2013年1月31日木曜日

注射器はお好き?

子どもの頃は予防接種の日は学校に行きたくなかった思い出があります。

校医さんが来て、次々に注射するのですが、自分の番を待つ間が、とてもとても長い時間でした。
列の前後の子と「昨年のこの注射はどれだけ痛かったか」の体験を反芻し、「先日の日本脳炎の注射とどちらが痛いのか」を議論し、注射を終えた友達に「どれだけ痛かったか」を尋ねたりしていました。
どれだけ痛かったかを説明するために、「このくらいかな」ってお互いの腕をつねってみたりして、意味の無い更なる痛みをお互いに被るのでした。

その後進学して大学では理学部生物学科だったので、注射器も使ったりしていました。

大人になると世間体もあり、さすがに「注射が嫌だ」とも言えません。
特に白衣の看護師さんの前では「あっ、今打ったの?気が付かなかったなぁ」的な雰囲気を漂わせます。

そんなこんなで、注射器に関しては、様々な人生体験も含めて、いろいろ恨みも感謝もあるのですが、昔からお医者さんゴッコも含めて、注射器には興味がありました。

そんな私が見つけたものがこれ!


注射器です。
いや、注射器型ボールペンです。

シリンダーには目盛りもついていて、ピストンをノックすることで、注射針ではなくボールペンの芯が出ます。


私の文具嗜好は、こういうものにも反応します。
というより結構好きです。


実際にインクの出も良いので気に入っています。
全部黒インクリフィルですが、使い切ったら次のリフィルは、薬品の色に合わせたインクを捜そうと思っています。

ペンケースも金属製の「いかにも・・」というものを捜しています。
見つかったら、その底にガーゼを敷いてその上に並べて持ち歩こうと思っています。

このペン、何かサインをするときに出すと、大抵うけます。
コツは「これねえ・・」とモノ言いたげに出さずに、さりげなく出して、サインしたらすぐにしまうことが大事です。
「えっ、今・・・?」という反応をもらうのが、正しい文具道だと思います。

ただし、業務上お客様の前で出すと、長年積み上げてきた何かが崩れるかも知れないのでお勧めしません。





2013年1月30日水曜日

試験合格後土地家屋調査士事務所で修行すること

補助者経験のない方で、土地家屋調査士試験合格後、先輩の土地家屋調査士事務所で修行したいという方々がいます。
受け入れてくれるところがあれば、それも良いでしょう。
ただその事務所がどんな分野が得意なのか、その事務所の先生が補助者にどのような指導をしているのか、それがとても重要です。また何年後独立したいと考えているのか、その点の明確な目標を持つことはもっと重要です。
それらが明確でないとズルズルと時間が過ぎていきます。面接の際、一番最初に、先生にしっかりと相談した方が良いでしょう。

以下は、先輩事務所で修行中の新人達から、今までに受けた相談の一例です。
それぞれ自分の目的と手段を見失った言葉だと思います。


「私の勤めている事務所は、とても給料が安いです」

そもそも何かを教えてもらうには、本来お金を払うものです。
給料をもらっているのであれば、当然にその事務所の事情に合わせて働かなければなりません。
結局あなたは就職が目的だったのですか。お金目的の就職なら、他の仕事の方が割が良いですよ。
今は仕方ありません。さっさと実力を付けて独立しましょう。


「私の勤めている事務所では、毎日測量だけでまったく登記を教えてもらえません」

もともと就職の際に何年後に独立したいという意思を伝えましたか。
そして勤務時間中に教えると言われましたか。すべての分野を教えると言われましたか。
どの先生も当然に教えてくれるとは限りませんよ。
また、教えてもらえないと不満を言っているうちは、受け身なんでしょうね。
勉強は受け身ではできません。という前に、そもそも土地家屋調査士の様な独立した資格業は受け身ではできません。
どちらにしても給料をもらっているのなら、本当に使えると思われない限り、様々な仕事を担当させてもらえません。もう少し頑張る必要も有りますね。
それを踏まえて、先生と再度相談したら良いでしょう。


「私の勤めている事務所は、とても残業が多く、仕事を家に持って帰らないとこなせないくらいでとても辛いです」

これも考え方ですね。
修行であれば、仕事のチャンスは多いのと少ないのとどちらが良いのですか。
仕事を家に持ち帰る事は御法度という事務所も多いと思いますよ。
それを持ち帰る事ができるなら、ある意味とても柔軟な事務所とも考えられますよ。
あなたは責任のないお茶汲みの様な仕事をして5時に帰りたかったのですか。
いつまでにどのくらいの実力を付けたら独立するかという自分の目標が曖昧だから、不満が有るのでしょうね。
とにかく今は修行なのか、就職なのか、何の為に頑張っているのか、もう一度自分で考えてみてください。


