2014年1月4日土曜日

さよならドビュッシー 映画

2012年7月にこのブログで紹介した「さよならドビュッシー」ですが、2013年1月に映画化されました。
そのときはどうしても観に行く時間がとれなくて、残念ながら観ることができませんでしたが、この年末にTV放送されたのでとても楽しみに観ました。今更ながら1年遅れの感想を書きます。

私はミステリーやSFを読み漁った時期があります。
その上で感じていることですが、この2つの分野(分けにくい作品も多いですが)では、トリックやアイディアを思いついただけで、それだけに頼った作品があまりにも多いと言うことです。
やはり名作と言われるものは、むしろそのトリックの部分を除いても文学作品になっているものです。

私がこの原作を気に入ったのは、ミステリーの部分だけでなく、むしろその他の部分です。前回の私のブログからちょっと引用します。

何不自由無い生活をして音楽学校に進む主人公が、突然の火災で資産家の祖父と仲良しの従姉妹を失い、自分も全身大火傷を負う。主人公の、指も満足に動かせないところからピアニストを目指しての壮絶な闘いと、それに不審な事件が絡む。

キャラクター設定がしっかりしていて、一人一人がよく描かれています。ハンディキャップを背負ったヒロインが頑張る姿と素晴らしいコーチ。私の世代にドンピシャのスポ根テイストも満載。
ミステリーが無くてもピアニスト物語としても十分読み応えが有るストーリーで、なおミステリーをさんざん読んでいる者も納得させる力のある上質なミステリーでした。

のだめカンタービレの成功は、単なるラブコメだけではなく音楽の描写に説得力が有ったからですし、このミステリーも音楽や演奏の描写の部分はまったく同じ事が言えると思いました。

では映画ではどう描かれていたのか。
結論として映画だけ観たら良い作品でしょう。
でも原作を気に入った私にはちょっとだけ残念な部分もありました。

映画としても原作を生かそうと頑張っていると思います。
でも映画としての時間的な制約もあり、その時間内でミステリーとしても物語としてもまとめなければならないので、原作とは詳細が変わっています。話しの前後関係が変わっていたりもします。
ミステリーの原則として、すべての手がかりは読者に予め提示しなければなりません。
だから制約の中でこの原則を守るために、変えざるを得なかったと思います。

だから原作を読んでいた方が分かりやすい部分も有りましたが、ミステリーとしてはギリギリ成立しています。ただ、私の気に入ったスポ根テイストやピアニスト物語の多くの味わいが削除されていたことが残念でした。

もちろん観ても良い映画ですよ。
「あまちゃん」ファンの方には足立ユイちゃん役の橋本愛がメインキャストですし、音楽ファンの方にはピアニストの清塚信也が重要な役でピアノも弾いていますし、アラベスクや月の光はほぼ全曲聴けますし。