2012年3月9日金曜日

親鸞 五木寛之

五木寛之の「親鸞(上・下)」を今更ながら読みました。
2年程前のベストセラーですね。

私はこの手の歴史小説とでもいうジャンルは、昔からとても好きなジャンルです。
一冊読むと長編小説を次々に読みたくなり、睡眠不足の日々が続くことが眼に見えていたので、この本も気になっていたのですが、今の私の環境では控えておこうと思っておりました。しかし、ここのところ出張が続いて、その移動時間に若干本を読む時間を作れそうなので、ついつい買ってしまいました。

最近の五木寛之は精神性の世界に入っているので、「親鸞」も、もっと宗教思想色の濃いものかと勝手に想像しておりましたが、読んでみると思った以上に娯楽性の高いものでした。

冒頭からスリリングな展開です。まさか親鸞でこの展開とは思いませんでした。
読む前に、勝手に「出家とその弟子」のイメージを重ねていたのかもしれません。
五木氏の「親鸞」は、登場人物が皆しっかりキャラが立っていて、とても魅力的です。伝統的な大衆娯楽小説の王道を行きながら、そのストーリーと人物に親鸞の思想に繋がる伏線が張られています。
登場人物の個性的なキャラクター設定が、法然と親鸞の専修念仏と「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」にスムーズに繋がるのです。

何故、親鸞は比叡山から下りて、野の聖になるのか。
何故、法然の弟子になるのか。
法然の専修念仏とはなにか。
悪党とは何か。
念仏を唱えれば悪党も救われるなら、人は何をしても良いのか。
念仏は一度唱えれば良いのか。
親鸞と法然の思想の違いはどこか。

分かり難いこのあたりを、娯楽性たっぷりな展開の中で、しっかり納得させる筆力はさすがです。

文句は無いけれど、この続編を含め、久々に長編小説を次々と読みたくなりました。時間がないのに困ったものです。