私は試験前の補助者経験も試験合格後の土地家屋調査士事務所への就職もしないで開業してしまいました。開業後必死で独学しました。これが今でも財産です。
独学も選択肢の一つです。
でも、誰にでもお勧めする事はできません。
上記の様な不満を持つ人なら、なおさら独学は無理でしょう。親切な事務所があれば、やはりそこで修行する方が良いでしょうね。

問題は本人の意識なんです。学生やサラリーマンだった頃の、受け身であったり被害者意識であったりを払拭しなければ、先に進めないのです。









2013年1月28日月曜日

近畿ブロック新人研修会にて

毎年お招きいただいている近畿ブロック新人研修会に今年も講師で行ってきました。
土地家屋調査士試験に合格し、土地家屋調査士会に登録して開業し、これから一人前の土地家屋調査士として頑張ろうという意欲に満ちた新人達に会える事が、私にとってもとても嬉しく大切な時間となっています。

今まで様々な分野の研修会の講師をしてきましたが、この新人研修だけは特別なものと考えています。
なにしろ受講生である新人の人生に関わる研修だからです。
この研修会が、受講生の方向性を決める大きな影響を残します。
だから、新人研修会の講師をするということは、とても難しい事だと思ってい
自分勝手な哲学を振り回す訳にも行きません。しかし、当たり障りの無いことだけ言っても、何も響かないでしょう。だから、新人研修会の講師をするということは、とても難しい事だと思い、とても気を遣っています。

私の研修の一番の目的は、受講生の固定概念を崩す事です。そして崩して迷いはじめた方向性を、改めて判断する指針を示す事です。
本来の、そしてこれからの土地家屋調査士のあり方について、気がついて欲しいのです。

受講生は合格率数%の試験に合格して世間から褒められるから、慢心している事があります。土地家屋調査士会に入会したら、土地家屋調査士の全員が合格者だから、その成功体験は何でも無い事だと気がつかなければなりません。
全国模試何位以内なんて、入会してから自慢げにお話ししている人を見た事が有りますが、それこそまったく意味の無い事です。今何をしているか、何ができるかが問題です。

補助者経験が長い人も気をつけなければなりません。
その事務所内で「何でもできる」と自他ともに評価されているのかもしれません。
ただし、それはその事務所の中の、しかも登記事務能力の評価です。
その事務所は全国の土地家屋調査士の中の標準的なレベルの事務所なのでしょうか。
補助者経験の長い人や2代目3代目の人は、他の土地家屋調査士をあまり知りません。
今の土地家屋調査士は不動産登記申請の代理業だけやっている訳では有りません。
全国には様々な土地家屋調査士がいることをお知らせしたいのです。

一度それらの小さな成功体験を謙虚にリセットする必要が有ります。
それが早くできる人が、一流の土地家屋調査士の入り口に立つ事が出入ると信じています。そうなれば、事務所経営についても考え方がブレなくなるでしょう。
物事を決めつけている人がブレない人ではないのです。柔軟で謙虚な考え方ができるからブレなくなるのです。

そんな新人が増えれば、この土地家屋調査士業界の未来も素晴らしい未来になるでしょう。そう堅く信じているから、新人研修をライフワークにしています。






2013年1月23日水曜日

訃報ー松岡直武日調連名誉会長

日本土地家屋調査士会連合会名誉会長 松岡直武先生がご逝去されました。

松岡先生は、私をこの役員の道に引き込んだ張本人です。
松岡先生がいなければ、私は今宮城会の会長をやっていなかったでしょう。
昔、東北から日調連理事に推薦されるときに「日調連の役員になったら仕事ができない。事務所が潰れる」と申し上げたところ、「役員になったから事務所が潰れるヤツは、役員をやらなくても潰れる」とお話しされました。
私も「そうかもしれない」と思ってしまい、ついこの道に入ってしまいました。すぐに騙されたことを感じましたが・・・。
でもその反面、日調連でたくさんの経験と勉強をさせて戴きました。
松岡先生には心から感謝しております。

松岡先生は日調連役員として、とても責任感の強い人でした。松岡先生しかできないことをご自分で理解して、それを睡眠を削ってもやり遂げました。
土地家屋調査士の進む方向に信念を持って突き進む会長でした。

