本大震災でも書かせていただきましたが、「ニュースは昨日と違うからニュースになる」のです。
東北も東日本大震災から5年と4か月、まだまだ復興に時間がかかっています。
頑張っているのは住民だけではありません。
被災した町のために、自分の職を離れ、遠方から被災町役場の職員として復興に尽力されている方々も今もいらっしゃいます。
先日他の地域の方に「今もいるんですか?」と驚かれました。
「今もいるか」どころではなく、今でも土日もなく、毎日睡眠を削って復興に尽力している役場職員もたくさんいらっしゃいます。
それでも、まだ現地は昨日と同じだからニュースになりません。

熊本の繁華街だけ見て「もう大丈夫」と思わないでください。
熊本市内でも屋根のブルーシートの率は、東日本大震災の際の仙台市内よりも多いように見えました。台風対策の屋根瓦の普及率が原因なのでしょう。
瓦職人が不足して修理までに時間がかかるようです。
熊本市内の知人の家では、とりあえずブルーシートをかけているようですが、その間に雨漏りが始まって、天井が垂れ下がってきているとのことでした。

土地家屋調査士会の会議後、地元の皆さんに案内していただいた益城町は、テレビでもご覧になっているでしょうが、とてもとてもひどい被災状況でした。

お金や力が無くても支援はできます。
自分ができることがあるはずです。
むしろ自分しかできないことがあるかも知れません。

知人がいたら手紙や電話をしても良いと思います。
「それどころじゃないだろうから」「何と声をかけたら良いか」など迷うのでしょうが、あまり考えすぎずに声をかけたら良いと思います。
そろそろ被災者が精神的につらくなる時期だと思っています。
熊本地震では関連死の数が直接死の数を超える可能性もあるようです。

知人がいなければ、つねに何か気にしているだけでも良いと思います。
毎日の買い物に熊本産のものを少し入れても良いでしょう。


とにかく、阪神淡路大震災や東日本大震災と比較して死者や建物被害の数が少ないからといって、熊本地震を軽く扱わないでください。

その人にとっては100%なのですから。










2016年7月10日日曜日

事務所開業をためらう理由

土地家屋調査士開業ガイダンスin福岡の後にたくさんのメールをいただいています。

以下抜粋です。

「前へ進む勇気を与えていただいた思いと、できる事を実行できないでいた自分の考えの甘さを反省も致しました。
初期投資を抑えることも必要ですが、必要なコストを惜しまないことも大切なこととして自分のできることを明確にしていこうと考えています。」

この内容について、開業をめざす皆さんに少し考え方を説明します。

皆さんが事務所開業をためらうのは、実力がないこと、開業資金がないこと、業務受託するコネがないこと、の3つが主な理由のようです。


<実力がないこと>
これは、この3問の中で解決が一番簡単なことです。
相手も無いことで、自分だけの問題ですから。
業務に自信がなくて困っている人は、おそらく「空から実力が降ってくることを待っている」のでしょう。
待っていても降っては来ません。
実力を得るには、毎日トレーニングをすれば良いだけです。
学生時代の部活と同じです。
誰かに教えてもらうまで待っていないで、今できることがあるでしょう。
睡眠を削っても、法律書を読み込み、測量等の練習をしましょう。
私も最後まで教えてあげたくても、
トレーニングしている人にしかコーチの言葉は伝わりません。」


<開業資金がないこと>
皆さん開業資金で悩んでいるようです。
その方は、いくら持っていれば開業できるのかを自分の言葉で答えられますか。
ネットを検索して「〇百万円かかるらしい」と鵜呑みにしていませんか。
個人業はすべて自分で判断しなければなりません。

確かに、事務所開業について、費用を考えてみると登録諸手続、事務所、設備等々、とてもたくさんの費用がかかりそうです。
土地家屋調査士事務所にお勤めの方なら、事務所にどれだけの設備があるか具体的に理解しているでしょう。
しかし、開業したての方がそれらすべての設備が必要でしょうか。
しばらくの間、使わないものもあるでしょう。使わないものをリースして固定費を増やすことは避けるべきです。その見極めも必要でしょう。

必要なものでも、最初から購入せずに必要なときだけレンタルするという選択も有って良いと思っております。
リースを必要時だけのレンタルにすることで、固定費を変動費に変えることができます。

それとは別に、実力を付けるための費用は惜しんではいけません。
専門書は高いと言っても、他の費用に比べたら桁違いに安いでしょう。
必要だと思う本があったら全部買いましょう
研修を受けるための費用も惜しんではいけません。
「勉強は事務所経営についての一番確実な投資」ですから。


