2012年7月25日水曜日

日本の1/2革命

あの池上彰氏と、「小説フランス革命(全12巻)」を刊行中の西洋歴史小説家である佐藤賢一氏との対談「日本の1/2革命」を読みました。
これは大変面白かったです。


佐藤氏によると「フランス革命は前半と後半の2段階のものだった。」とのこと。そう解説されると、確かにフランス革命の陰と陽を理解しやすいと思います。

「革命の前半は「自由・平等・友愛」を掲げ絶対王制を倒し、その後の市民社会や民主主義の元になったものですが、革命の後半は国王を殺してしまい、結果的に共和制になったが、ただ暗い歴史になってしまった。」と説明します。

この部分を佐藤氏は何度も詳細に語ってますし、池上氏はさすがに適切な言葉を選びながら、佐藤氏の説明を促していきます。

このフランスの革命が他国の革命にも少なからず影響を与えたということで、イギリスの革命にアメリカの独立戦争、そしてロシア革命などにも言及します。

でもこの本の最初から最後まで一貫してそれと対比しているのが、日本における革命です。たとえば明治維新を挙げています。

「日本における明治維新の革命は、フランス革命で言う前半だけの革命であり、後半部分は無い。」とし、これを「1/2革命である。」というのです。
「実際に、日本の明治維新を成し遂げた革命家は、一般市民ではなく、侍階級であった。そしてそれは将軍も天皇も殺さない革命であり、ソフトランディングな革命であった。」
「そう考えれば、日本の革命は、敗戦後のGHQ改革、1960年の安保反対デモ、1968年の全共闘運動、そして2009年の政権交代も、やはり1/2革命であったと言える。」

「何故日本人は1/2革命で終わったのか。最後まで行かなかったのか。または行けなかったのか。」

佐藤氏は続けます。
「日本人は、本気で怒り自ら改革することを放棄し、英雄待望論が強い。」とも言ってます。
それは「自分たちが自ら動いて成功した体験が無いからだ。」と、つまり「フランスと違って「やればできる」の成功体験が無いからだ。」と、分析します。明治維新もGHQ改革も、自らの改革ではなく、外圧により改革を迫られたものだからです。

「フランスの人達はなにかというとデモを起こすけれども、日本人はあまりやらない。それは、デモなんかやってもどうせ無駄だと最初から諦めているからだ。」
そう佐藤氏は言います。

そして本の最後に、「東日本大震災後の未曽有の危機は、歴史的に見ても革命前夜の様相である。」と言い、「その危機に直面する日本人は、まだ我慢を続けるのか、それとも後半の1/2革命に望むことになるのか」と結びます。
対談内容が最後までとても面白く読めました。

日本人が自ら怒ることを忘れ、ただ英雄を待っているという説明は、昨今の日本人をよく表していると思いました。

これは我々の狭い業界でも感じます。
少なくても他の人達よりは自分で未来を開く指向の人間だから、専門家として個人事務所を開いたはずなのに、いつの間にか「どうせ・・」と言う人間になっている、そんな人が確かにいます。

フランス革命の新たな視点を示し、それに池上氏の的確なコメントが絡み、日本の過去から現在までフランス革命との対比として言及しています。

この本は面白かったです。お勧めです。