松岡先生、早すぎます。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。


通 夜:平成25年1月24日(木)午後7時〜
告別式:平成25年1月25日(金)正午〜午後1時30分
場 所:公益社 西宮山手会館
    兵庫県西宮市城ヶ堀町1−40
    電話 0798−35−1151
    仏 式
喪 主:松岡直樹様
備 考:御香典・御供物はご辞退されるとのことです。
    事務所への葬儀・通夜のお問い合わせはご遠慮いただきますようお願い致します。





2013年1月22日火曜日

明日は民法研修会です

明日は民法シリーズ研修会の最終回です。
「総則」から始まってやっと「親族・相続」まで来ましたね。

民法については、分かっているようで細かいところになるとちょっと自信が無い、ということはありませんか。
いつもの民法シリーズのように、今回もできるだけ実務に即して問題を作りました。
法律の研鑽は実務に即して考えなければなりません。
明日の研修でも、土地家屋調査士の資格試験に何故民法の科目が必要かよく分かるように作ってみました。

下記に明日の研修から一例を挙げてみます。皆さん正確に答えられますか。
すべて回答には境界の法的論点の理解も必須ですが、明日はこれ以外にとてもたくさんの論点を用意しています。

会員の皆さん、この機会に自分の民法周辺の知識を確信に変えておきましょう。
そうでないと実務で手痛い失敗をするおそれがありますよ。
ということで、明日の研修会でお待ちしております。


境界の立ち合いに隣地所有者の妻だという者が出てきた。近所の人の話だと結婚はしていないという。確定測量図や境界確定協議書に署名・押印をもらう場合の留意点は何か。



隣地所有者甲に境界立会いを求めたが、甲は18歳の未成年者で父からの相続により所有者となったもので、母は健在である。この場合、甲が母の同意なく単独でできるのはどれか。
(1) 筆界を確認する場合の署名・押印
(2) 所有権界を確認する場合の署名・押印
(3) 分筆登記を行う場合の登記申請の委任状の署名・押印


上記 (1)~(3)のうち甲単独ではできない行為について、母も死亡している場合はどうしたらよいか。


隣地所有者甲に境界立会いを求めたが、認知症で判断能力がないというので、家族乙に立ち会ってもらい、測量図等に所有者甲の名で署名・押印をしてもらった。
次の場合、その行為が有効になるのはどれか。
(1) 筆界を確認する場合の署名・押印
(2) 所有権界を確認する場合の署名・押印
(3) 分筆登記を行う場合の登記申請の委任状の署名・押印


上記の場合、乙は自分が甲の成年後見人になっていると言っていたが、実はそうではなか
った場合はどうか。
甲が依頼者で、乙がただ一人の推定法定相続人である場合はどうか。


隣地所有者甲に境界立会いを求めたいが、甲は行方不明になっているとき次の各場合について答えよ。
(1) 甲の家族に立ち会ってもらい、測量図等に所有者甲の名で署名・押印をしてもらうことで、有効な境界確認となるか。
(2) 甲に不在者財産管理人Xが選任された。Xは、家庭裁判所の許可なく境界確認を行うことができるか。



Xが土地(甲地)と同地上の建物を所有していたが死亡した。相続人Aはその建物に居住しているが、相続人Bは他県に,Cは外国に居住している。遺産分割協議は行われておらず、遺言もない。甲地に隣接する乙地の所有者から境界確認を依頼されたので、甲地の所有者に立会を求めたいが、誰にどう立ち会ってもらったらよいか。


上記の場合、Xの依頼により甲地の確定測量を行い図面を作成したが、その後まもなくXが死亡し、甲地はXの遺言によりAが単独相続した。調査士業務報酬は60万円である。誰にいくら請求できるか。
















2013年1月21日月曜日

知恵と政策の共有と護送船団方式は違います

先日の研修会の後、七戸克彦先生と少しお話ができました。

七戸先生「鈴木会長は、ADRについてどの方向に行きたいと考えているんですか?」

鈴木「私個人の希望と、会長としての希望は少し違うんです」

七戸先生「と言うと?」

鈴木「私個人としては、ADR代理権について、ADRセンターにおける共同代理権で留まらず、その先まで狙いたいと思っています。
ただし、この途は全員で狙える方向ではないでしょう。会長として考えると、もっと会員の大半が馴染む方向も考えなくてはならないと思っています。たとえば筆界調査委員を発展させて、準公務員的な方向を探るとか・・・」

