2012年12月5日水曜日

研修会の構成と落語の構成

昨日12月4日は宮崎県土地家屋調査士会の研修会と(社)公共嘱託登記土地家屋調査士協会の研修会の講師をするというダブルヘッダーがありました。
調査士会の研修は土地家屋調査士を対象に「土地家屋調査士の事務所経営と業務報酬」を、公嘱協会の研修は土地家屋調査士と行政担当者を対象に「東日本大震災からの報告〜被災する前にできること」をお話ししました。

私にとっては初宮崎でした。初めての会に伺うときには、とても気を使います。
事前にその地域の業務、気質、過去の研修会の雰囲気を把握しないと、研修に実感が伝わらない事があります。特に午前中は業務報酬に関する話ですから、宮崎の調査士の事務所の形態や、一般的な不動産の規模、不動産の価格、業務の方法、業務報酬などを把握しないと、講師として上滑りする事があります。
「お前の言う事はわかるが、それは仙台の話だろ・・・」などの感想を与えたら、何の意味も無いからです。

以前も書きましたが、私は子供の頃から寄席番組を見て古典落語で育ちました。
研修会では、あの落語の構成がとても参考になっています。
最初に「つかみ」があり、「まくら」があります。そのあとで「本筋」に入り、最後に「さげ」で終わります。

研修会でも最初に何らかの「つかみ」が必要です。
聴衆に興味を持ってもらわなければなりません。
聴衆は最初の数分でこの講師の話を聞くべきか、寝ても良いか決めます。
その後どんなに良い話をしようとも、聴衆が寝てしまうと何も伝わりません。
品の良い範囲で、自分に興味を持ってもらう。初めての地域では特に必要です。

次に「まくら」です。
本筋と関連する話をしながら、場を和ませ、自分の世界に持っていく馴らしをしながら、無理なく本筋に入ります。このときに「羽織」を脱いで、「今から本筋だよ」と聴衆に理解させる場合もあります。昨日はやりませんでしたが、私も上着を脱がせてもらう事があります。落語家ではこの「まくら」を話ながら、聴衆の雰囲気を見て、その場で「本筋」を選ぶこともあるようです。まあ私は講師ですから研修の本筋を変えることはできませんが、表現や使うスライドを変える事はよく有ります。
この場面で少しずつ話しながら、聴衆の表情を見ています。長年講師をしていますので、この場面で表情を見ていると、だいたい業務に対する考え方が把握できてきます。
研修会の構成の中でこの部分がとても重要だと思っています。

本筋を話し終わってからの「さげ」。これも研修でも大事だと思っています。
研修の「さげ」は、なにもウケを狙う訳では有りません。最後の余韻が残る様な話やスライドで終わる事を意識します。それが少しでも研修効果が残る秘訣だと思うのです。

研修会は講師の知識を披露する場面ではありません。時間をとって参加した聴講者のお役に立つように努力すべき場面だと思っています。
聴講者に媚びるのではありません。
どうすれば、頭に定着できるのか工夫すべきだと思っています。

そんなときに落語の構成はとても良くできていると思います。
たまに古典落語を聴いてみませんか。

追記)
もちろん、本筋をどこまで考えて、練り込んできたか、どれだけ稽古を重ねたかは当たり前の話です。