2015年8月9日日曜日

グローリー/明日への行進

「I Have a Dream」

キング牧師、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアのこの有名な演説とともに、黒人の公民権運動の指導者として、そして凶弾に倒れた人として、知っていました。
しかし、この映画を観て彼の何も知らなかったことを思い知らされました。



1964年ノーベル平和賞を受賞したキング牧師は、翌65年、黒人の選挙権を求める525人の同志と共に、アラバマ州セルマから州都モンゴメリーまで80キロのデモ行進を始めるが、そこに待ち構えていたのは白人の州警察と民兵隊だった。次々と黒人たちが殴り倒されていくニュース映像が全国に流れ、テレビの前の全米7,000万人が衝撃を受ける。
「肌の色など関係ない。人は皆平等だと信じるならば共に行進しよう」キング牧師の呼びかけに、全国から続々と人々が集まってくる。翌日、黒人と白人、男と女、大人と子供がしっかりと腕を組み、彼らは再び歩き始めた─。(公式より)

この映画、とても素晴らしかったです。
絶対的英雄としてのキング牧師と公民権運動のリーダーとしての個人的葛藤も描いています。

まだ歴史ではない、たった50年前の話しです。
南北戦争ですべてが解決した訳では無く、たった50年前までこんな状況でした。
憲法で定めても黒人には実質的に公民権は有りませんでした。
黒人を殺しても白人は実質的に裁判で有罪にならないのです。
たった50年前の話しです。
歴史になったときには、私達と同時代の話になります。


キング牧師の映画は大物監督などに何度も計画されながらも、彼の演説の権利等の壁に遭い、制作できなかったようです。
今回監督経験が多いとは言えない女性黒人監督のエヴァ・デュヴァネイが、演説を全部同意語に置き換えて撮影に踏み切ったとのことでした。

キング牧師役のデヴィッド・オイェロウォが素晴らしかったです。演説シーンには感動しました。
この撮影が難航したことにより7年間の役作りに専念できたとのことでした。

この映画を作らなければならないという使命感により作成された映画です。
すべてに使命感と突破する情熱がなければ、何事も為し得ないと言うことでしょう。

この映画を観て、作り手の使命感から来る熱さを感じました。
白人側にもジョンソン大統領役のトム・ウィルキンソンや、ジョージ・ウォレス州知事役のティム・ロスなどが凄い演技を見せています。

冒頭のシーンから引きつけられます。
憲法で保障され、しかも公民法が成立しているのに、黒人がどんな状況だったのかが描かれます。

この映画は史実ですから、答えは皆知っています。
このような映画は、そこから何を見せるかがとても難しいと思います。

525人の公民権を獲得するための運動家達が1965年3月7日のセルマからモンゴメリーまで行進しようとして、知事の指示による州兵や保安官達から暴力による妨害を受けた「血の日曜日」の前後を、この映画は描いています。
ちなみに原題は「Selma」です。
彼らは暴力に対して非暴力で立ち向かいます。

この映画は、無理にドラマチックに作っているわけではありません。
映画的テクニックに走っているわけではありません。
強い政治的メッセージを込め過ぎていません。
そして聖人としてではなく、あくまでも人間キング牧師が、あの時何を考えて、どう動いたかを時系列に従って描いています。

それでもキング牧師の大きさと、歴史の重みで、とても熱いものが伝わってきます。

感動しました。
子供連れやカップルで行く映画ではないでしょう。
でも皆さんに是非観て欲しい映画です。

そして私のように映画を見終わったら少しキング牧師について調べてみましょう。
更に理解が深まると思います。

エンドロールの曲「Glory」が最高に良いです。
コモン&ジョン・レジェンドのゴスペル調ラップとでも言えば良いのでしょうか。
今日も何度も流しっぱなしで仕事していました。









余談
CNNより

今年の3月7日は血の日曜日から50年の日でした。
バラク・オバマ米大統領は「この公民権運動が無ければ私の大統領は無かった。この自由への行進はまだ終わっていない」と述べ、3月7日にセルマを行進したようです。