2013年10月2日水曜日

気仙沼さんま寄席

古典落語「目黒のさんま」を知っていますか。
「さんまは目黒に限る」という落ちの噺です。
まあ皆さんご存じでしょうね。

その噺にちなんで毎年秋に東京・目黒で「目黒のさんま祭」が開催されています。
そのさんまの全国的に有名な漁港と言えばご存じ気仙沼です。
そこで「目黒のさんま祭り」には、毎年気仙沼市の費用でさんまが提供されていました。
東日本大震災後も同じく提供するための費用を作りたいという気仙沼市長の相談を受けた糸井重里氏が提案したのが「気仙沼さんま寄席」です。
「慰問としての落語会ではなく、気仙沼の人がしっかり稼ぐイベントにしましょう。」という提案です。
気仙沼まで行っても是非聴きたいという寄席を企画して、全国からお客様を気仙沼に呼ぶツアーを企画するのです。
とても良い考えです。
昨年に第1回が開催され、今年が第2回目です。

先週末29日、その「気仙沼さんま寄席」に行ってきました。
出演者は、実力と人気を備えた立川志の輔師匠。
今、一番チケットの取りにくい噺家です。
まくらは、師匠得意の小咄を次々に重ねるもの。
小咄の落ちを知っていても毎回笑わせられます。
そして演目は「猿後家」と「新・八五郎出世」でした。

この「新・八五郎出世」は「妾馬」とも言います。
大工の八五郎の妹の鶴が殿様に見初められお世継ぎを生みます。
その八五郎が殿様に招かれるのですが、がさつな言葉使いで、案内してくれた田中三太夫をハラハラさせます。この部分が笑わせる部分ですね。そんな八五郎の態度が返って殿様に気に入られ、士分に取り立てられすのです。その後、侍となった八五郎が馬に乗ってまた一騒動起こすのですが、大抵は士分に取り立てられるところで噺が終わります。
そこで、この噺を「妾馬」と言わず「八五郎出世」と言うことがあります。
志の輔師匠の噺では、八五郎は士分に取り立てられることも断ります。出世もしません。
そこは泣かせる人情噺に仕立てられています。
志の輔師匠はさすがに聴かせました。

これなら新幹線や飛行機に乗っても聴きに来たくなります。
遠くからいらっしゃるお客様は、宿泊して、気仙沼で朝ご飯を食べて、気仙沼の海産物等のお土産を買ってもらいます。
糸井氏の「慰問ではなくしっかり稼ぐイベント」という発想は、とても素晴らしいと思います。