2012年9月7日金曜日

がれき 〜沈黙の海から


がれき

ひとくちに
<がれき>と言ってしまえば
それだけのことかもしれない
だが<がれき>なんてひとつもない
どれもこれも
家族が長い時間をかけて
こつこつと積み上げてきた
思い出の詰まったものばかり

ガラスのかけらひとつにも
泥水に浸かった人形にも
散乱している皿や箸やスプーンにも
夜店で買った指輪にも
みんなみんな
たくさんの想いが込められている

けんかもしたけど
笑いもあった
このテーブルでみんなで食事をした
こどもの誕生を喜び
老人の死を悲しんだ
折れ曲がり泥にまみれた柱は
もう何の役にもたたないが
それらのことをみんな見つめて
一緒に笑い
一緒に泣いた

<がれき>なんてひとつもない
ほんとうにひとつもない

みんな宝物ばかり







東日本大震災の追悼詩集「沈黙の海」を読みました。
菊田郁氏(宮城県登米市出身・元中学校教員)の詩集です。
定価1000円ですが、内300円をみやぎ震災遺児・孤児募金に寄金するとのこと。
仙台の大きな書店に置いてあります。