本日「改正被災マンション法」の説明会が仙台で開催されました。
改正被災マンション法は、正確には「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の一部を改正する法律」と言います。(平成25年法律第62号)講師は法務省民事局参事官中辻氏と同局付川副氏です。
被災マンション法については、2011年8月3日のブログで少し紹介しました。
もう一度整理してみます。
一般的にマンションを建て替えるには、区分所有者の5分の4以上の賛成者がいれば良いのです。反対者の権利も配慮することが前提ですが、全員の合意が無くても立て替えは進められます。
平成7年に阪神・淡路大震災が起きました。たくさんのマンションが破壊されました。
これはマンションが全部滅失する状態ですから、マンションの所有者は区分所有者の立場では無くなり、単なる敷地の共有者という位置づけになります。
そうなるとその敷地に新たな区分建物を建てる場合は、民法で言う共有物の変更行為になりますので、共有者全員の合意が必要となります。
しかし、何百人もいる共有者全員の合意を取ることは、現実問題不可能に近いのです。
これは反対者が多いというだけの問題ではありません。被災マンションですから、各権利者に簡単に連絡が付かないのです。実際にお亡くなりになった方もいるかも知れませんし、少なくとも皆さんどこかに避難しているでしょう。
このままでは、何もできなくなってしまいます。
そこで平成7年に制定されたのが「被災マンション法」です。
建物は実際に滅失しているのですが、マンションの区分所有者だった人達の5分の4以上の同意で再建が進められると言う特別措置が定められました。
東日本大震災では、完全に倒壊したマンションはありません。ただし、これらの建物は、被災していつ倒れるか分からないマンションだから、大変危険であり、すぐにでも全員撤去して取り壊さなければならない建物であるものも多いのです。
しかし、古いマンションの住民には、終の棲家として購入した高齢者も多く、簡単には引っ越すことができない実態が有るようです。また建物を取り壊して建て替える意思は無く、むしろ敷地を売却して終わりたいという希望が有るようです。今から再建するための資力に乏しく、融資も受けられない年齢であるということが理由のようです。
被災区分法はあくまでも建て替えるためのものです。マンションを壊して、敷地を売るための措置ではありません。ですから、全員の合意を得なければ一部倒壊しているマンションを取り壊すこともできません。これでは、近隣住民に対しても、都市経済的にもとても問題が生じました。ですから東日本大震災では、新たな別の特別措置が必要になりました。
あれから2年間、私は、あらたな特別措置の必要性があることを、シンポジウムなど機会ある度に訴えてきました。
その後、政権交代など様々な要因もあったようですが、今年6月26日に「改正・被災マンション法」がやっと公布・施行されました。
共有者の5分の4以上の同意で被災マンションの取り壊しや、その敷地の売却が決定できることになったのです。
これはとても重要な法律です。詳細は条文を当たってください。
被災地の土地家屋調査士の皆さんは何かと相談を受けるはずですから、この法律も丁寧にチェックしておきましょう。