2013年5月30日木曜日

「はんこ自販機」を見つけた



こんなものがあるのですね。
「はんこ自販機」だそうです。
印材もチョイスできて、見栄えの良い実印にも使える印を5分で彫るとのことでした。

昔はんこは、職人が手で彫っていたもので、一人前になるのに修行が必要でした。
その後、はんこ屋さんにコンピュータが入ってきて職人でなくても仕事ができるようになりました。
そしてついに店舗も不要な自動販売機ができたのです。

職人気質のはんこ屋さんの手彫りの美しい印影がまったく無くなるとも思えません。その職人じゃないと彫ることができない書体もあると思っています。
しかし、大半のはんこ屋さんの存在意義がどこに残るのか、そこはとても心配です。

今は誰でも自分でワープロで印刷する時代です。
町の印刷屋さんも、ずいぶん減りました。

そして3Dプリンタの時代に入りました。
3Dプリンタも個人で入手できるところまで安くなってきました。
まもなく、ある種の造形の専門家が不要になるかも知れません。

振り返ってみて、私たち土地家屋調査士の専門性は、どんな時代でも残るのでしょうか。
コンピュータに置き換わることは無いのでしょうか。

私たちの業務の中の技術的な部分、たとえば製図にしても、以前は手書きだったので多くの修行が必要でした。
ペンのメンテナンスからはじめ、直線を等幅で引くこつや、一点鎖線を美しく仕上げる方法など、かなり練習したものです。
(製図用のグッズは、文具ヲタクの私を魅惑するものばかりでして、当時とても幸せを感じておりました)

また、その製図をもっと専門化したトレース屋という専門職能が、つい近年までありました。
トレース技術による図面はとても美しく、私は憧れと尊敬の眼差しで見ていました。
それが今、CADに置き換わり、修行がなくても誰でも同じ線を引くことができるようになりました。
あれだけ日本に存在したトレース業は、今は消滅しました。

測量についても、機械化によりかなりの省力化ができてきました。

ただし専門家という立場は、専門的知見があってはじめて専門家です。
私たちが個人に資格を与えられるのは、その個人の法的知見により土地や建物の調査に登記前提の法的判断をしているからです。
私たち業界は、筆界特定でも境界ADRでも、他の業界が追いつけないレベルのノウハウを積み重ねています。ですから、これらの部分がコンピュータに置き換わるはずがないと思っています。

それでも、少なくても20年も前のノウハウで、定型的な登記申請だけを担当して、お客様に登記完了証と図面だけ渡し、丁寧な説明もしていない人は淘汰されるかも知れません。
書式パターンの暗記だけであれば、単純なデータベースに置き換えることができます。

私たちは、時代に合わせた専門的知見の絶え間ない進化と、時代の波に翻弄されない専門的立場とのどちらも兼ね備えなければなりません。
それを怠ったら、「あなたの仕事は機械に置き換ることが可能ですね」と世間に言われるかも知れません。



ところで自販機を見て、ちょっと考えました。
相手が人間なら頼みにくい文字も、機械なら彫ってもらえるんだと。
よし「漢委奴國王」と彫ってもらおう。