この週末で「近畿ブロック協議会新人研修会」と「土地家屋調査士事務所開業ガイダンスin大阪2017」の講師をしてきました。
たくさんの前向きの新人にお会いして、とても嬉しい思いで帰りました。
さて、この1月から2月にかけて「土地家屋調査士事務所開業ガイダンス」や「新人研修会」の講師が続きます。
それらの事前質問等を毎日のようにいただくのですが、その中でつくづく考えることが「基本的な常識」の大事さです。
大人としてのまともな訓練ができていない人がいます。
何を質問したいのか、日本語になっていない人がいます。
ちゃんとした手紙を書くことがなく、「いいね!」や「スタンプ」だけで済ませているからでしょうか。
最近も以下のようなメールをいただきました。
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拝啓、最近、鈴木先生のブログを知り、拝見している者です。
現在、土地家屋調査士に興味を持ち、目指そうか検討中なのですが、このガイダンスは私の様な者が聴いても理解できる内容でしょうか?
(私は法律や登記について、少しわかる程度のレベルです。)
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これが全文です。発信者は書いてなくてメールアドレス欄にイニシャルの表記があるだけでした。
(このブログでは仮にS.Tさんとしましょうか)
このメールに以下の様に答えました。
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S.T様
(略)
このメールだと、お返事のしようがありません。
「目指そうか検討中」「法律や登記について少しわかるレベル」だけがプロフィールですね。
つまり、これから受験しようかどうか悩んでいる段階でしょうか?
まったく勉強が始まっていない状態でしょうか?
合格してからどんな世界が待っているかを知りたいのなら、このガイダンスの受け答えを聴いていただければ、良いところも悪いところも把握できると思います。
それだけでもモチベーションが湧くかも知れませんし、自分に向いていない世界と思うかも知れません。
その判断のためにはお役に立てると思います。
ただ「法律や登記について少しわかるレベル」でS.Tさんの実力はわかりません。
私は本気で自分の時間とお金を出して、皆さんのためにお役に立とうと思っています。
遊び半分でやっているわけではありません。
別にS.Tさんの個人情報が欲しいわけでは無いですが、せめて名前くらい書いて、もう少し具体的に悩みを伝えてください。
「私のような者が」と書かれても、これでは具体的に回答ができません。
もちろん、ご参加は歓迎します。
上記のとおり、今後の方向性を決めるためには、きっとお役に立てるでしょう。
(略)
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例えば「拝啓」を書くなら「敬具」の結語が必要ですね。
ただし、そんな形式的なことよりも、今回のS.Tさんの場合は、内容も本来伝えるべき要素が欠落していることに気がついていないようです。
初対面の方に何らかのメッセ-ジを伝える基本的な方法を知らないと、開業してから新しいお客様に対応することは難しいと思います。
ちなみに、この返信メールに対して、その後S.Tさんより丁寧なお返事をいただいております。
教えればすぐに実践できる方のようです。
若い方で、このあたりの常識を身に付ける時間が無かっただけなのでしょう。
また、新人土地家屋調査士が書いた「依頼者の土地の隣接者に送る文書」で、様式を踏まない手書きの走り書きのようなものを見ました。
確かに伝えたい項目は全部入っています。
ただし、相手は友だちではないのです。
文書の常識があります。
当然、これは常識であり、法律に書いてあるわけではありません。
社会人として当然に身に付けておくべき基本的な常識でしょう。
それが欠落していたら、どんなに専門分野が詳しくても、お客様は相談する気にもならないでしょう。
私達のような専門事務所を開業しようという人は、組織より個人でやりたいからという人が多いでしょう。比較的個性の強い人が多いのかも知れません。
しかし、個性の強さだけで押し通せる世界でもありません。
バックには大会社の支えもなく、アドバイスをくれる上司もいません。
ここからは、自分の振る舞いだけですべてを判断されます。
今のままでも通用するはずと過信してはいけません。
ここまで何の問題もなくこれたとしたら、それは単に今までいた組織の信用があなたを守ってくれていただけかもしれません。
土地家屋調査士は、自分が看板です。
基本的な常識を身に付けてください。
身だしなみにも気をつけてください。
一流企業をお客様にしたいのなら、一流企業人事担当者から「我が社に欲しい」と思われる「総合的な常識」が必要です。
「ネクタイしたくないからこの仕事を選んだ」と言った新人がいました。
それはその人の生き方だから、尊重します。
しかし、日本はネクタイをしなければならない場所や場面がまだまだあります。
バックの組織がなくなったからこそ、自分が一番しっかりしなければならないと思います。
受験勉強を言い訳に何もしてこなかった方々に申し上げますが、せめて新聞くらい読みましょう。
それらを否定するなら、誰にも追いつかれないほどの実力を付けるか、一生「便利屋さん」で終わっても良いと覚悟するかのどちらかでしょう。