避難所の人たちが今望んでいる事は、間違いなく仮設住宅に移り住む事です。
ですから行政も大急ぎで準備していました。
皆、仮設住宅を望んでいるから、不公平の無いように抽選で入居者を決めています。
その上で、当選した人は喜んで仮設住宅に移るだろうと、皆信じていました。
しかし現実はそうではありませんでした。
3日前のニュースで「仮設住宅 当選の7割入居せず」という話題を流していました。
ご覧になった人も多いでしょう。
あの南三陸町で、町内の仮設住宅に当選した世帯のおよそ70%が、実際には入居していないとのことでした。
理由はいろいろ有るようです。
一番大きい理由は、仮設住宅に入ると自立しなければならない事です。
入居した途端に食料や物資等の支給が打ち切られます。光熱費も自分で出さなければなりません。病院への無料送迎バスも無くなります。
だから避難所を離れられないのでしょう。
これらの理由で避難所を離れられない人達を単なる「わがまま」と断じないでください。
皆、いつまでも避難所にいられない事は理解しています。仮設住宅に移っても、やはりいつまでもいられません。むしろ自立できるなら、既に避難所を出ています。
今回の被災で、家族も収入も失った方々が多いのです。
病院に連れて行ってくれる家族が亡くなった老人もいます。足腰が弱く、仮設住宅から自力で病院に行く事が難しい人たちもいます。
基本的に金が無いこともあります。
皆さんは「でも銀行のお金は流されないでしょう。」と言うでしょうね。
それはそうです。しかし、もともと経済が停滞していた地域です。
その仕事も無くなりました。
そしてすべての動産も流されたのです。
一番の問題は先々読めない不安です。
またお金があったとしても、まだ町中に日用品販売の店舗がほとんど無い状況で、老人がどこまで買いに行かなければならないのかという問題も有ります。
だからと言って、当選しながら避難所に移らない事は、落選した避難者には納得できない話でしょう。避難所に引っ越さない方々は、理由は何であっても、避難所は辞退すべきでしょうね。
避難者を支援する為には、そのニーズを把握しなければなりません。
それでも、避難者のニーズの把握は難しいですね。
もしかしたら、避難者自身も自らのニーズを把握していないかもしれません。
その中で、どのようなヒアリングをすれば正確にニーズを把握できるのか。
少なくても、被災地から離れた場所の机上で、阪神淡路の事例をひも解きながら、避難者のニーズをステレオタイプで考えているようでは答えは出ないでしょうね。