2026年1月24日土曜日

プロの門を叩く君たちへ――逆算で学ぶ

 土地家屋調査士試験の口述試験が1月22日に行われました。

受験された皆さん、本当にお疲れさまでした。

長い時間、机に向かい、悩み、踏ん張り続けてきたあなたの努力が、ようやく報われました。まずは胸を張ってください。あなたはここまで来たのです。


しかし――ここからが本番です。

これまでは「筆記で何点」「口述を突破」など、明確なゴールがありました。

努力すれば結果が返ってくる、分かりやすい世界でした。

でも、これからは違います。

土地家屋調査士は“資格”であると同時に“職業”です。

国が「やってよい」と認めてくれただけで、生活が保証されたわけではありません。


どうすれば専門家として食べていけるのか。

どうすれば世間に認められるのか。

ここからが、本当の意味でのスタートラインです。


「試験が終わったばかりなのに、また勉強か」と思うかもしれません。

でも、これからの学びは違います。

学べば学ぶほど、あなたの収入と信用に直結する“実務の学び”です。

もし“勉強”という言葉が重く感じるなら、“仕入れ”と考えてください。

プロとしての武器を揃える時間です。


私は、土地家屋調査士として独立し、事務所を確立するためには、次の3つの能力が欠かせないと考えています。

1.業務処理能力

2.業務受託能力

3.事務所経営能力

補助者経験のある方は、1の一部は身についているかもしれません。

しかし、事務所全体の業務を任されていた人は多くありません。


営業経験のある方は、2の一部を持っているかもしれません。

しかし、専門家の営業は一般の営業とはまったく違います。

弁護士が飛び込み営業をしていたら相談したいと思うでしょうか。

専門家には専門家の“信頼の積み上げ方”があります。

この違いを理解しないまま、他業界の下請けのような働き方をしてしまう方もいます。


経営経験のある方は、3の一部を持っているかもしれません。

しかし、現代の土地家屋調査士事務所の経営には独特のコツがあります。


そして、多くの方は、この3つすべてが不足した状態からのスタートです。

それは恥でも弱点でもありません。

それら不足部分をしっかりと受け容れた方は、すべてを謙虚に対応できるという強みを持っています。

むしろ、ここからは伸びしろしかないということです。


では、どうするか。

まずは”逆算”です。

自分はどんな土地家屋調査士になりたいのか。  

そのために、何が足りていないのか。  

目的から現状を逆算で考えて、これらを明確にするだけで、進むべき道が見えます。


そして私は、全国にいる“評判の良い土地家屋調査士事務所”の門を叩くことを強くおすすめします。

独立志向であることを正直に伝え、足りない能力を学ばせてほしいとお願いしてください。

ただ補助者として働いていれば自然と実力がつく、というものではありません。

「この力を身につけたい」という具体的な意識を持ち、自ら学びにいく姿勢がなければ、どれほど良い事務所に入っても独立は遠のきます。


安心してください。

これらは、謙虚に理解し、意識を持って積極的に学ぶ気さえあれば、必ず身につきます。

補助者を募集していない事務所も多いですが、熱意を持って相談すれば道が開けることもあります。


もし、どうしても補助者として働ける事務所が見つからない、仕事・家庭の事情で補助者として働くことが難しいなど、迷うばかりで前に進めない場合は遠慮なくご相談ください。

アドバイスできることがあるかもしれません。


あなたの未来は、あなた自信の手で切り開くことができます。

そして、その一歩を踏み出したあなたを、私は心から応援したいと思います。







2026年1月19日月曜日

プロの門を叩く君たちへ――-修行する地域にこだわるな

土地家屋調査士試験に合格した方が、次のステップとして実務の力をつけるために土地家屋調査士事務所で修行するということは、昔から変わらない王道の進路であり、私も強くお勧めすることです。

しかし、その補助者希望者から必ずと言っていいほど聞く悩みがあります。

「地元では補助者を募集している事務所がありません」

これは当然のことです。あなたが合格するのを待っている事務所など基本的に存在しません。

さらに注意すべきは、頻繁に募集している事務所の存在です。規模が大きい事務所であっても、そう何度も募集するものではありません。一般論にはしませんが、補助者が定着しない理由があるのかもしれないという可能性は常に頭に置いておくべきでしょう。


こうした状況を踏まえたうえで、改めて考えてほしいのは「なぜ地元だけで探すのか」という根本的な問いです。

補助者として働く目的は“就職”ではなく“修行”です。一生その事務所に勤めるわけではなく、独立するための準備期間にすぎません。

そうであれば、遠距離通勤や単身赴任、あるいは地域を広げて探すといった選択肢を最初から排除する理由はどこにもありません。

むしろ「本当に学べる事務所」を最優先にすべきです。修行先の選択は、あなたの成長スピードを大きく左右します。

もちろん、開業予定地と似た環境の地域で修行できれば理想です。しかし、これはあくまで理想であって必須条件ではありません。

大切なのは「上質な知識を、効率よく、短期間で身につける」という視点です。どの地域であっても、実力があってかつ教える気がある良い先生のもとで学べば、開業後に必要な基礎体力は確実に身につきます。


