先日のラグビーワールドカップ2015のグループB開幕戦で、あの南アフリカ代表(スプリングボクス)に勝ちました。
あの試合のラスト、80分経過後にペナルティを与えられ、キックで引き分けに行くと誰にでも思えたシーンで、なんと勝ちに行きました。
すでに時間は過ぎています。誰かがミスしてプレイが止まったら、そこですべてが終わってしまいます。
引き分けでも大絶賛される試合で、あの勇気。観ていて涙が出ました。
ここ20年はサッカーばかり観ていましたが、久しぶりにラグビーに震えました。
あらゆる海外のメディアから大いに賞賛された試合です。
何故ここまで盛り上がったのでしょうか。
もちろん南アフリカ代表がワールドカップで過去2回優勝し、世界ランク3位の強豪国だからです。
さてその南アフリカ代表チーム(スプリングボクス)ラグビーを扱った映画、「インビクタス/負けざる者たち」を久しぶりに思いだし、先日の出張の移動時間に観ました。
舞台は1994年の南アフリカ共和国。
反政府活動家として27年間投獄されていたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)が、1990年に釈放され、この年に同国初の黒人大統領となりました。
人種の壁が取り払われ、一気に平和になったのか、そんなことはありません。
むしろ今までのルールによる秩序が変わり、治安も経済も不安定になりました。
マンデラ大統領は、首を切られると覚悟していた白人官僚達を残し、自分のボディガードチームに白人も採用しました。先日まで命を狙っていた相手です。
少しずつマンデラの考えが浸透していきます。
映画の冒頭で、整備されたグラウンドできれいなユニフォームの白人達がラグビーの練習している一方、柵が設けられて行き来ができない道路を挟んだもう一方の土のグランドでは貧困層の黒人たちがサッカーをしている。アパルトヘイトの象徴であるシーンから始まります。
当時ラグビーは白人のスポーツであり、国内の多数を占める黒人には不人気のスポーツでありました。しかも当時の代表チームは低迷期であり、練習試合でもとても弱いチームでした。
マンデラはそのラグビーを国民の団結の象徴になると考えて、代表チームのキャプテン、フランソワ・ピナール(マット・デーモン)を茶会に招き、励ましました。
その後代表チームのンバーたちは、マンデラの意向で貧困地区の黒人の子どもたちにラグビーの指導に赴きます。当初嫌々ながら参加していたメンバー達ですが、国民のあいだで徐々にチームの人気が少しずつ高まり、その活動が国内のみならず世界的に注目されて来ました。選手達の気持ちにも変化が現れます。
翌年1995年の自国開催ラグビーワールドカップにおいて、彼らは予想外の快進撃を見せます。
そしてついには決勝進出を果たします。
試合ごとに国民は結束を固め、一致して代表チームの試合に熱狂します。
そしてついに、すべての南アフリカ国民が見守る中、最強ニュージーランド代表オールブラックスとの決勝戦を迎えます。
ちなみに劇中でオールブラックスの強さを示すのに、1995年の大会でオールブラックスの控えチームに日本代表が145対17で負けた話題に触れています。
マンデラ大統領役のモーガン・フリーマンの演技がとても素晴らしいのです。
そして最強の身体を造って撮影に臨んだマット・デーモンが良いんです。
監督はあのクリント・イーストウッドです。
この映画、史実を描いています。
客観的事実のどこを切り取り、どこを造り込むのか、史実を映画にするのは難しいですね。物語の結末は誰でも知っているし、登場人物のほとんどが生存している20年前の話しですから。
マンデラが釈放されてからどんな行動をしたのか、スプリングボクスは優勝したのか、皆知っています。でも私は心から感動しました。
クリント・イーストウッドは監督になってからハズレが無いですね。ワールドカップの試合を観たばかりだから、ちょっとプレイに物足りなさもあるけれど、仕方ありません。これは単純なスポーツ映画ではありませんから。
これは、マンデラ大統領の映画です。
代表チーム(スプリングボクス)の最強の敵オールブラックスとの戦いを描きながら、マンデラ大統領の最強の敵アパルトヘイトとの戦いを描いています。
27年間の投獄から解放されて、それでも相手を憎まずに相手を許すことで、国内融和を進めていく大統領の行動が、素晴らしく感動的に描かれています。
インビクタス(Invictus)とは「征服されない」「屈服しない」を意味する語。
そして劇中でマンデラが繰り返す詩は、ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの「インビクタス」の一節です。「我が運命を決めるのは我なり、我が魂を制するのは我なり」
今週末24日深夜、ワールドカップ準決勝で南アフリカ代表(スプリングボクス)とニュージーランド代表(オールブラックス)との戦いがあります。
この前後に、この映画を観ていない人はもちろん、観た人もこの機会に観直してみませんか。
良い映画です。