「津波てんでんこ」「命てんでんこ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
岩手県の三陸地方の人々に伝わる言い伝えです。
「津波が来たら、取るものも取りあえず、肉親にも他人にも構わずに、各自てんでに高台に逃げろ」という意味です。
三陸の人々は、昔から幾度となく大津波の被害に遭ってきました。
そこで子孫を守る為に、地域を守る為に伝わった言葉です。
これは東日本大震災で再度有名になった言葉です。
「津波てんでんこ」という伝承は、大津波から命辛々生き残った先人が、当時の後悔も含めて子孫のために残した言葉です。この言葉から学ぶべきことはたくさんあります。
この「てんでんこ」の「肉親にも他人にも構わず」という部分を「利己的」「薄情」と捉える人もいるらしいのですが、まったくそういう意味ではありません。
津波が来たら自分の命を守るだけで精一杯なのです。それだけ余裕が無いのです。
この「津波てんでんこ」が切実に伝えようとしている本当の意味を、家族も地域の人も共通理解しているということが大事なのです。
そして家族も地域の人も各々が、津波が来たら「てんでんこ」に、どこに向かって、どのように避難するかを熟知している前提なのです。
だから、前回のブログでもお伝えしたように、平時に地域のハザードマップを確認して、家族や地域で話し合っておくことが大事なのです。
8月8日の宮崎の地震に続き、9日の神奈川など全国で地震が起きています。お盆休みに家族と話して、何かあったときの決め事や事前準備をすることをお勧めします。
なお、この言葉は利己的な単純な意味合いではなく、4つの意味を多面的重層的に含んでいると防災心理学者の矢守克也先生が明らかにしています。(Wikipediaによる)
「津波てんでんこ」をぜひ深く知ってほしいと願って、以下にその「4つの意味」を紹介させていただきます。
自助原則の強調:「自分の命は自分で守る」:津波から助かるため、人のことは構わずに、てんでんばらばらに素早く逃げる。
他者避難の促進:「我がためのみにあらず」:素早く逃げる人々が周囲に目撃されることで、逃げない人々に避難を促す。
相互信頼の事前醸成:大切な他者と事前に「津波の時はてんでんこをしよう」と約束し、信頼しあう関係を深める。
生存者の自責感の低減:「亡くなった人からのメッセージ」:大切な他者とてんでんこを約束しておけば、「約束しておいたから仕方がない」と罪悪感が減る。