2015年11月8日日曜日

専門能力と講義能力

私は長年様々な分野の講師をやってきました。
またそれ以上に様々な分野の講義を聞いてきました。

自分が常に気にしているからかもしれませんが、講義を聴いているときには、講義内容だけでなく、その講師の伝え方がとても気になります。
そんな勝手な思いで、ここのところ研修会の講師側の話を書いてきました。

2015年10月29日ブログ「研修会で盛り込み過ぎは禁物と考えています」
2015年11月03日ブログ「研修会におけるスライドの使い方」

今回は講師の専門能力と講義能力のことを書きたいと思います。
専門能力があるはずなのに何も伝わらない講師がいます。
講義が始まったらすぐに眠くなる講義があります。
最初から伝える気があるのか疑問に思ってしまう方すらいます。

プレゼン能力の問題とでも言うべきかもしれませんが、それ以前のものでしょう。
志の問題なのかも知れません。
研修会を聴いていると、この講義はおそらく相手のためではなく、結局講師自身のための研修会なのかなと思う人がいます。
受講者に如何に分かりやすく伝えるために心を砕くのではなく、「結局この分野は俺が第一人者だろ」「俺ってすごいだろ」って言うためにやっているのかと思える研修会が結構多いです。

講義を聞き終えて「ちょっと興味は持つけれど、そんなに難しいなら私には無理だ」と思う受講者がいたら、その研修会はまったく意味がないどころか、害になります。

講師は当然にその専門分野の能力があります。だから講師の依頼を受けるのでしょう。
ちょっと疑問もあるのですが、そこは論じません。

そうだとしても講師なら、専門分野を知っているだけではダメなのです。
分からない人に伝える方法の研究もしなければなりません。
大学生の頃、偉い教授と聞いていたけれど教え方が下手という先生は多くいました。
大学の教授たちは確かに研究者です。
しかし教壇に立つことでも給料をもらっています。
だから、その部分もプロじゃなければなりません。
私たち実務家が講義をするときも同じだと思っています。

講師にプレゼン能力を求めるということに、違うとおっしゃる方も多いでしょう。
プレゼンというと相手に媚びるような何らかちゃらちゃらしたイメージなのでしょうか。
それなら、おそらく誤解されているのだと思います。
私はとてもとても大事なことだと思っています。

もちろん本当の意味で媚びた講義をする人がいるとすれば、それはそれで講師自身のためでしょうが。

ではどうすれば良いのでしょうか。
当たり前の話ですが、主役は受講者であり、講師は受講者への奉仕者であると理解することです。
講師は偉そうだったり、講師に招かれただけではしゃいだりしないで、まずはクールに講義を組み立てて欲しいと思います。

まずは受講者の現状の能力とニーズを正確に把握していますか。
受講者が忙しい時間を割いてまで、何を求めてこの研修会を受講するのか、再度考えてみてください。
分野にもよるでしょうが、基本的に受講者が過去同じ分野の研修を受けたことがあるか、それはどんな内容の研修だったか、把握してから講義していますか。

2010年6月25日ブログ「過去3年分の会報を読んでから行け」

その上で「与えられた時間内に、今回は何を求められていて、実際に何を伝えることができるのか」そこをプランニングしなければなりません。
可能なら主催担当者と、この研修計画を何度か打ち合わせをすべきです。
受講者が分からないのは、受講者の能力ではなく講師の能力のせいです。

その上で、一年間かかって教える教師は当然として、たった一度だけの研修会の講師であっても、受講者の人生に関わっているという自覚を持って欲しいと思います。


うーん、
結局自分のハードルを上げただけかも