2011年8月3日水曜日

被災マンション視察

「被災マンション法」をご存知でしょうか。正確には「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」と言い、阪神・淡路大震災の際に制定された法律です。
従来の「区分所有法」では、建物の一部が壊れたときの復旧や建替えの手続きが定められています。しかし大災害等で区分建物の一棟全部が壊れた場合、専有部分に対する所有権も消滅するために、区分所有法の適用外になります。
 そうすると区分所有者達は単なる敷地の共有者の関係になります。ここでマンションを再建するためには共有物の変更となりますので、その共有者全員の同意が必要になります。
しかし、実際に全員合意を得ることは大変難しいことです。
 そこで大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより区分建物が滅失した際には、この「被災マンション法」が適用され、敷地の共有者の議決権5分の1以上の再建の集会を開くことが認められて、議決権の5分の4以上の賛成により再建が決議できます。実際に阪神・淡路大震災ではたくさんの事例を解決した法律でした。

 さて、今回の東日本大震災では、区分建物の状況はどのようになっているのか、被災マンション法の適用はどのようになるのか、などを確認するために、先週仙台市内のマンションを見てきました。
 報道は大津波などのセンセーショナルな映像に集中しがちで、地震による被害の報道が少なく、津波地区以外はほぼ無事だろうと思っている方が多いようですが、そんなことはなく、仙台市内の建物は大なり小なりの被害があります。



上の写真は被災したマンションの外観です。大変危険な状態でもう誰も住んでいません。左側の建物と右側の建物の間を見てください。上に行くに従って開いていることが分かるでしょうか。

敷地の地割れです。敷地全体がこのような状態でした。

1階壁の外側の被害です。壁の穴から中が見えます。

これは、別のマンションのロビー内です。 このマンションにはまだ人が住んでいます。

廊下の袖壁の支柱です。


専有部分の内部です。床が完全に傾いています。とても危険な状態で全員退去が求められています。

実際に管理組合にもヒアリングをしました。
この建物は、被災していつ倒れるか分からないマンションだから、大変危険であり、すぐにでも全員撤去して取り壊さなければならない建物であることをお聞きしました。
しかし、古いマンションの住民には高齢者も多く、簡単には引っ越すことができない実態が有るようです。また建物を取り壊しても被災マンション法を適用することは無く、敷地を売却して終わりたいという希望が有るようです。今から再建するための資力が無く、融資も受けられない年齢構成であるという問題が理由のようです。
ただし、敷地の売却では全員の合意という民法の規定に戻りますので、その合意の取り付けも難しく、処理にお困りのようでした。

建替えが無理な建物では、建替えを目標とする被災マンション法では解決ができません。
更なる特別の法律でも無いと解決が難しいと感じました。