2015年10月8日木曜日

めぐり逢わせのお弁当

ここのところ、インド映画を見始めました。
その中のひとつ「めぐり逢わせのお弁当」です。



この映画良かったです。インド映画っぽく無いです。
インド映画見始めたくらいで言うなって言われますよね。

インドの伝統的文化・芸術には基本的に9つのラサ(感情)を入れることが求められます。当然に映画にもこの9つのラサが入っているのがインドのお約束になります。

9つのラサ(ナヴァ・ラサ)とは、以下の9つだそうです。
  (1) シュリンガーラ (恋情) 
  (2) ハースヤ (笑い・ユーモア) 
  (3) カルナ (悲しみ) 
  (4) ラウドラ (怒り) 
  (5) ヴィーラ (勇敢) 
  (6) バヤーナカ (恐怖) 
  (7) ビーバッサ (嫌悪) 
  (8) アドブタ (驚き) 
  (9) シャーンタ (平安) 

ですからインド映画を観た後には、てんこ盛りの満腹感があるのですね。

でもこの映画少し違います。
少なくても唐突な踊りや歌はありません。

少し内容に触れます。

インドには弁当配達という文化があって、大きな社会システムになっているようです。
ムンバイのオフィス街では、お昼どきともなると、ダッバーワーラー(弁当配達人)達が慌ただしくそして正確にお弁当を配って歩きます。誤配送される確率は600万分の1とのこと。

そしてそのシステムの中で、何故かお弁当が誤配されてしまいます。
お弁当を作ったのはイラ、受け取ったのはサージャン。

夫との関係が上手くいっていないイラは、夫の愛情を取り戻すために腕によりをかけたお弁当を作って夫の職場にお弁当を送ります。
間もなく早期退職を迎えるサージャンは、妻を亡くして弁当屋から仕出しのお弁当を受け取っています。
ある日、サージャンにイラの作ったお弁当が間違えて配達されました。
サージャンはその旨さに驚き、イラは空っぽのお弁当箱に歓びます。しかし帰ってきた夫にお弁当の感想を尋ねますが噛み合いません。そして誤配されたことに気が付きます。
不審に思ったイラは翌日のお弁当に手紙を入れてみます。

ここから二人のお弁当を通じた手紙の交換が始まります。
見知らぬ相手だからこそ、打ち明けられることもあります。そんなやりとりの中で、お互いの人生を見つめ直します。
イラは気持ちの離れた夫や病気の父親と困窮する母親に接しながら孤独感が増してくる自分の人生を、サージャンは妻に先立たれただ早期退職の日を迎えようとしていた無感動な自分の人生を。

二人の間に手紙による心の交流が始まります。それによりお互いにこれからの人生を前向きに生きようと考えます。
お弁当の誤配だけで通っている交流がいつまで続くのか、二人は実際に会うことが有るのか、二人はどんな人生を望むのか。

構成も良く、様々な伏線も、脇役キャラクターも、よく考えられています。
サージャンの後輩で空気を読めないシャイク、サージャンの隣家の家族、近所の子どもたち。
脇役では、イラの住まいの階上の「おばさん」がとても良いですね。
窓越しで声だけなんですが、イラのことを思いやる言葉、励ましがイラの支えなのでしょう。

一つ一つのエピソードの積み重ねから、二人の心の変化がよく分かります。

“人はたとえ間違った電車に乗ったとしても、正しい場所へと導かれる”

この映画、最後は様々な解釈を残したまま終わります。
起承転結がハッキリしたインド映画には珍しい終わり方です。
その分余韻が残ります。
観終わった人たちと、イラやサージャンの「ラストシーンの先」「正しい場所」を語り合いたくなる良い映画だと思います。
観た人は声をかけてください。語り合いましょう。


ちなみに今日のランチはインド料理店でカレーを食べました。