七戸先生「鈴木会長は、護送船団方式の考え方ですか?」

鈴木「いいえ。護送船団方式では最下位の会員に全員の歩みを合わせる事になります。それでは、今の変革の時代、土地家屋調査士は全滅します。
ただし、私は会長です。自分の好きな事だけ言う訳にはいかないのです。
土地家屋調査士会は、強制会です。すべての会員から等しく会費を戴いています。
だから会員全員にチャンスを与えるべきです。それも工夫して、理解できるように、チャンスを与えるべきです。できるだけ丁寧にわかるように説明する努力も必要です。
しかし、そこまでしてチャンスを与えても変わることの無い会員は、そこに置いていく決断もしなければなりません。それも組織を守る為です」

こんな会話をしました。

全国で様々な任意の勉強会があります。それはとても先鋭的で魅力的な勉強会をやっています。その勉強会の結果をどうするのか考えてみましょう。
土地家屋調査士全体が良くならないと意味が無いと考えるのか、自分たちのグループが良くなれば良いと考えるのか。

自分たちだけの小さなグループで何かを狙うなら簡単です。
とても楽とも言えます。
でもその発想は自分たちだけで編み出した独創的な発想でしょうか。
その人脈は自分たちで作ったものでしょうか。
少なからず業界や先輩が作ってくれたものではないでしょうか。
業界に還元しましょう。
そうすればお互いに高め合えます。

私は会長をやっています。
土地家屋調査士という専門家がどの時代の変革にも対応して、常に国民のお役に立てる資格でいるためには、会員全員の力の結集が必要と考えているからです。
それは護送船団方式という甘ったれた話ではありません。





*1/21 22:48 少し文脈を整理

2013年1月18日金曜日

阪神・淡路大震災から18年

本日平成25年1月17日は、阪神・淡路大震災から18年めの日です。マグニチュード7.3という大きな地震で、6,434名の命が犠牲になりました。あらためてご冥福をお祈り申し上げます。

阪神・淡路大震災を再検証して将来に備えようと考えていた者として、また実際に東日本大震災を地元で経験した者として、この18年は短いような長いような何とも表現できない年月です。

18年前の朝にテレビで見た映像は忘れられません。あの高速道の横倒しなど想像もできない映像に戦慄が走りました。寒い日でした。
その数年後に淡路島北淡町に行って野島断層保存館を見たときの生々しさも詳細まで覚えています。やはりテレビで見るのと現地に行くのはまったく違うと感じました。

その16年後にまさか自分の住んでいる東北で、それ以上のマグニチュード9.0という震災が起きるとは思ってもいませんでした。やはりあの日も寒い日でした。
私自身阪神淡路大震災について、当時出版された書籍や資料類を集め、勉強したつもりです。将来の災害に対して、個人としてまたは不動産の専門家として、災害に備える為に勉強しました。東日本大震災が起きるまでは、自分では震災に対して結構意識の高い人間のつもりでした。
しかし、東日本大震災が起こってみると、やはり地震は私にとっても想定外でしたし、正直個人的な地震への備えも不足していました。
今振り返ると、理性では理解していても、どこか実感が無かったのでしょう。勉強もどこか遠い国の物語を読んでいる様な気持ちだったのかも知れません。

このブログを読んで東北を支援してくださっている全国の土地家屋調査士の皆さんも、どうしても実感を持つ事が難しい事はわかっています。
実際に2年過ぎていない東北に住む人間ですら、もう喉元を過ぎたように見える人もいます。まして阪神に住む人も18年も過ぎれば、防災の備蓄すらない人もいるでしょう。

でも日本に住む限りどうしても地震は避けられないのです。我々日本列島に住む者の宿命です。

だから阪神淡路大震災と東日本大震災を含めた過去の災害をできる限り分析し、個人の立場でも、専門家の立場でも実感を持って理解しなければなりません。
そして機会あるたびに思い出して、備えなければなりません。

私はこの話題をしつこいまでに皆さんにお伝えする役を与えられたと理解しています。
そうでないと、大災害でお亡くなりになった方々に申し訳ないと思っています。



2013年1月16日水曜日

地図をつくった男たち:明治の地図の物語


山岡光治氏の新刊が出ました。
山岡氏については以下のブログで紹介させて戴きました。

2010/06/14ブログ 訪ねてみたい地図測量史跡
2010/10/01ブログ 山岡光治さんからのお便り

12月20日に刊行され、私にもご案内が届きました。
元国土地理院の職員であり、オフィス「地図豆」店主である山岡氏が書いたものだから,単なる地図の歴史上のできごとの羅列ではなく、地図づくりにかける先人の想いがこもっています。






