「諸君はきのうの専門家かもしれん。しかしあすの専門家ではない」
日露戦争の旅順攻撃を前にして、乃木希典大将が率いる第三軍を仕切っていた参謀長伊地知幸介に対して児玉源太郎が言った言葉です。
大本営からの作戦変更に対して乃木軍はすべて断ってきました。
この判断は、伊地知をはじめとする当時の専門家の中途半端な専門知識によるものでした。判断に一番必要な情報が誤っているのです。
「豊島も伊地知も、じつは専門家はどの専門知識ももっていなかった。・・(略)・・かれらは一知半解の知識で、対面だけは傲然として専門家の態度を東京の「しろうと」に対してとってみせたのである。」(坂の上の雲から)
伊地知は参謀として評判が良かった訳では無さそうです。それなのに選ばれたのは、「司令官を長州がとった以上、参謀長は薩摩にせねば・・・」という選ばれ方だったらしいのです。まあ、中途半端でも素人をごまかす程度ならできるでしょう。
それにしても当時、日本全国のための人選のはずなのに、現代の某政府、某連合会の人選のような話が有ったようです。
中途半端な専門家が一番始末に負えません。
むしろ中途半端な知識があるから、かえって柔軟な思考ができません。
実力が不足しているのは、おそらく本人が一番知っているのでしょう。
でもその実力のまま立場を持つと、変なプライドだけ出てきて、そこをごまかそうとします。
専門家と名乗るなら、常に謙虚に、常に未来を見据え、常に最新の知識を求めていなければなりません。
専門家個人としても、「自分は明日の専門家ではない」という謙虚さを持って、日々研鑽していなければ、専門家の看板を下ろして欲しいと思います。
まして「きのうの専門家」だけが統括する組織なら、国民に何の役にも立たない組織になります。