2013年5月20日月曜日

「法務局から言われたとおりにしないとダメですか?」に答える

先日の茨城青年土地家屋調査士会の研修会の質問から、今日も少し回答してみましょう。

「対法務局との関係はどうすべきか?言われた通りにしないとダメですか?」

新人からの質問とのこと。ちょっと答え難い質問ですね。
おそらく代理人として登記申請をした際に、その内容について法務局の登記官から何か指摘されたのでしょうね。そしてその指摘が土地家屋調査士として納得できていないのでしょうね。

大前提として、私たちの登記申請は登記官の言うとおりに行うのではなく、法律の言うとおりに行うのです。

本来は不動産登記法などの法律の趣旨と登記官の判断と土地家屋調査士の判断との三者が齟齬してはいけないのですが、もしどこかで齟齬があるとすれば、そのうちの何かが間違っているのでしょう。
法律が間違っていることは無いので、基本的に現場の状況を把握してどう判断するかの部分が登記官と土地家屋調査士で異なってしまっているのですね。

別の問題ですが念のため、法律が間違いでは無いけれど、時代に合わなくなっていることはあります。その場合は専門家として別の機会に提言しましょう。登記官が「法律が間違っている」と言われても、登記官も困るでしょうから。

質問に戻って、このような意見が違う場合、登記官と土地家屋調査士のどちらかが勉強不足と言うこともあるでしょうね。

でもその前に、現場を見た土地家屋調査士が書いている調査報告書が、登記官に説得力を持っていない記載内容だから、何か指摘されたのかも知れません。問題点と状況が登記官に伝わっていないのかも知れません。
実は私は会長として同業者の調査報告書を見る機会が有ります。中には本当に伝える気があるのか疑問な記載内容の調査報告書があります。資格者が本気で書いているのでしょうか。この文章に本当に職印を押すことができるのでしょうか。そんな疑問が残るものも確かに有ります。
そうでないにしても、長年土地家屋調査士は「図面を提示して一目瞭然」という世界を過ごしてきたために、他人に読んでもらうための文章力が弱い傾向があります。(えっ、このブログの文章が典型ですか?)
我々も一度謙虚に作文そのものの練習をした方が良いかも知れません。

さて、その不動産の現況と論点を整理して登記官に伝えた上で、それでも登記官と意見が違ったら、簡単に従わずに、しっかりと議論すべきです。もちろん、「前はこれで通った」「前の局ではこうだった」などの経験則はお互いに言わずに、法律や先例・判例を根拠に議論しなければなりません。この部分がとても不足しているように思えます。

現況把握して論点が一致しても答えが決まらなければ、条文や先例に無い部分が問題でしょう。ここを判断するのは不動産登記法の趣旨から理解している必要があります。ここについては、土地家屋調査士も登記官も勉強が不十分な方がいます。
不動産登記法はとても古い法律を改正してきているものですから、現代の不動産の状況に合わない箇所も有ることは事実です。だから、もし不動産登記法がその理念を変えずに今年成立したのなら、どのような条文になっているかを考えるべきです。先例もそのような考え方でできています。

議論しても登記官を説得できないのなら、最終判断は法的に登記官個人に与えられていますので、それは登記官判断で登記することになるでしょう。
審査請求も認められていますが、そこまで議論したとすれば法務局内でもかなり検討されているでしょうから、難しいかも知れません。

また登記申請する前から見解の相違が予想されるなら、事前相談を使う方法も有効だと思います。

どちらにしても疑問があれば、その前に近くの先輩に相談することをお勧めします。
この業界は面倒見が良いですよ。