これは各土地家屋調査士会を通じてご紹介しています。
そろそろ全国の会員の皆さんにご連絡が届く頃と思います。
宮城会は本日連絡を発送しました。

地図のプロである土地家屋調査士なら一読の価値があります。
価値と言うより、面白いと思います。

また以前も紹介しましたが、山岡光治氏のブログ「地図豆」も覗いてみてください。
興味深い記事が多いですよ。




のぼうの城

ちょっと忙しくて映画館に行く時間が取れなかったのですが、先日の「007スカイフォール」や「レ・ミゼラブル」など年末年始に久しぶりに観てきました。
順番は前後しますが「のぼうの城」も観ました。ずっと観たかったのですがタイミングが合わず、もうすぐ上映終了になりそうだったので、年末急いで観てきました。

これは本屋大賞を受賞した作品で、発刊された当時、私もすぐに読みました。歴史小説としてはとても軽いのですが、読んでみてその軽さが嫌ではありません。もともと映像を意識した小説だと思いましたが、最近調べてみたら、もともと脚本を先に書きそれを小説にしたようですね。そしてやはり映画化されました。

私の感覚では、映画化されることにより原作の良さを消してしまう小説が多いのですが、この作品は違うと思いました。映画化されて更に面白くなっています。珍しい事です。おそらく主演の野村萬斎がマッチしたのでしょう。

「のぼう」は「でくのぼう」の略です。忍城の城代になった成田長親のことです。
秀吉の小田原攻めの際、その「のぼう」様が、わずか数百人の武士と足軽百姓で、石田三成指揮する2万人の軍勢と対峙します。結果は火を見るより明らかな状況ですが、のぼう様は戦いを決断します。
ここで「のぼう」様と石田三成の人望の差が出ます。

このシチュエーション。古今東西、映画の定番ですね。
ここではネタバレになるので詳細は控えますが、「のぼう」様とそれを取り巻く様々なキャラクター設定と野村萬斎の演技を観るのはお勧めです。

映画は史実とは違うのでしょうが、秀吉の小田原攻めの際に、石田三成に忍城が水攻めされて、それが失敗したことは史実です。そこにどんな味付けするかが歴史小説の楽しさです。ここではネタバレになるので詳細は控えますが、「のぼう」様とそれを取り巻く様々なキャラクター設定が楽しく、野村萬斎無くしては成り立たない演技を観ることもお勧めです。

余計な事をひとつだけ。
この映画では、最初の水攻めのシーンがあまりにも凄まじい勢いで田畑や家屋を押し流すので、私個人はどうしても東日本大震災の大津波を連想させました。
このシーンのため、被災地に配慮して、既に完成していたのに公開が一年遅れたと聞きました。何年経とうが、ここだけは観る苦しさに変わりはないですが、配慮は感謝します。




2013年1月13日日曜日

西本孔昭先生「筆界特定制度運用の誤算」

昨日の東北ブロック主催研修会の午後の部は、元日本土地家屋調査士会会長西本孔昭先生による

「筆界特定制度運用の誤算」〜早くマスターして、次へ〜 

と題した講義をお聴きしました。

ADRは今全国49会に設立されています。この段階に来て、また次の課題が見えてきました。その課題の整理とその対策を考える上で、ADRや筆界特定はもともとどのような理念で始まったのかを把握する必要があります。西本先生は、ADRと筆界特定制度の創設に関わった当時の日調連会長ですので、当時どのような環境で、どのような理念のもとで、ADRを進めたのかについて、一番ご存知の方です。
今回はそのお考えをお聞きし、考え方を整理したいという企画です。

先が見えない、とても心配だという方々、
  今が最後のチャンスです

というフレーズで始まるレジュメでした。
久しぶりに「西本節」をお聞きしました。

司法制度改革においてやっと認識された
 「隣接法律専門職」の意義
   問われる相応しい努力

境界確定委員会の創設案を忘れてはなりません

境界確定委員会案がトーンダウンして筆界特定制度になりました

レジュメでもこれ以上書きづらいですね。まして具体的な細かい事はこのブログでは書くことは難しいです。
西本先生の講義を聴いた事のある方はご理解いただけると思いますが、誰でも読む事のできるこのブログでは、とても公開できる内容ではありません。西本先生の考え方は、会報「月刊土地家屋調査士」2月号に載るそうですので、そちらをご覧ください。