土地家屋調査士は全国どこでも開業できます。だからこそ、修行先を地元に限定する発想は、あなた自身の可能性を狭めてしまいます。独立後は誰も指示してくれません。自分で考え、自分で判断し、自分で動く世界です。

その第一歩が「修行先を自分の意思で選ぶ」という行動なのです。

柔軟な発想を持てない人は、独立後の経営でも必ず苦労します。

逆に、ゴールから逆算して修行段階から主体的に動ける人は、開業後も強いはずです。

修行先選びは、あなたの今後の成長を決定づける大切な選択です。焦る必要はありませんが、慎重すぎて動けなくなる方が多いのも事実です。

本当に困ったら遠慮なくご相談ください。

あなたが本気で土地家屋調査士をめざしているのなら、私は全力で応援します。






2026年1月13日火曜日

プロの門を叩く君たちへ ――「誰に学ぶか」が専門家の一生を決める

令和7年度の土地家屋調査士試験に合格された皆様、本当におめでとうございます。
今回、合格者のTさんから今後の歩みについてご相談をいただきました。
非常に重要なテーマだと感じましたので、私の考えを皆さんにもお伝えしたいと思います。


Tさんのご相談内容は、「親が調査士で長年現場を手伝ってきた先輩(非資格者)から実務を教わりながら開業したい」というものでした。

新人のうちは、ベテランの先生方は敷居が高く感じられ、どうしても話しやすい身近な存在や、知り合いの補助者経験の長い方に頼りたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、私はあえて別の選択肢を考えてみてほしいとお伝えしました。

学ぶべきなのは「作業」ではなく、資格者としての「責任」なのです。

私が「その選択はお勧めしない」と伝えた理由は、土地家屋調査士という資格の本質にあります。

測量技術やCAD操作、書類作成を覚えることは確かに大切ですが、それらは業務のごく一部の作業にすぎません。

プロの土地家屋調査士に求められるのは、技術や知識に裏付けされた「法的根拠に基づく思考」と「責任を伴う判断」です。


私たちが身につけるべき真の実務能力とは、以下の3点に集約されると考えています。

・法的根拠に基づく判断力とその判断を実行する能力

・対話力、説明力

・事務所経営能力


これらは、自ら資格を背負い、責任の重みに向き合いながら現場を差配し、事務所を守り続けてきた「資格者」からこそ学べるものです。

だからこそ、勇気を持って「本物の土地家屋調査士」の門を叩いてほしいと願っています。


開業は、自分や家族の人生に関わる大切な選択です。

そして専門家である以上、お客様の利害に直接影響する仕事です。

だからこそ、最初はハードルが高く感じられるかもしれませんが、近隣で評判の良いベテランの先生に相談してみてください。

「実力を高めたい」という真摯な思いを持って訪ねてくる新人を、無下にする先輩は多くないはずです。


今の「学びやすさ」だけで判断するのではなく、10年後、20年後の自分を支える「本物の基礎」をどこで学ぶべきか。

一呼吸置いて考えてみてほしいと思います。


皆さんのプロとしての第一歩が、素晴らしいものになることを心から応援しています。








2026年1月3日土曜日

【新年のご挨拶】変化を恐れず、共に進化する一年に

 新年あけましておめでとうございます。

私事ではございますが、2023年より年賀状によるご挨拶を控えさせていただいております。今年、年賀状をくださった皆様には、この場を借りて欠礼のお詫びを申し上げます。


「一年があっという間だった」と言う人もいれば、「長かった」と感じる人もいます。 これは生きる密度の違いなのか、あるいは印象深い出来事の多さによるものなのでしょうか。 カレンダーがたった一枚めくられただけのことですが、それでも新年という区切りは、新しい何かに出会える希望と、自分自身や仕事を振り返り、ブラッシュアップして次の一歩を踏み出すための大切な契機であると実感しています。


毎年お伝えしていることではありますが、世界中の制度や技術は絶え間なく変化しています。 それに伴い社会経済が変容し、連動するように法律や手続きも姿を変えていきます。 当然、我々土地家屋調査士の業務も例外ではありません。

こうした変化を意識し続けなければ、事務所運営の舵取りを誤ることになります。土地家屋調査士は、測量技術の革新にのみ囚われても、あるいは登記手続きの知識のみに頼っても、時代の要請に応えられなくなると考えています。 これからの経営や運営には、昭和の経験則をなぞる延長線上とは、まったく異なる発想が必要です。


私自身の事務所においても、業務処理や運営面で改善・工夫の余地が多分に残されています。今年は、研究や研鑽の時間をより一層確保し、仕事のあり方を再構築する一年にしたいと考えています。


また、業界の後進の皆様への指導についても、これまで以上に講義内容を練り上げ、効果的な学びの場を提供してまいります。一流の土地家屋調査士を目指す方々を全力でサポートすることも、私の大切な使命です。


自らの進化を止めず、次世代を支える。 そんな一年にしていきたいと思います。

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。