2014年10月6日月曜日

村上海賊の娘

「のぼうの城」以来の和田竜作品です。今年の本屋大賞受賞で、厚い本で上下2冊ですが、良くも悪くも一気に読める本です。
本屋大賞は毎年付き合って読むのですが、この本もお盆あたりで読んだ本のうちの一つになりました。微妙な感想なので、ブログに書くのが遅くなりました。


和睦が崩れ、信長に攻められる大坂本願寺。
頼みの綱は瀬戸内の「海賊王」村上武吉による海上からの兵糧支援だけと思われる。
毛利家は村上海賊をなんとか味方に付けようと会いに行く。
果たして村上海賊は毛利方に付くのだろうか。

さて、この村上武吉の娘に景がいる。
この娘は、海賊船に乗り込んで帆別船を払わない船に自ら乗っ取りをかけるほどの苛烈な娘であり、しかも醜女として通っており、20歳になっても嫁のもらい手など有る訳も無いのである。
しかし、実はこの景は南蛮人のような目鼻立ちのハッキリした現代では美人なのだが、当時としては美人の基準からはかけ離れているのである。

そんな情勢の中、景が乗っ取りをかけた廻船の中に、荒くれどもに船内に閉じ込められた安芸門徒(一向宗の信者)たちがいた。門徒たちは、織田信長に包囲され窮地に陥っている大坂本願寺へわずかながらも兵糧を持参し、そのまま兵士となって戦うつもりだった。
門徒の中の源爺は「見目麗しき村上海賊の姫様」と言い出す。景はそんなことを言われたことがない。源爺の話しから泉州では南蛮人のような顔立ちの景を美しいと思う者も多いと聞き、景は信者達を船に乗せて大阪本願寺に向かう。

それから第一次木津川合戦が始まるのである。

重厚な時代小説のようなものを期待するとちょっと違います。
人物設定が今風でキャラクターが単純化されています。
最初はどうも景の性格が軽くすぎて、私の読書嗜好に合わず、自分で最後まで読み終わることができるかという感じを持って読み進みました。

村上海賊はあの戦国時代に活躍しているのに、所詮脇役だし、そう多くは小説の俎上に上らない素材です。素材にはとても興味がありましたので、我慢して読み進めるうちに、小説の中も合戦が進むにつれて面白くなりました。

特に下巻では織田と毛利の難波沖の海戦が凄まじく書かれています。
戦国の合戦舞台の小説はたくさん読みましたが、海上の合戦はここまで書かれている事がないので、その部分は興味深く一気に読むことができました。

人物造形も、主人公の景だけでなく、すべての登場人物が独特なキャラ立ちをしていて、読んでいれば好きになるキャラも有るでしょう。
しかし私には、あの合戦の中の人物の会話として違和感だらけの会話に思えます。
少なくても昔からの典型的歴史小説の愛好者にとっては現実感が無さ過ぎます。
ただそれはテレビドラマや映画なら許容範囲のキャラだと思います。
もともと脚本家である和田竜氏が書いているので、良くも悪くも「のぼうの城」と同じテイストを感じます。
なにしろこの本を読みながら「この人物は役者で有れば誰」とキャスティングしたくなりますし、読んでいると映画化されたときの映像が目に浮かぶようで、ここは和田竜氏の筆ならではの部分でしょう。

おそらくテレビか映画になればそれなりにヒットするのでしょうね。
このブログで微妙な書評をしているようですが、もちろん映画になったら私も楽しみに観に行きますよ。
歴史ドラマとしてではなくて、強くて綺麗なお姉さんと熱い男達の出てくるとても面白い冒険活劇チャンバラ映画として。