西本先生が日調連会長のころ、私も日調連の理事でした。
なにしろ熱い会長でした。
昨今、自分がなりたいだけの目的で手を上げる役員が多い中、西本先生は本当に土地家屋調査士の事だけ考えて会長になった方です。
勉強不足の役員を認めない厳しい方でもありました。誰に対しても「勉強しなさい」と言い、当時理事会で発言しない理事達を前に「休み時間にこの箱に全員意見を入れなさい」と言い放ったりしていました。

その西本会長が、ADRと筆界特定制度(本来は境界確定制度)という二つの境界紛争解決制度にかけた情熱は当時脇で見ていた私にもとても強く伝わりました。
私は若干意見が違うところも有りますが、西本先生は心から尊敬できる先輩だと思っています。

この西本先生が、もし今も日調連会長であったなら、ADRセンターや特別研修を、筆界特定制度や筆界調査委員を、どのように考えて、今どのように指導力を発揮していたか、見てみたい気もします。








2013年1月11日金曜日

七戸克彦教授「土地家屋調査士とADR」

先日予告させていただいたように、本日七戸克彦教授と西本孔昭日調連顧問のADRと土地家屋調査士に関する講義をお聴きする研修会を開催致しました。
受講された方は納得と思いますが、とても有意義な研修会だったと思います。

七戸克彦先生は九州大学大学院法学研究院の教授です。
ご専門の民法や水法以外にも、私たち土地家屋調査士の制度や業務にもご精通されています。会報にもご執筆されていますが、他に「土地家屋調査士講義ノート」(日本加除出版)などのご著書がありますので、皆さんも良くご存知の先生と思います。
今までなかなか東北に来ていただく機会が無かったので、私はとても楽しみにしておりました。

先生は、いつも井の中の蛙である私たちの業界を、その外から冷静に分析し、意見を言ってくださいます。
それらの意見を辛口と捉えて、聞きたくないという気持ちになる会員も少なくないようです。何故それだけ拒否反応があるかというと、その意見はとても「的を得ているから」だと思います。
日本の護送船団方式はもうすでに過去のものです。私たちはぬるま湯から出て、真摯に七戸先生の話を聞くべきだと思います。

本日の講義はADRを中心にしたお話でしたが、その中でもたくさんの示唆を戴きました。
ADRに関する的確な現状分析と、その問題点に対する打開策の検討までしていただきました。

私たちがすべきことは、この示唆に富む整理された論点に対して、一つ一つ個人として、また組織として、議論をして答えを出していく事です。
決めるのは七戸先生ではなく、私たちなのです。他人事では有りません。当事者なのですから。

本日の七戸先生の講義についての私のメモから、業界の戦略的な話なのでここに書くことができない部分も多いのですが、書く事ができる範囲でいくつかのキーワードを書き出してみます。


未来は開けているのに何故動かないのか

ビジネスチャンスはたくさん有るのに、調査士は好き嫌いが多いだけ


調査士業界には過去の成功体験を捨てられない人が多い

他の業界の動向を知らなすぎる

調査士が儲ければ受験生は増える

調査士には統計データが少ない
正確なデータ収集がない業界では将来が決められない

いったい調査士は何をしたいのか





2013年1月9日水曜日

007スカイフォール

007は第一作から全巻DVDを持っています。
なにしろ大きくなったらMI6に就職して、スパイになろうと思っていた私ですから。
歴代のボンドカーやあのスパイの秘密兵器(このレトロな響き)にときめきました。ボンドガールにときめくには少し幼かったようです。
ただ今考えると、私は本当はボンドに成りたかったのではなく、あの秘密兵器を作るQに成りたかったのかも知れません。

歴代のボンドでは、私にとってはやはりショーン・コネリーがダントツです。だから高校生の頃真似して、ワイシャツを素肌に着ていました。馬鹿ですね。
私の中にはそのショーン・コネリーが強烈に残っているので、今のダニエル・クレイグは三作目になるのに未だに馴染めません。確かにアクションも現代的リアルさを持っていて、ドラマも文句無いですよ。でも"I'm Bond. James Bond."って台詞がなければ、007映画でなくても、別のスパイ映画でも良くなる映画なんですね。
歴代のボンドは、本当に危機が迫っている場面でもオシャレな会話をしているもので、上質なスーツを着て素敵なボンドガールをボンドカーに乗せて「スパイとは思えない」キザな目立つ態度を取っているものです。
その立ち振る舞いこそが説明無しでも007であり、ジェームス・ボンドでした。
それに比べると、どうもダニエル・クレイグは、むしろ初期のボンドの敵役のロシアのスパイのようです。