〈コネがないこと〉
コネがないことで、開業後の営業が困ると思っているのでしょう。
専門家として仕事を受託するということは、一般企業の営業とはまったく違うプロセスで受託すると、私は考えております。

問題はそこではないと思います。
ほとんどの新人は何のコネもありません。
また、不動産という大きな財産を扱う資格です。
コネがあったから受託できるほど簡単なものでもありません。
このブログで以前からお伝えしているように、この解決方法は
とにかく実力をつけること」、それに尽きます。


ガイダンスでは個々の質問に合わせたもう少し丁寧な説明をしていますが、最終的にはこのようなことをアドバイスしています。
詳細は、またどこかで開催するガイダンスをお聴きください。

結局全部「実力をつけるためにトレーニングすること」ですね。
当たり前なんです。
専門家ですから。


















2016年7月1日金曜日

殿、利息でござる!

久しぶりに映画を観ました。

観たい映画が結構あったのに、その時期は映画に行く余裕がなく、今更ながら何を観ようかと思い、結局宮城県(大和町吉岡)の実話である「殿、利息でござる!」を観ました。


時代は江戸中期、舞台は仙台藩吉岡宿。
藩主は第七代藩主伊達重村の時代。

飢饉による年貢不足に加え、島津藩に対抗するための政治工作などで、伊達藩は慢性的な財政難。そのため藩内で重い年貢や労役を課すが、その結果住民の破産や夜逃げが相次いでいた。

吉岡宿でも同様であり、夜逃げ等で町そのものの存続も危うい状況であった。
吉岡で造り酒屋を営む穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は吉岡の行く末を案じ、町一番の知恵者である茶師菅原屋篤平治(瑛太)に相談した。
篤平治は、仙台藩に大金を貸し付けて利息を取り、住民に配り、貢や労役を軽減することを考える。十三郎とその仲間達は、私財を投げ打って町を守る為に行動を開始する。


歴史家磯田道史氏の「無私の日本人」の中の短編「穀田屋十三郎」を映画化したもの。
ちなみに磯田道史氏は、同じく映画化された「武士の家計簿」も書いた方で、テレビにも多く出演されている方だからご存じの方も多いでしょう。
磯田氏がこの「穀田屋十三郎」書くきっかけになった話も読んで欲しいです。
本の話WEB を見てください。

良い映画だったと思います。
阿部サダヲ主演であのポスターですから、よりコメディタッチの映画かと思いましたが、コメディの要素を抑えめに、人情話にほんの少しのコメディが程良くバランスされて、良かったです。

とにかく町のために私財を投げ打って、しかも名さえ残さないという決まりを作って、動く人々がいました。
完全なるヒエラルキーの中で、次々と上の壁を説得していく交渉事は、当時有り得ないことだったでしょうし、打ち首になることだって有ったでしょう。
しかし、これが結局進んでいったのは、やはり仲間の無私の心が、次々とそれらの壁だった人々の心を打ったからだと思います。

これが実話でなければ、こんな話を書くことを躊躇するかも知れません。
名も無き庶民が自分が破産するまでやって、それでも自分たちの手柄にしないという定めをつくったのです。こんな「無私の日本人達」が出てくるストーリーは、あまりにも「きれいごと」過ぎて「現実感がない」と批判されるかも知れません。
しかし、これは実話なのです。

実話の重みに、俳優達の演技の重みが加わり、後世に残すべき良い映画になりました。

阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平、山崎努ら本当に良い俳優が揃ったと思います。伊達重村のキャスティングとして、あの羽生結弦くんですし。

中でも伊達藩の財政担当萱場杢役の松田龍平がとても良かったですね。
みんな良い人の中で一人だけの憎まれ役です。
彼も分かっているのです。この訴えを通してやりたいのは他の人と同じはずです。
同じく心を打っているはずです。
しかし、彼はこの役人ヒエラルキーのラスボスです。
逼迫している財政を建て直して殿様を守る為に憎まれ役をやっているのです。

ここで殿様に羽生君を持ってきた意味が出るのでしょう。
あの穢れのない王子様キャラの顔を見ていると、萱場氏だけでなくても「我が殿をお守りしなければならない」と使命感を持つでしょうから。

また特筆すべきは山崎努の存在感ですね。このキャラはネタバレが絡むのでここだけにしますが。


たくさんの人に、この映画もしくは本を見て、日本人が社会をどう考えてきたかを確認して欲しいと思いました。

そして「見つからなければ他人の金も使う」という行動をした某知事などに観せてやりたい映画でした。