山本兼一の原作を映画化したものです。
実は、原作は映画を見る前に慌てて読みました。
映画と原作を両方見るときは、できるだけ原作を先に読むようにしています。
そうでないと、本を読んでいても、どうしても俳優の顔が出てくるのでイメージが固定してしまうからです。
映画では、時間の関係でカットされた人物やエピソードもかなり多かったので、監督も苦労したのでしょうが、映画としてはそれなりに成功していると感じました。
でも興味がある方は、映画に出てこない息子など重要人物を小説で確認してみて下さい。
まったく違う味わいが有ります。
内容は、織田信長が、琵琶湖を臨む安土に壮大な城を建築するのに、その建築を命じた熱田の宮大工である岡部又右衛門とその仲間の物語です。
信長周辺の物語はさんざん書かれていますが、その番匠(大工)と城が主人公というのが目新しいかも知れません。
まあ岡部又右衛門役が西田敏行なのですが、彼は何の役をしても西田敏行に見えますね。
それでも映画として役者として成立するのがすごいけど。
妻役の大竹しのぶが良かったですね。
娘役の福田沙紀についてはコメントしないとして。
又右衛門に様々な試練が有るのですが、最初の試練が指図争いです。
いわゆる設計コンペです。
金閣寺を建立した京の池上家、奈良の大仏殿建造をした中井一門などの一部上場企業に対し、地方の中小建設会社の戦いの様相です。
施主であるあの信長の意向を無視した設計を、首を賭けてコンペに臨んだ又右衛門。
中島みゆきの「地上の星」が聞こえてくるような物語。
先日の新田次郎原作「剣岳-点の記」でも見られた、現代の日本人が(もしかしたら我々の業界も)、忘れかけている「矜持」がそこに見えました。