そのダニエル・クレイグ主演の第三作目で007シリーズ50周年記念の「スカイフォール」を観ました。
そこまで文句言うなら観なければ良いのですが、MI6に転職を画策している私としては、すべての007映画を押さえておかなければならないミッションを持っています。
とりあえずチェックしました。
いや、確かに面白いのです。グランバザールの屋根の上でのオートバイのチェイスなど気に入るシーンもたくさんありました。

映画そのものは、「古い歴史を持っているものが現代でも価値を持ち続けるのか」というテーマが含まれています。
直接的には、MI6という情報機関が今の時代に必要かという問題と、その機関のボスであるM個人がもう引退すべきではないかという問題が描かれています。どちらも昔は大活躍したかもしれないけれど、今の時代にはもう不要ではないかと映画の中で問われるのです。
それは、取りも直さず50周年を迎える「007シリーズ」が今の時代も通用するのかという隠れテーマでもあるようです。

そこには、昔からこのシリーズを観ていないと意味が分からない楽しみが散りばめられています。たとえば、アストン・マーチンとそのシフトノブの中の赤いボタン、ワルサーPPK/S、ドライ・マティーニなどのボンドを象徴するアイテムにはニヤニヤしてしまいます。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、最後に懐かしい「マネーペニー」も出ます。このシーンは嬉しかったですね。
その反面、今回の007は、ガンバレル・シークエンスが最初に来ない、ひげ面で動き回る、ボンドガールとの絡みが少ないなど、今までのセオリーをかなり破っています。一番の違和感は、今までのボンドは敵のアジトに乗り込んで敵を壊滅させるという攻めるストーリーが定番なのに、今回はひたすら守るボンドであることです。
昔からのファンの若干の嘆きも知りながら、それも含めて新しい007を作っていく姿勢が、今のダニエル・クレイグに象徴されているのでしょう。今後新たな50年を生きていくシリーズにするなら、それも必要な決断なのでしょう。

そういえば60周年を超えて新しいステージに脱皮しようとしてもがいている業界が有りましたね。あそこも懐古趣味だけでは先が有りません。新たな決断が必要ですね。

今回の敵がボンドに「お前の趣味は何だ」と聞いたときに、ボンドはこう言いました。
「resurrection − 復活・再生」


2013年1月8日火曜日

七戸克彦vs西本孔昭ADRと土地家屋調査士を語る

新年早々、東北ブロック協議会では、以下の研修会を企画しています。
東北ブロックの会員の皆様は既にご存知とは思いますが、他のブロックの会員のためにも、また見落としている会員のためにも再度ここでお知らせ致します。

全国ではADR認定土地家屋調査士活用研修会として、受託してからの研修会が行われているようです。それも当然必要ですが、本来私たちが確認したいことは、それ以前のことだと思います。

全国の土地家屋調査士会が境界ADRセンターを設置する意味は
土地家屋調査士が境界ADR代理をする意味は
そもそも土地家屋調査士が日本に存在する意味は
それらを踏まえて私たちはどちらを目指せば良いのか

我々の業界を熟知した上で様々な示唆に富む発言をしてくださっている九州大学の七戸克彦先生と、ADRセンター設立の礎を築いた元日本土地家屋調査士会連合会会長の西本孔昭先生をお招きして、ADRを中心にして土地家屋調査士を語って戴こうという講演会を開催します。
お二人とも土地家屋調査士に対する指針を、辛口の表現で語ってくださる貴重な先生方です。
実際に、お二人の講演から何が飛び出すのか、私自身楽しみにしております。

このお二人を揃って東北にお招きすることは、なかなか難しいことで、今回はとても貴重な研修会になるはずです。
まだご参加未定の方は是非ご参加ください。
参加者には、必ず後悔させない講演会になると確信しています。

東北ブロック以外の方でも遠慮は不要です。
参加をご希望の方がいらっしゃれば、宮城会事務局(電話022-225-3961)まで遠慮無くご相談ください。歓迎致します。


記 

1.日  時  平成25年1月11日(金)
         11時00分~16時00分

2.場  所  「ホテル メルパルク仙台」 2階
         http://www.mielparque.jp/sendai/
        仙台市宮城野区榴岡5-6-51  電話:022-792-8111
        *お車で起こしの際には、近くの有料駐車場をご利用下さい。

3.内  容 
       11時00分 開 演   
       11時15分~13時15分  講義Ⅰ 
           講師:九州大学  七戸 克彦 氏
       14時00分~15時45分  講義Ⅱ 

