2014年11月5日水曜日

修行についてシェフに聞いたこと

私は新人研修をライフワークと言っています。

私は他の事務所で補助者という修行をしておりません。だから自分で工夫して勉強を続けてきました。
世の中で一番分からない土地家屋調査士が、どのように工夫して勉強してきたかをお伝えしています。

補助者経験の有無について、どちらの人生も経験できませんので、私の歩んだ人生の方法を説明しています。
だから「補助者経験がなくても自分で修行して開業する方法」を新人研修でお伝えして来ました。補助者経験無しを勧めていたのではありません。
最近は補助者に雇ってくれる事務所も少なくなってきましたので、様々な事情で「補助者になれない。開業できない」と嘆いていた後輩達に「それならこんな方法もあります」と伝えてきたのです。当然補助者として修行した人達に対しても、使えるノウハウをお伝えして来ました。

私自身は「補助者を経験すると教えてもらえることも多いだろうけれど、あまり修行に関係の無い雑用などに時間が取られたり、無意味な精神的な苦痛を得ることもあるだろう。それならその時間を自分で工夫して修行すれば良いことだ。修行に関しては師匠がいないのだからとても厳しいのだが、努力さえすれば、それが一番合理的だ」と思っていましたし、確かにそのような人生を歩んできました。

しかし、開業した後輩達を見ていると、呆れるほど勉強が足りません。
私の研修を受けて「頑張ります」と言っていながら、次の日には日常生活に潰されています。
単に忙しいとかいう理由で修行しません。「この職業を選びながら、何故こんなに勉強しないのだろうか」と残念に思っていました。少なくても最初は寝ないでも勉強しなければ一人前に成れないでしょう。開業してしまったのだから、それは当たり前だと思っていました。

先日あるレストランに行った際に、シェフに修業時代のことを伺いました。
その方は、若いシェフでとても美味しい料理を出します。
日本で有名なシェフについて修行して、それからフランスに行って修行して、自分のレストランを開業して2年めだそうです。

いつも業界の後輩達に独立開業のお話しをさせて戴いているので、私にとって、他の職業の開業話もいつも興味のあるお話しです。

様々なお話しをした中で、シェフによると「日本での修行やフランスでの修行でも特別に得るものが多い訳でも無かった」という話しがありました。
「ではシェフにとって、それらの修行はしなくても良かったものですか」と伺ったら、「それでも絶対に修行は必要だった」とのことでした。
その理由は「理不尽な修行や人種差別などの中で、精神的に耐性ができた。開業から経営の中で辛い事があっても、大抵のことは我慢できるようになった」と説明が続きました。

その話しを伺って、私の中で少し分かったことがありました。
私は独立開業を目指す人達がそんなに精神的に弱いのなら、独立などやめて組織にいれば良いだろうと思っていました。
でも「殴られたり、怒鳴られたりしなければ、修行できない人達がいる」のですね。
そして「理不尽な処遇や指導も役に立つことがある」のですね。

これからの新人の指導に関して示唆に富むお話しでした。

「私達の時代は言われなくてもできた」と言うつもりではありません。
私達は今よりは家族でも学校でも理不尽な思いの中で育ったように思います。
ですから修行に行かなくても様々な耐性が身についていたように思います。
少なくても熱血根性世代ですから、努力するのは当たり前の感性があります。

それらの違いを含めて考えて再度研修を工夫をしてみます。