2019年5月13日月曜日

土地家屋調査士事務所で勉強すること

先日試験合格者からの相談の中に、以下の希望を聞きました。

「実務経験が無いので土地家屋調査士事務所で勉強したい。すでに事務所は決まっている。半年ほど学んで独立したい」

あまりにも世の中を知らない発言だと思ったので、以下の助言をしました。


・事務所に入るということは、給料をもらって働くということです。その事務所の役に立つということです。何かを誰かに教えて欲しいだけなら、給料をもらうどころか授業料を払うべきものです。そこを勘違いしてはいけません。だから仕事をしっかりして、その上で教えてもらうという覚悟がなければなりません。

 まして、補助者募集をしている事務所は、忙しいから働く補助者を求めているのであり、受講者を求めているのではありません。また大きな事務所の場合、歯車の一つになるだけかも知れません。本当にその事務所が総合的に教えてくれると約束したのですか。単一作業だけ担当しても総合的な実力が付くとは思えません。

・その事務所の先生がしっかり教えてくれると約束したとしても、実務経験が無い方を半年で、しかも仕事の合間に教えて一人前の土地家屋調査士として独立させるということは、まず無理でしょう。あなたがどんなに優秀でも、私なら半年で教える自信は有りません。

 毎日休まずに半年間勉強して、毎日新しいことを1項目マスターできたとしても、半年なら182項目しか学べません。土地家屋調査士の業務はそんなに浅いものでは有りません。ちなみに私は38年間今でも毎日勉強を続けていますよ。

・逆の立場の雇う方からこの件を考えてみましょう。働いてもらうにしても、よほどの単純作業でない限り、業務の準備をして指示を伝えるのに結構な時間を取られるものです。その間に自分でやった方が早くて正確なものに決まっています。また一人雇えば、その人の分の机やコンピュータ、測量機器、自動車等々の設備等も増やす必要があるでしょう。

 では何故雇うのでしょうか。長く雇えば、その後にこれらの初期投資が回収できると思っているからです。だから雇う方から考えても、スポット的な単純作業以外では半年間の短期雇用は有り得ないのです。

・あなたはこれから働く事務所が決まっているとのことですが、その事務所の土地家屋調査士の先生に、半年後の独立計画の了解を得ていますか?双方理解が無いと半年後にトラブルになる可能性がありますよ。その事務所の先生は、地元の土地家屋調査士の先輩になる方です。円満退職しておかないと何かと困ることがあると思いますよ。

この補助者雇用に限らず、本当に大切なことを曖昧なままにして、他人と物事を始める人が多いですね。嫌なことや大事なことの話し合いを避けて、お互いに自分に都合の良いことだけ考えているのでは、先が見えています。
これくらいの話し合いや交渉ができなくては、将来あなたが独立して事務所経営することはとても難しいでしょう。


後日談)
彼は雇用してくれる土地家屋調査士とこの点をしっかりと話し合って勤め始めたそうです。良かったです。応援しています。