前回のブログに書いたように復興には時間がかかります。
見出し記事の部分だけ抜粋します。
熊本地震の発生から14日で3カ月になるのを前に、毎日新聞が追跡アンケートを実施している熊本県内の被災者100人を対象に現在の状況などを聞いた。回答を得られた73人の7割にあたる51人が修繕も含めた自宅再建のめどが立っていないことが分かった。また、4割弱にあたる28人がいまだ避難所など自宅外での避難生活を送っていた。1カ月前の4割から大きな変化はなく、避難生活のさらなる長期化が懸念される。
まだまだ私達は、被災地に注目しておく必要があります。
以下は益城町に行った際に撮影した写真のほんの一部です。
お気の毒な状況が続いています。
本人にとって、損害という具体的な数字に加えて、家族の想い出なども加算されて、心の痛手も大変大きなものなのでしょう。
鉄骨の基礎から地震の揺れで歪んで崩れています。
立派な瓦屋根が続く地域ですが、柱や壁が崩れて潰れた家屋がたくさんあります。
手前の建物は完全に潰れています。
周辺の建物も屋根だけでなく柱も歪んでいるでしょうから修理も大変でしょう。
断層に沿った割れ目です。
断層による割れ目はずっと続いていて、目で追える状態です。
断層による土地の逆方向への移動です。
上の写真の畑の間の畦畔は、上から真っ直ぐ下りてきて、写真の途中で左に曲がっています。
地震前はもともと写真の下まで真っ直ぐだったのです。
この写真の中程の左右に断層が走っていて、その線でずれたものです。
土地家屋調査士として一番着目している問題がここです。
阪神淡路大震災でも東日本大震災でも、地震による広域的な地殻の水平移動は、移動したその位置を筆界とみなすと決まりました。
例外はあるにしても、各筆の境界点の相対的な位置関係がほぼ変わらないのなら、以前の座標にパラメータを与えて補正する処理で処理することが原則でした。
皆さんニュースでもご覧になっているように、今回の熊本のこの地域の土地は、断層を境に逆方向に移動しています。
ですから、ここはシンプルな地殻の広域的移動で済ませることができないようです。
私が熊本を訪問する前には、断層付近では局所的なパラメータを設定する必要があるかなと思って伺いました。現実の筆界はそのような動きをしているからです。
しかし、現地では農地を耕作しやすいように、自分たちで畦の位置を直しているところも見られました。この写真の右側の方では、問題なく占有界を解決しているようです。
なるほどなぁと思いました。
私達が勝手に法律論や筆界論に振り回されて問題解決を悩んでいるうちに、地元の方はとりあえず問題解決しているのです。少なくても私法上の問題は。
もちろん、まだ後処理の結論を聞いていないので、勝手なことは書けないのですが、おそらく、この占有界に沿って新たに地図作成がなされ、公法上の境界としての対抗力を持たせるのではないでしょうか。
やはり、問題を把握して解決するということは、机上ではなく現地に行ってみないとできないと思いました。