2015年10月29日木曜日

研修会で盛り込み過ぎは禁物と考えています

先日、研修会の講師を初めて担当する方から、研修会に使うスライドについて意見を求められました。
初めての講師って気合いが入りますよね。
スライドを見せてもらいましたが、思ったとおり「盛り込み過ぎ」でした。

研修会の講師は誰でも、受講してくれる皆さんの為に、できるだけたくさんの事をお伝えしたいと思います。
でも受講者の目的意識やその分野のスキルはそれぞれです。
もともと参加が任意の研修会と、参加義務のある研修会では、なおさら受講者の姿勢はそれぞれ別になるでしょう。
持ち時間内で、その多様な受講者に何を伝えられるのか、とても難しいですね。

研修会の内容にもよりますが、多く戴いても3時間が限度の研修会では、なかなか伝えたいこと全部を伝えるのは無理です。
だからこそ講師はたくさん盛り込んで頑張るのでしょう。
でもそれでは逆に伝わらないのです。

私が研修会で考えていることは、枝葉まで教えることではありません。
先日も「区画整理法」の講師をしましたが、「区画整理」が「技術」か「法律」かさえ区別が付かない受講者に対して、2〜3時間で枝葉まで教えることは無理です。
だから、受講者に「その分野の勉強を今後してみたいと思わせること」、「その分野の勉強をするには何から始めれば良いかを教えること」、そして「勉強をし始めたときの指針としてその分野全体の成り立ちを伝えること」です。

前も書きましたが(講師もプロ意識を)、受講者の「理解」の先の「共感」までいかないと、研修は成功とは言えないと思っています。

理解したからと言って、行動に直結しないことは多いです。
たとえば「お前の言うことは分かった。でも俺は違う」ということでもあります。
共感まで行けば「分かった。確かにそうだよな。やってみる」ということになります。

詰め込むことができるのは理解です。
でも一期一会の講師が伝えたことが理解を超えて参加受講者の共感まで行くことができるのは、せいぜい30分に1項目程度のことと思っています。
文章で言えば1行程度のことです。

私が研修会に臨む時は、とにかく受講者のスキルや思考を事前リサーチします。
受講者を知らなければ響く言葉は伝えられませんから。
いわゆるスカウティングです。
そして講義時間に3時間戴けば確実に伝えられるのは4〜6項目、2時間であれば3〜4項目と考えます。
それらの項目を確実に伝えるために、様々な受講者の考えを想定して、様々な角度から1項目あたり30分程かけて説明します。

そしてスライドを作るときは、まず伝えるべきことが4つなら、その4枚のメイン・スライドを作ります。それを固めたら、そのメイン・スライドを理解して共感を得てもらうためのサブ・スライドで固めます。

盛り込みすぎで何も伝わらないよりは、1項目でも確実に伝えたい。
そんな感じの研修の方が結局受講者のためになると思っています。