           講師:日調連顧問 西本 孔昭 氏

4.当日お弁当を希望の方は、1,500円で申込予約をお受け致します。
  ※要予約 代金は当日受付にてお支払い願います。
  当日の受付は大変混み合いますので、釣銭のないようご準備願います。

5.会場がホテルのために飲食物の持ち込みが出来ませんのでご注意ください。

  ※こちらの研修会はCPDポイント付与対象の研修会となります。


この講演会は現在、低迷しています認定調査士の活用の糸口を探るため東北地方ではあまりなじみがありませんが、辛口で土地家屋調査士制度を語っていただくために九州大学の七戸先生、認定調査士の構想などを情熱を持って語っていただきます連合会顧問の西本先生をお願いして会員と共に土地家屋調査士制度を考える企画であります。 両先生の講義についてはこの機会を逃すと実現が難しいところがありますので多くの会員の参加をお待ちしております。

日本土地家屋調査士会連合会東北ブロック協議会



1/8 追記)
弁当手配は締め切りました。今からお申し込みの方は、飲食物の持ち込みができないので、お近くで食事を済ますようにお願い致します。




2013年1月6日日曜日

正論も覚悟が無ければ愚痴

昨年末に衆議院選挙も終わり、新しい年になりました。
今年は、日本が希望溢れる国に戻る切っ掛けの年になることを、祈念したいと思います。

我々専門家の世界も日本の制度の中で生きていますから、政治や社会経済の動向と無関係ではありません。日本は護送船方式の時代はとうに過ぎていますから、政治や社会にまったく無関心では生きていけない時代になりました。
経済政策やTPP対応などによっては、資格制度全体を揺るがす様々な影響が懸念されます。
また私たち東日本大震災の被災地では、政治や行政の動向次第で、復興が左右される事を嫌という程知りました。またそれらの動向によっては、我々土地家屋調査士の知見すら被災者の為に生かすことができないこともあります。

さて振り返ってみて、我が土地家屋調査士の世界にも今年は役員改選があります。全国の支部も単位会も連合会も役員が変わります。
ここも適当に選ぶわけにはいかない時代になりました。世の中は変わりました。何もしなくても日本国が守ってくれる時代ではありません。

居酒屋やネットで愚痴を言い続けている土地家屋調査士の皆さん、そろそろ眼を覚ましてください。
居酒屋で何か変わりましたか。それを長年サラリーマンの頃にやっていたんでしょ。
思い出してください。居酒屋で会社や上司に対する愚痴を言って何も変わらないから、自分で切り開くことができる世界に入ったのではないですか。

意見は外で言わないと、意見にはなりません。
正論も覚悟が無いと、愚痴にしかなりません。

どんなに皆さんが居酒屋やネットで正論を吐いても変わらないのですから、そろそろ動くべきでしょう。自分で矢面に立つ覚悟が無くて、誰かに「やれ」と言っているだけなら、結局何も変わりませんよ。誰かに人生を託すなら、サラリーマンに戻った方が良いですね。今よりは安定しているでしょうし。

納得していないなら、本気で変えましょう。
納得しているなら、本気で応援して加速させましょう。

新しい歳を迎えたのです。
皆で動いて、被災地も、土地家屋調査士の世界も、日本の国も、皆でやりがいのある世界を創りましょう。

本年もよろしくお願い致します。






2013年1月1日火曜日

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。

早いもので平成も四半世紀なんですね。
一昨年の東日本大震災からも、まもなく二年経ちます。
もう二年、まだ二年。様々な思いがあります。

あと二ヶ月で会長の任期が終わると思ってた2011年の3月にあの震災が起こりました。私の会長任期中に何故こんなことが起こるんだろうと思った事もありました。
あのときは震災を恨みましたが、その直後起きる全国の土地家屋調査士の仲間の連携と、宮城会会員の献身的な働きとを直接感じられ、土地家屋調査士を更に好きになったのも会長でいたからでしょう。

また昨年は、震災時にお世話になった全国の土地家屋調査士の仲間をお招きして、被災地を見てもらい、被災地を語ってもらう震災報告会を開催させていただきましたが、その際にも、全国と東北の仲間のありがたさを再確認させていただきました。

この二年間は私の人生の中でも、特に忘れられない二年間になるでしょう、

まだまだ被災地の復興は先が長い話です。
しかし、いつまでも嘆いている訳にもいきません。
新年ですし。

今年は更に前向きに動きます。
皆でもっと良い年にしましょう。
土地家屋調査士が新しい世の中でも真に必要な専門家でいるためにも。
また、いつの日か震災前よりも美しい故郷をつくるためにも。