2012年5月31日木曜日

留まることのリスク

「たしかに風呂から出れば寒いのだけれど、いつまでも入っていると水風呂の中で死なねばならないことを、頭ではなくからだ全体で知ることが大切だ。」

2010年12月14日のブログ「危機感と行動」でも紹介しました中島義道氏の言葉です。

昨今の社会構造や経済構造の変化は激しいものがあります。
日本国の経済が遠いギリシャの選挙結果に左右される時代に、土地家屋調査士だけが他と切り離された孤高の存在でいられるわけがありません。

土地家屋調査士は個人として団体として、社会に対して意見を出さなければなりません。
特に専門分野に関することについては、しっかり意見を出さなければなりません。
これは国民の皆さんから付託を受けた分野の専門家として当然のことと思います。

確かに私たちの業界は、過去もたくさんの意見を出してきました。
規制改革・・・司法制度改革・・・地方分権・・・不動産登記・・・法人化・・・報酬額・・・ADR・・・筆界特定・・・etc.
しかし、その意見の根拠はどこから来るものでしょうか。誰のための意見なのでしょうか。

その中には、改革推進に見える意見も有りましたし、改革反対に見える意見も有りました。
その変革反対に見える意見が、
「今の体制が変わらない方が、組織として何も考えなくてすむから」
「今の体制が変わらない方が、個人として新たな技術を学ぶ必要も無いから」
・・といったような安易な考えが根底に有るとすれば、世間に説得力がありません。

社会に専門家団体として意見を出すときは、自分たちが存続するだけが目的の意見ではないのか、そもそもその意見は内部で本気で議論しているのか、一度見直す必要があると思います。

また「正論でなければ認めない」と子供みたいなことを言っていても、世の中は正論以外の選択肢で動くこともあります。それは、社会・経済・政治を見ていれば分かります。

土地家屋調査士の価値観から言って最悪な変革でも、変わった世の中でも国民の皆さんを守る使命があるはずです。
そのためには、望まない選択肢の研究もしなければなりません。


世の中は変わっています。
東日本大震災を経て、日本はその変革のスピードを速めたように見えます。

「専門家として国民を守るために存在する」というしっかりと変わらないスタンスを貫くためには、表面の変化には対応しなければなりません。
むしろ変化するのが世の常なら、留まることがリスクになります。
変化を先取りするくらいの意見を出したいものです。